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現実侵食

読みにくいらしいので、少し編集します。

ご意見ご感想ご質問どんどんどうぞ。

 2009年、3月。

 自分の部屋、十畳和室の布団で賢一は目覚めた。

 慌てて時計を見ると時刻は午前11時過ぎ、晴れているくせに窓の外は薄暗い。

 あのゲームを放り出してから深夜アニメを見るため、少しだけ仮眠をとるつもりだったのだが実に十時間以上も寝てしまった。

 疲れてたのかな……。


(なんてこった。昨日のクロナドを見れなかったぜ。今日アニの最高傑作なのに、録画もしてねぇ……)


 都会の町で高校生三年の一人暮らし。

 受験も終わったこの時期、もう遊んで遊んで遊びまくるしかない。昨日の昼は友人とボーリング、夜はゲーム、そして深夜はアニメと決めていたのに、実行できなかった。

 

(ああ、朝飯作らなきゃな。だりーな)


 基本一人暮らし、自炊もしている。

 だがパンを焼いて食う。この一通りの作業も面倒に思えてならない。

 そして洗濯もせねばならない。風呂掃除もだ。

 

 これからの苦行を嘆きながらよっこらしょっと身を起こす―――と、賢一の耳にテレビのニュースの音が聞こえてきた。

 ん? なんか爆発音とか聞こえるし、映画でもやってんのか。


「ああ……。やっべえ、昨日テレビ消し忘れたのか」


 電気代が余計にかかってしまうじゃないか! 

 いや、生活資金は毎月きちんと仕送りされてくるが、母親の方が賢一に子供のうちから贅沢をさせたくないというので、実はうちの家計は火の車だったりする。


 この家は典型的な一戸建て洋風建築、見た目小さいが中は広い。

 

 階段をひょこひょこ降りて、台所の扉を開ける。


 テレビからはFHKのニュースがやっていた。


『皆さん、今世界は混乱に陥っています! ですが、このような時こそ、落ち着いて行動をっ』


 アメリカ大統領が大勢のSPを引き連れて、演説を行っていた。

 賢一は幼い頃、アメリカで生活していたこともあるので、普通に日本語訳なしで聞き取れていた。


「おお、オバマ大統領の演説か。かっこいいな、あの人……。って、なんだ。テロなのか!」


 冷蔵庫からパンと牛乳を取り出して、ぼうっと画面を眺める。

 だが、そのオバマ新大統領の演説の背後で激しい銃撃と爆発が繰り返されていたのだ。

 ワシントンのホワイトハウス前、綺麗に刈り揃えられた芝生を、砲撃の火花が燃やしている。

 まるで戦争状態。

 しかしそれはどこか現実味がなく、B級アクション映画でも見ているような気分だった。


 なぜなら―――。


『な、なんだ、こいつら! じゅ、銃がきかないっ! 大統領、早くエア・フォースワンへ退避を! ぐあああ!』


 屈強なアメリカ兵や戦車部隊、ヘリなどが戦っているのは、同じく人間や兵器ではなく―――。


『全アメリカ国民の皆さん、軍と警察の指示に従って今すぐ避難してください! この敵は普通じゃない! なんだこの生き物は!?』


 オバマ大統領に食らいつこうと、まさに牙を剥き出しにした羽の生えた狼が見えた。

 それ以外にも、巨大化したカブトムシみたいなやつもいれば、火や吹雪を口から吐く鳥の姿も空中には見受けられる。

 しかも、賢一の目が正常であれば、そのモンスターたちにやられたアメリカ兵や市民たちは、そろってなぜか十字架の入った棺に変身して地面に横たわっているではないか。


「……おいおい、なんだこりゃ。おかたい番組ばかりのFHKがついに狂ったのか?」  


 賢一はまだ自分が夢でも見ているのではないかと思った。

 今度は黄泉売りチャンネルを見てみる。

 この時間帯ならば主婦層向けの美味しいスイーツやらファッション情報の番組のはずだった。

 なのに―――。


『ざ……ザザ………………』


 画面一面砂嵐。

 音声だけは途中ましなものが拾える時があったが、その声もアナウンサーの悲鳴やらなんやらでよく聞こえない。

 他の局も同様に映らなかった。

 唯一映るのはFHKだけ。それを見てもモンスターに襲われる世界各地の様子を報道してるだけで、何一つ賢一にこれが現実だと示唆してくれるものがなかった。

 

「えっと、まだ3月だよな? エイプリルフールってわけでもないのに……」


 賢一は呆然とテレビの電源をオフにした。

 そして窓の外を見る。

 リビングのテレビ、その背後にある大きな窓。リモコンでカーテンが開く最新式のもので、かなりの値がはったやつ。

 いつもその窓からは細い道路と閑静な住宅街、少し小さな空き地が見えた。

 そこにあるのは日常の同じ長閑のどかな風景なはず。


 しかし―――


「うそ、だろ?」


 道路には豚とゴリラを合体させたような、毛むくじゃらのモンスタ―が闊歩し、下水溝からはネバネバの赤いゼリーのようなスライムが姿を現す。

 どれもこれもが現実にはいない想像上のモンスターたち。それも親父が仕事で使っている手帳に書かれていた怪物のデザインによく似たものばかりだった。

 あっ、近所の散歩好きの爺さんが空から降ってきた飛竜に襲われている。体長3Mはありそうな巨大なワイバーンだ。真っ赤に裂けた口蓋から覗く牙はどれも長く鋭い。あんなのに噛まれたら一撃で即死だろう。

 さらにその先には、高校をさぼった不良少年二人組が煙草の自販機の側で、大きな蛙に丸呑みにされそうになっていた。カラフルな色彩で、アマゾン奥地に住む毒蛙にそっくりだ。

 

「おいっ、逃げ……」


 逃げろ―――そう叫ぶ前。

 賢一が助けようとして自宅の扉に手をかけたところで、そのお爺さんたちはもうすでにひつぎに変わってしまっていた。十字架の上にHPゲージ0、《DEAD》というマークが浮かぶ。

 死んだら棺になって、ゲームオーバー……。ってなんだよ、それ。

 マジでゲームそのままじゃねぇか!

 ここは現実世界のはずだろう!

 

 なんだこの滅茶苦茶世界は!

 

 賢一の頭に混乱の渦が起きて一瞬何もかもが真っ白になる。なぜかその思考の混濁の先に昨日親父が送ってきたゲームの存在が見えた。

 親父の作ったモンスターにそっくりの危険生物。ドラゴンファンタジーのゲームシステムに似た世界観。 


「まさか……な。あんな、ゲームが、この世界を侵食したって言うのか……」


 タイトルは『インストール・ザ・リアルインベーダー』。

 その英語の意味は―――現実の侵入者をインストールせよ、だ。

 賢一の頭を抱えてうずくまる。


 ありえないありえないありえない!


 宇宙人が襲来して人類を襲っているって方がまだ説得力があるぞ!

 

「くそっ、これがゲームだってんなら《チュートリアル》くらい用意しろよ、この馬鹿野郎!」


 そう叫んだ瞬間、賢一の目の前に青白いホログラムが現われた。

 

《メニュー》


[ステータス][装備][アイテム][スキル][設定]……→[チュートリアル]


今西賢一

性別 男

称号 ゲーム起動者(能力値+)

職業 なし

レベル 1

HP 320

MP 40

力 43 

体力 34

早さ 35

かしこさ 195

精神 38

信仰心 50

士気 100

運 54(この値が高いほど、何か良いことがおこるかも?)

コモンスキル 攻撃LV3 防御LV2 魔法LV2 盗むLV3 捕獲LV2 アイテムLV3

オリジナルスキル インベード(能力不明。使用可能LV50) 

装備武器 拳

装備防具 制服(守備+5)

装飾品 携帯電話(精神+3)


「って、本当に現われた!?」


 メニューと書かれており、装備・アイテム・ステータス・スキル・所持金などの項目の最後に、チュートリアルと書かれたアイコンが存在していた。

 御丁寧に赤文字で、初心者は必読だよ☆ と書いてある。

 その画面を指でなぞると青白い閃光とともに、画面が反転し、ゲームの説明を始める前に、音声ありの方がいいかどうかを尋ねる選択肢が視界に現われた。

 まるで魔法だ……。

 こんなの今の科学でどうにかできるはずがない。 


「…………」


 これはもう認めるしかあるまい。


「……これはゲームと現実が混じりあった世界だ」    


連続更新。

ステータスは変動します。


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