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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第72話 原初接続者

封印通路・第一階層。


暗い通路の奥に立つ人影は、ゆっくりと歩み出た。


足音はほとんど響かない。


だが存在感だけが、空間を歪めている。


淡く光る瞳。


人の姿。


しかし、その輪郭はわずかに揺らいでいた。


ラグスが低く呟く。


「……あれが原初接続者か」


カルディアが小さく頷く。


「はい」


「人類が深度の先へ踏み込んだ姿」


影の男が静かに笑った。


「先ではありません」


一歩近づく。


通路の水晶導線が彼の周囲で共鳴する。


「本来の姿です」


沈黙。



アルトが言う。


「名前は」


男は少し考えるように視線を上げた。


「名前」


一拍。


「昔はありました」


ラグスが眉をひそめる。


「昔?」


男は答える。


「今は不要です」


その声は穏やかだった。


だが、どこか人間的ではない。


カルディアが言う。


「あなたは世界核と接続している」


男は頷く。


「ええ」


「完全に」


アルカが震える声で言う。


「完全接続……」


カルディアが補足する。


「深度限界突破状態」


ミヒャエルが呟く。


「三百年前に恐れられた存在」


男は否定しない。


「恐れられる理由は理解できます」


一歩進む。


「人は“個”を守ろうとする」


アルトを見つめる。


「あなたもそうでしょう」



アルトは動かない。


「個は消えていないのか」


男は少しだけ首を傾げた。


「消える?」


笑う。


「違います」


「広がるのです」


通路の壁が微かに歪む。


まるで空間が呼吸しているようだ。


「世界と一つになる」


沈黙。


ラグスが剣を抜く。


「それを同化って言うんだよ」


男はラグスを見た。


「恐怖ですね」


「当然だ」


「恐怖は悪ではありません」


一拍。


「だが、進化を止めます」



アルトが問う。


「世界核は覚醒している」


男は頷く。


「はい」


「封印は長く続きすぎました」


カルディアが低く言う。


「三百年前、封印がなければ文明は崩壊していた」


男は穏やかに答える。


「崩壊ではありません」


「変化です」


アルカが呟く。


「……価値観の違い」



ドクン。


世界核の鼓動が強くなる。


通路の奥から熱のような振動が流れてくる。


男が静かに言う。


「聞こえるでしょう」


アルトは答える。


「聞こえる」


「世界の鼓動です」


男は目を細めた。


「あなたは感じている」


「だから来た」



ラグスが苛立つ。


「話はいい」


「敵か」


男は少しだけ笑った。


「敵ではありません」


「ただ」


アルトを見る。


「あなたの未来の一つです」


沈黙。


アルカが息を呑む。


カルディアが静かに言う。


「完全接続者」


男は頷く。


「原初接続者」



アルトが問う。


「なぜここにいる」


男は通路の奥を指す。


「世界核の目覚めを見守るため」


「止めないのか」


「止める理由がありません」


一拍。


「進化は自然です」


ラグスが吐き捨てる。


「自然だろうが世界が壊れたら意味ねぇ」


男は首を振る。


「壊れません」


「変わるだけです」


沈黙。



カルディアが言う。


「変化の先で、人は人のままですか」


男は少しだけ考えた。


そして答えた。


「それは」


一拍。


「重要ですか?」


観測通路の空気が凍る。



アルトは静かに言った。


「重要だ」


男の瞳がわずかに細くなる。


アルトは続ける。


「人が人でなくなるなら」


「それは進化ではない」


沈黙。


男はしばらくアルトを見ていた。


そして、ゆっくり笑った。


「なるほど」


「あなたは調整者だ」


通路の奥を指す。


「世界核はもうすぐ覚醒します」


「止めるなら」


一拍。


「今しかありません」


男の姿がわずかに揺らぐ。


空間と同化するように。


「また会いましょう」


次の瞬間。


男の姿は消えていた。



沈黙。


ラグスが呟く。


「……消えた?」


カルディアが答える。


「完全接続」


アルカが震える声で言う。


「空間と重なっています」


アルトは通路の奥を見る。


深い闇。


そこから確かに聞こえる。


ドクン。


ドクン。


世界の鼓動。


アルトは静かに言った。


「行く」


ラグスが笑う。


「世界の心臓までな」


カルディアが頷く。


「はい」


物語はついに。


世界核そのものへ向かう。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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