第71話 封印通路
アストレア地下観測層。
世界核の鼓動は止まらない。
ドクン。
ドクン。
主水晶の光が、その振動に合わせて微かに明滅している。
観測室の誰もが理解していた。
もう「様子を見る段階」ではない。
アルトが言う。
「封印通路へ向かう」
ラグスが肩を回す。
「やっと動くか」
アルカはまだ観測盤を見ている。
「深層振動の増幅速度……危険域に近づいています」
カルディアが短く言う。
「猶予は長くありません」
ミヒャエルが問う。
「通路はどこに」
カルディアは観測室の奥を指した。
「こちらです」
*
観測層の奥。
通常の研究員は入らない区域。
厚い石壁の前で、カルディアは立ち止まった。
そこには古代文字が刻まれている。
アルカが息を呑む。
「……封印文字」
カルディアは壁に手を触れる。
「古代文明の保守通路」
ラグスが呟く。
「三百年前の遺物か」
カルディアは頷く。
「封印装置は定期点検を前提に設計されていました」
アルトが問う。
「開くのか」
カルディアは静かに答える。
「深度が必要です」
アルトを見る。
「あなたの」
*
アルトが壁に手を置く。
視界の端でUIが起動する。
【古代封印構造 検出】
【接続要求】
アルトは干渉を許可する。
その瞬間。
古代文字が淡く光る。
ガコン。
重い音。
石壁がゆっくりと横へ動いた。
暗い通路が現れる。
地下へ続く階段。
冷たい空気が流れ出る。
ラグスが笑う。
「本当にあったな」
*
階段は深く続いていた。
石ではない。
黒い結晶のような材質。
壁には水晶導線が走っている。
アルカが驚く。
「……これ」
カルディアが説明する。
「封印層補助導線」
「水晶網の下層構造です」
ミヒャエルが言う。
「つまり」
「ここが本体?」
カルディアは首を振る。
「まだ上層です」
ラグスが笑う。
「まだ上かよ」
*
階段を降りる。
鼓動が強くなる。
ドクン。
ドクン。
床から振動が伝わる。
アルトは立ち止まった。
「近い」
カルディアが頷く。
「封印層第一階層です」
その時。
観測装置を持っていたアルカが声を上げた。
「待って」
「深度反応」
ミヒャエルが問う。
「誰だ」
アルカの顔が固まる。
「……複数」
ラグスが剣に手をかける。
「敵か」
アルカが首を振る。
「違います」
「でも」
一拍。
「人でもない」
沈黙。
*
通路の奥。
暗闇の中で、何かが動いた。
ゆっくり。
人の形。
だが影は歪んでいる。
カルディアが低く言う。
「……原初接続者」
ラグスが呟く。
「もう出てきやがったか」
影が一歩前に出る。
目が淡く光る。
その人物は静かな声で言った。
「やっと来ましたか」
アルトを見る。
「調整者」
沈黙。
鼓動がさらに強くなる。
ドクン。
ドクン。
世界核は確実に目覚めつつある。
そして今。
封印層の奥で、
最初の“原初接続者”が姿を現した。
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