第68話 世界核
アストレア地下観測層。
観測室の中央にある主水晶が、先ほどよりも強い光を放っていた。
ドクン。
ドクン。
鼓動は、確かに存在している。
観測員たちが緊張した声を上げる。
「振動周期、さらに短縮しています」
「深層波形、明確化」
アルカが静かに呟いた。
「……もう隠れていません」
カルディアは頷く。
「はい」
「世界核が、はっきりと活動を始めています」
*
ラグスが机を叩く。
「待て」
「世界核ってのは、つまり何だ?」
カルディアは少しだけ考え、言葉を選んだ。
「簡単に言うなら」
一拍。
「この世界の“接続点”です」
ミヒャエルが眉をひそめる。
「接続?」
アルトが静かに言う。
「世界と人を繋ぐものか」
カルディアはアルトを見る。
「その通りです」
*
カルディアは古い設計図を広げる。
そこには三層構造が描かれていた。
第一層
地表文明
第二層
水晶網
第三層
巨大な球体構造
カルディアが指差す。
「ここ」
「世界核」
アルカが息を呑む。
「……巨大すぎる」
カルディアは頷く。
「直径は数百キロと推定されています」
ラグスが思わず吹き出す。
「山どころじゃねぇ」
*
カルディアは説明を続ける。
「世界核は“接続媒体”です」
「世界と生命を繋ぐ」
アルカが言う。
「つまり」
「深度とは」
カルディアが答える。
「世界核への接続強度」
沈黙。
*
アルトが言う。
「だから人類全体で上昇している」
カルディアは頷く。
「はい」
「世界核の振動が強くなるほど」
「接続も強くなる」
ミヒャエルが呟く。
「じゃあ」
「抑制装置は」
カルディアは淡々と言う。
「振動減衰装置です」
*
ラグスが頭を抱える。
「つまり」
「世界が強く鼓動すると」
アルカが続ける。
「人の深度も上がる」
カルディアが頷く。
「その通り」
沈黙。
*
その時。
主水晶が強く光る。
ドクン。
今までより重い鼓動。
観測員が叫ぶ。
「深層振動レベル上昇!」
「下層干渉域、さらに拡大!」
アルトは水晶を見る。
視界の端でUIが激しく更新される。
【深層接続検出】
【対象:世界核】
【接続可能性:確認】
(……繋がる)
アルトの呼吸がわずかに変わる。
*
カルディアが気づいた。
「あなた」
アルトを見る。
「感じていますね」
アルトは否定しない。
「鼓動が聞こえる」
ラグスが顔をしかめる。
「俺には聞こえねぇ」
カルディアは静かに言う。
「深度が高いほど聞こえます」
アルカが震える声で言う。
「……共鳴」
*
ドクン。
ドクン。
今度は観測室の床が微かに揺れた。
ミヒャエルが叫ぶ。
「振動強度更新!」
アルカが画面を見つめる。
「……こんな数値」
「あり得ない」
カルディアが低く言う。
「封印が弱まっています」
*
ラグスが問う。
「封印が壊れたらどうなる」
カルディアは一瞬沈黙した。
そして言う。
「三百年前と同じことが起きます」
アルカが息を呑む。
「世界暴走」
カルディアは首を振る。
「いいえ」
一拍。
「もっと大きい」
沈黙。
「世界が“接続”されます」
ラグスが眉をひそめる。
「何に」
カルディアは答えない。
代わりに、ゆっくりと言った。
「それを知るために」
視線が床に向く。
「地下に行く必要があります」
*
観測室の空気が変わる。
アルトはすでに決めていた。
「行く」
アルカが言う。
「深度暴走の中心ですよ」
「分かっている」
カルディアが静かに言う。
「入口は一つ」
観測室の床を指す。
「この真下」
ラグスが笑う。
「つまり」
「世界の心臓の真上に立ってるってわけか」
ドクン。
鼓動がさらに強くなる。
視界の端のUIが赤く点灯する。
【深層接続領域拡大】
【世界核:覚醒兆候】
世界は今。
確実に目覚め始めていた。
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