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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第67話 封印層

アストレア地下観測層。


先ほどまで静まり返っていた水晶群が、再び淡く光を帯びていた。


拍動。


ドクン。


一定周期。


まるで巨大な心臓の鼓動のように。


ラグスが腕を組みながら呟く。


「……冗談みてぇだな」


「世界が脈打ってる、か」


アルトは何も言わない。


視界の端でUIが静かに更新されている。


【深層干渉域:検出】

【振動源:地下深層】


(深層……)



カルディアは観測台の前に立ち、古びた金属箱を机に置いた。


「これは三百年前の封印記録です」


アルカが驚く。


「実物?」


「複製ですが」


カルディアは箱を開く。


中には薄い金属板が何枚も収められていた。


古代文字。


アルカが息を呑む。


「……旧封印文字」


カルディアが頷く。


「古代文明が使っていた深層干渉記録媒体です」


ラグスが首をかしげる。


「つまり?」


カルディアは短く答える。


「世界水晶網の設計思想が書かれています」


沈黙。



アルトが問う。


「観測装置ではないと言ったな」


カルディアは金属板を一枚取り出す。


そこに描かれているのは巨大な構造図。


地表。

水晶塔。

その下に延びる無数の線。


地下深層。


アルカの声が震える。


「……こんな構造」


ミヒャエルが驚く。


「水晶網は地表だけじゃない」


カルディアは静かに言う。


「地表は補助層です」


指がさらに下をなぞる。


そこには巨大な円環構造。


「本体は地下」


ラグスが低く呟く。


「封印層……」



カルディアは説明を続ける。


「三百年前、深度暴走が世界規模で発生しました」


アルカが頷く。


「記録にあります」


「都市が浮き、空間が歪み、海が割れた」


沈黙。


カルディアは次の板を見せる。


そこには巨大な球体構造。


「これが」


一拍。


「世界核」


観測室が静まり返る。



ラグスが言う。


「つまり、今の鼓動は」


カルディアが頷く。


「世界核の振動」


アルトが静かに問う。


「水晶網は」


「振動を減衰させる装置」


カルディアは断言する。


「抑制装置です」


沈黙。



アルカが資料をめくる。


「待ってください」


「もしそれが本当なら」


「深度上昇は……」


カルディアが答える。


「世界核の振動に同期しています」


ラグスが頭を掻く。


「つまり」


「世界が強く脈打つほど」


ミヒャエルが言う。


「人の深度も上がる」


カルディアが頷く。



アルトは観測水晶に触れた。


その瞬間。


ドクン。


先ほどより強い振動。


視界の端のUIが赤く点滅する。


【深層振動 強度上昇】


(強くなっている)


アルトはゆっくり手を離す。


「封印はどこまで続く」


カルディアは少しだけ目を伏せる。


「分かりません」


「……?」


「古代記録は途中で消えています」


アルカが言う。


「どういう意味ですか」


カルディアは淡々と言う。


「封印設計者たちは」


一拍。


「途中で消えました」


観測室が凍る。



アルトが問う。


「暴走した?」


カルディアは首を振る。


「違います」


「?」


「同化しました」


沈黙。


「世界核と」


空気が重くなる。


ラグスが低く呟く。


「……人間が?」


カルディアは頷く。


「深度が上がりすぎると」


「世界と区別がつかなくなる」



ドクン。


鼓動が再び響く。


今度は観測室全体がわずかに震えた。


観測水晶が強く光る。


【深層干渉域 活性化】


ミヒャエルが叫ぶ。


「振動が増幅している!」


アルカが計測器を見る。


「周期が短くなってる!」


アルトは静かに言う。


「目覚め始めている」


カルディアが続ける。


「封印層が薄くなっています」



沈黙。


そして。


アルトが一言だけ言う。


「地下に行く」


ラグスが顔を上げる。


「何だって?」


「世界核を確認する」


アルカが慌てる。


「無理です」


カルディアが静かに言う。


「……行けます」


全員が彼女を見る。


「封印層への入口は一つ」


一拍。


「ここから真下」


観測室の床を指す。


ラグスが苦笑する。


「つまり」


「地面の下に、世界の心臓があるってわけか」


ドクン。


再び鼓動。


世界は静かに、しかし確実に動き始めていた。


物語はついに。


世界の深層へ踏み込む。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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