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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第65話 世界のもの

聖教国家ルーメン。


白亜の大神殿の上空に、光の裂け目が走る。


祈りの声が響く。


中心に立つ少女は震えていた。


「私は……罪ですか」


彼女の深度は急上昇している。


だがそれは怒りでも破壊衝動でもない。


“恐怖”だ。



アストレア。


議場の中央水晶に、ルーメンの映像が映る。


聖教代表が顔を伏せる。


「我々は抑制を強めてきた」


アルカが静かに言う。


「強制抑制は、内部圧力を高めます」


アルトは一歩前に出る。


「彼女に接続を教える」


聖教代表が睨む。


「神意に干渉する気か」


「干渉ではない」


アルトは静かに答える。


「恐怖の定義を変える」



ルーメン大神殿。


アルトは少女の前に立つ。


光の裂け目が揺らめく。


「私は壊します」


少女が震える声で言う。


「壊さない」


アルトは即答する。


「あなたは罪ではない」


「でも、測定不能と出た」


「それは制度の限界だ」


少女の呼吸が乱れる。


「私は怖い」


「怖くていい」


アルトは続ける。


「恐怖は警告だ」

「判決ではない」



視界の端でUIが淡く光る。


【領域支配】

個体深度:急上昇

自律制御補助:可能


アルトは直接干渉しない。


言葉だけで導く。


「世界と繋がっている」


少女が目を閉じる。


光の裂け目がわずかに縮む。


「繋がっている……」


「切らなくていい」


空間の歪みが緩やかになる。


完全ではない。


だが崩壊は止まる。



アストレア。


観測盤が安定を示す。


【自律安定傾向 確認】


アルカが震える声で言う。


「二例目」


ハインリヒが小さく呟く。


「抑制ではなく、自律」



ルーメン。


少女が涙を流す。


「私は生きていいのですか」


聖教代表が震える。


アルトは静かに言う。


「制度は命を裁かない」


光の裂け目が閉じる。


大神殿に静寂が戻る。



アストレア議場。


各国代表が沈黙している。


北方同盟代表が低く言う。


「二例目か」


商業連合代表が言う。


「偶然ではない」


セレスティアが立ち上がる。


「制度は変わるべきです」


ハインリヒも続く。


「帝国は独占を放棄する」


ざわめき。


「測定制度は、世界の共有基盤とする」


沈黙。



北方同盟代表が問う。


「帝国の威信は」


ハインリヒは淡々と答える。


「威信より安定だ」


聖教代表が静かに言う。


「信仰と両立できるなら、賛成する」


商業連合代表が笑う。


「共同管理か」


アルカがまとめる。


「抑制型から、調整型へ」



アルトが最後に言う。


「制度は主役ではない」


一拍。


「世界は、制度のために存在するのではない」


静寂。


「制度は、世界のためにある」


セレスティアが頷く。


「ならば、決めましょう」


ハインリヒが宣言する。


「世界共同管理体制を正式に採択する」


議場に重い空気が流れる。


反対は出ない。


恐怖はまだある。


だが、絶対ではなくなった。



夜。


アストレアの塔の上。


アルトは空を見上げる。


星は以前より安定している。


視界の端でUIが更新される。


【領域支配】

世界共同管理:正式成立

抑制依存度:減少

進化段階:移行開始


背後からセレスティアの声。


「あなたは王にならなかった」


「ならない」


「でも世界を変えた」


アルトは静かに言う。


「変えたのは世界だ」


風が吹く。


三百年前、抑制が世界を救った。


今、共有が世界を繋いだ。


だが――


深度上昇は止まっていない。


制度は進化した。


次に問われるのは、


“人類そのものの進化”。


物語は、新たな段階へ入る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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