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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第64話 もう一つの未来

アストレア・世界会議議場。


イグナートの自律制御成功は、瞬く間に各国へ伝わった。


「個体が自律安定した……だと?」


商業連合代表が目を見開く。


聖教国家代表は慎重に言う。


「奇跡か、偶然か」


アルカが即座に否定する。


「偶然ではありません」


資料を示す。


「深度波形は収束型へ移行しています」

「外部抑制なしで」


ざわめき。



北方同盟代表が低く言う。


「では制度は不要になるのか」


アルトは首を振る。


「不要にはならない」


一拍。


「役割が変わる」


「どう変わる」


「制限から補助へ」



セレスティアが補足する。


「王国は制度を“証明装置”として使ってきた」

「今後は“観測装置”へ移行できる」


商業連合代表が唸る。


「信用の基準は?」


「固定値ではなく変動域で評価する」


アルカが続ける。


「深度は単一値ではなく、推移曲線で見る」


ざわめきが広がる。



ハインリヒが静かに言う。


「三百年前、我々は恐怖を抑えた」


一拍。


「だが進化を止めた可能性がある」


軍部代表が低く反論する。


「止めなければ滅んでいた」


「その通りだ」


ハインリヒは頷く。


「だが今は状況が違う」



議場に映像が投影される。


イグナートの深度波形。


不安定から、緩やかな収束へ。


アルカが説明する。


「自律制御は、抑制を経ずに深度を安定化させる」


北方同盟代表が問う。


「他にも可能か」


「可能性はある」


アルトが答える。


「だが訓練と環境が必要」



会議後。


アルトとセレスティアが回廊を歩く。


「彼は危険ではなくなった?」


「潜在的には危険だ」


アルトは正直に言う。


「だが、危険は管理できる」


「それが未来?」


「一つの未来だ」


セレスティアが立ち止まる。


「もう一つは?」


アルトは空を見る。


「抑制を外しすぎて崩壊する未来」



その瞬間。


観測盤に新たな警告。


【深度異常検出】

【発生源:聖教国家ルーメン】


アルカが息を呑む。


「同時多発的に増えています」


聖教国家代表が青ざめる。


「我が国は抑制を強化しているはずだ」


アルトは低く言う。


「締めすぎた」


「何だと」


「恐怖を絶対にした」


沈黙。



聖教国家の映像。


神殿上空に光の裂け目。


信徒たちが祈る。


中心に立つ少女が震えている。


「私は罪ですか」


深度過剰者。


抑制網が強すぎて、内部圧力が跳ね返っている。



セレスティアが言う。


「抑制型の限界ね」


アルトは頷く。


「自律制御を教える」


「宗教国家に?」


「恐怖の解釈を変えなければ、何も変わらない」



議場。


聖教代表が苦悩する。


「我々は神意に従う」


アルトは静かに言う。


「神は恐怖を絶対にしたか」


沈黙。


「深度は罪ではない」


少女の映像が揺れる。



アルトは宣言する。


「制度は主役ではない」

「人が主役だ」


ハインリヒがゆっくり頷く。


「抑制から補助へ」


北方同盟代表が言う。


「進化を認めるか」


商業連合代表が苦笑する。


「経済も進化だ」



夜。


アルトは塔の上に立つ。


視界の端でUIが更新される。


【領域支配】

自律制御成功例:増加

抑制依存度:低下


(時代が変わる)


背後からアルカが言う。


「あなたは三百年前なら危険人物でした」


「今は?」


「転換点です」


風が吹く。


世界は抑制の時代から、


調整と進化の時代へ移ろうとしている。


だが――


全てが順調なわけではない。


進化は必ず、別の歪みを生む。


物語は次に、


“進化の副作用”へと踏み込む。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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