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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第61話 古代の抑制装置

世界会議の翌日。


アストレアの議事堂は一転して静まり返っていた。


だが地下――

資料保管区画では、別の会議が開かれている。


参加者は少数。


アルト。

セレスティア。

ハインリヒ。

そして――


古代研究者、アルカ=ノエル。


彼女は卓上に、古びた石板と写本を並べた。


「これが、三百年前の記録です」



アルカは冷静な声で続ける。


「測定制度が導入されたのは、深度暴走時代の終盤」


セレスティアが目を細める。


「王国記録にも同様の記述がある」


アルカは頷いた。


「当時、世界各地で“接続過剰者”が出現しました」


石板に刻まれた図。


空間の裂け目。

浮遊する都市。

歪んだ重力線。


「自然災害ではありません」

「人為的現象です」


沈黙。



ハインリヒが低く言う。


「測定制度は、抑制装置だった」


「ええ」


アルカははっきり答える。


「深度の上限を“社会的基準”として固定し、過剰成長を抑えた」


ラグスが腕を組む。


「じゃあ今は」


「上限が緩んだ」


アルトは静かに言う。


「抑制が弱まった」



アルカは新たな写本を開く。


「ですが、興味深い記述があります」


“深度は進化の兆候なり”


セレスティアが読み上げる。


「……進化?」


「抑制は安全だが、停滞も生む」


アルカは続ける。


「当時の学者たちは、抑制と進化の間で議論していました」


ハインリヒが小さく笑う。


「三百年前から同じか」



アルトは問う。


「暴走はなぜ止まった」


アルカは石板を指差す。


「全水晶網の一斉同期」


「世界規模で閾値を固定した」


沈黙。


「それが、現在の世界標準」



セレスティアが低く言う。


「あなたは、その固定を揺らした」


アルトは否定しない。


「だが、完全解除はしていない」


アルカが頷く。


「ええ。今は“可変域”が広がっただけ」


ハインリヒが問う。


「完全解除すれば?」


アルカは一瞬黙る。


「世界の法則が再編される可能性」


静寂。



その時。


地下保管区画がわずかに揺れる。


【深度異常検出】

【発生源:北方同盟境界】


ハインリヒが顔を上げる。


「連鎖している」


アルトは目を閉じる。


視界の端にUIが浮かぶ。


【領域支配】

世界水晶網:負荷増大

暴走閾値接近


(このままでは、再発する)



アルカが静かに言う。


「問題は、制度そのものではない」


「?」


「深度が増えている」


セレスティアが眉をひそめる。


「自然増加?」


「ええ」


アルカははっきりと言う。


「人類全体の接続深度が、ゆるやかに上昇している」


沈黙。


ハインリヒが呟く。


「抑制装置が限界に近づいている」



アルトはゆっくりと立ち上がる。


「制度は悪ではない」


一拍。


「だが、永遠でもない」


セレスティアが言う。


「進化を許容する枠が必要」


「そうだ」


ハインリヒが頷く。


「抑制から調整へ」



北方同盟境界。


空が歪み、氷原が浮き上がる。


中心に立つ影。


イグナート。


彼の深度は安定していない。


だが以前より制御している。


「……聞こえる」


彼は呟く。


「世界の声が」


空間が震える。



アストレア地下。


アルトは石板を見つめる。


三百年前の記録。


暴走。

抑制。

固定。


そして今。


可変。


視界の端でUIが更新される。


【領域支配】

深度上昇傾向:継続

抑制限界:接近中


アルカが静かに言う。


「もし抑制装置が限界なら」


「?」


「新しい構造が必要です」


沈黙。


アルトは答える。


「壊すのではなく」


一拍。


「進化させる」


風が吹く。


世界は揺れている。


だがそれは崩壊の前触れか、

進化の兆しか。


物語は、


制度の再定義から


世界構造の再設計へと進み始めた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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