第60話 世界会議提案
中立都市アストレア。
帝国圏と王国圏の中間に位置する交易都市。
古くから戦を避けるために「中立」を貫いてきた場所だ。
その中央議事堂に、各国の旗が並ぶ。
帝国。
ヴァルメリア王国。
商業連合都市群。
聖教国家ルーメン。
北方遊牧同盟。
そして――
三領代表として、アルト・レインハルト。
*
開会前。
控室でセレスティアが言う。
「あなたは国家代表ではない」
「知っている」
「でも、実質的な中心よ」
アルトは否定も肯定もしない。
「私は更新を提案しただけだ」
「その“だけ”が世界を揺らした」
セレスティアは小さく笑う。
「自覚しなさい」
*
議事堂。
ハインリヒが開会を宣言する。
「本会議の目的は一つ」
静寂が広がる。
「測定制度の位置づけを再定義すること」
商業連合代表が即座に口を開く。
「交易基準の再安定化を要求する」
聖教国家代表が続く。
「制度は信仰の代替ではない」
北方同盟代表は腕を組む。
「帝国独占を終わらせろ」
空気が張り詰める。
*
ハインリヒはアルトを見る。
「閾値更新の当事者として、意見を」
アルトは中央に立つ。
視線が集中する。
「制度は壊れていない」
一拍。
「揺れただけだ」
商業連合代表が言う。
「揺れで経済は止まる」
「止まったのは、数値依存だ」
ざわめき。
*
アルトは続ける。
「測定は枠だ」
「枠が絶対であるかのように扱った結果、揺れが恐怖になった」
聖教代表が低く言う。
「では、どうする」
「共有する」
北方同盟代表が鼻で笑う。
「帝国が主導する“共有”か?」
「違う」
アルトは即答する。
「管理を分散する」
沈黙。
*
ハインリヒが問う。
「具体案は」
アルトは三つ指を立てる。
「第一、閾値調整は単独で行わない」
「第二、各国に深度観測権を与える」
「第三、測定不能を排除理由としないことを世界基準とする」
議場がざわめく。
軍部代表が小声で言う。
「権限を分けるのか」
ハインリヒは静かに言う。
「独占は対立を生む」
*
セレスティアが立ち上がる。
「王国は共同管理に賛成する」
商業連合代表が続く。
「交易基準の透明化を条件に賛成」
聖教国家代表は慎重だ。
「信仰領域への干渉がないことを条件に」
北方同盟代表は腕を組んだままだ。
「分散管理は弱体化につながる」
アルトが視線を向ける。
「弱体化ではない」
一拍。
「暴走の予防だ」
*
その瞬間。
議事堂の水晶が揺れる。
【深度異常検出】
【発生源:商業連合港湾都市】
ざわめきが広がる。
「またか!」
商業連合代表が立ち上がる。
「港が浮いている!」
空間歪曲の映像が投影される。
海面がねじれ、船が傾く。
ハインリヒが低く言う。
「臨界だ」
アルトは目を閉じる。
視界の端で、UIが強く光る。
【領域支配】
単独制御:成功率低下
共同干渉:必要
(ここで示す)
*
アルトは言う。
「協力を」
セレスティアが即座に頷く。
「王国水晶網、接続」
ハインリヒも命じる。
「帝国水晶網、出力制限解除」
商業連合代表が叫ぶ。
「我が国も接続!」
三つの水晶網が共鳴する。
光が重なる。
空間歪曲が徐々に収束する。
完全ではない。
だが、沈静化。
静寂。
*
北方同盟代表が低く言う。
「……単独では無理だったな」
アルトは頷く。
「制度は共有基盤だ」
ハインリヒが宣言する。
「世界共同管理体制を暫定導入する」
ざわめき。
だが、反対は少ない。
皆、今見た。
単独では限界があると。
*
会議後。
セレスティアが言う。
「あなたは王にならないのね」
「ならない」
「でも中心にいる」
アルトは海を見つめる。
「中心ではない」
一拍。
「境界だ」
風が吹く。
世界は、帝国の手を離れつつある。
制度は、共有された。
だが――
共有は、争いの種にもなる。
視界の端で、UIが更新される。
【領域支配】
世界共同管理:暫定成立
安定度:低〜中
物語は次の段階へ進む。
制度の再定義から、
世界構造の解明へ。
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