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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第59話 外交圧力

帝都・中央議事堂。


世界会議開催の通達が出された翌日から、

帝都の空気は明らかに変わった。


広間には各国の使節団が到着している。


ヴァルメリア王国。

商業連合都市群。

聖教国家ルーメン。

北方遊牧同盟。


測定制度は、もはや帝国の内政問題ではなかった。



軍部代表が低く言う。


「帝国が世界を揺らしたと見なされている」


測定局長も険しい。


「“基準改竄”との表現まで出ています」


ハインリヒは落ち着いている。


「事実は?」


「閾値更新は三領起点」

「だが世界水晶網に同期」


「つまり」


「制度は世界標準」


沈黙。


「帝国が握っているのは製造権だ」


ハインリヒは静かに言う。


「所有権ではない」



同時刻、三領。


セレスティアが最新報告を読む。


「商業連合都市で、契約停止が相次いでいる」


「測定値再評価で信用格付けが揺らいだ」


ミヒャエルが補足する。


「交易基準が数値依存だったため、連鎖的に契約が凍結」


ラグスが唸る。


「数値経済か」


「信用の可視化は便利よ」


セレスティアが言う。


「でも絶対視すれば脆い」



アルトは静かに言う。


「制度が万能であるかのように扱った」


「違う?」


「制度は枠だ」

「中身は人間だ」


セレスティアの瞳がわずかに柔らぐ。


「理想主義ね」


「現実主義だ」



帝都では抗議が強まっていた。


「王位継承の再審議を求める」

「帝国の制度に依存しすぎた」


ヴァルメリア王国使節が声を上げる。


「世界標準を帝国単独で決めることは認められない」


商業連合代表も続く。


「交易基準の再協議を要求する」


聖教国家代表が言う。


「制度は神意の代替ではない」


会議室が騒然とする。



ハインリヒは立ち上がる。


「帝国は制度を独占しない」


静寂が広がる。


「世界会議にて共同管理体制を協議する」


ざわめき。


軍部代表が低く言う。


「譲歩しすぎです」


「譲歩ではない」


ハインリヒは静かに言う。


「現実だ」



三領。


アルトのもとへ正式招待状が届く。


――世界会議への出席要請。


ラグスが笑う。


「世界の代表か」


「代表ではない」


アルトは否定する。


「当事者だ」


セレスティアが頷く。


「あなたがいなければ議論は空論になる」



その夜。


アルトは測定塔の最上階に立つ。


視界の端で、UIが淡く光る。


【領域支配】

世界水晶網:接続強度増加

干渉可能域:拡張


(広がりすぎている)


単独制御は危険。


共同管理が必要。


だが――


共同管理は、権力闘争を生む。



北方遊牧同盟の代表が帝都で発言する。


「帝国の水晶を使わない選択肢もある」


空気が凍る。


測定局長が息を呑む。


「代替技術は存在しないはず」


「ならば、作る」


世界は分裂の兆しを見せ始める。


制度の共有か。

制度の分裂か。



三領。


リアがアルトに言う。


「もし世界が割れたら?」


「割れさせない」


「どうやって?」


アルトは少し考える。


「基準を奪い合わない」


リアは首を傾げる。


「奪い合い?」


「制度を支配しようとすれば、戦争になる」



帝都。


ハインリヒが一人、古い設計図を見ている。


「独占から共有へ」


小さく呟く。


「共有から、対立へはさせない」



港に、再び船が集まる。


世界会議へ向かうためだ。


セレスティアが言う。


「これは外交よ」


アルトは答える。


「境界だ」


「何の?」


「国家と制度の」


風が吹く。


測定塔が静かに光る。


世界は今、帝国に圧力をかけている。


だがそれは敵意ではない。


不安だ。


恐怖だ。


そして――


再定義への圧力。


物語は、国家の枠を越え、


世界秩序の再構築へと進む。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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