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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第58話 世界標準

北西州の暴走事件は、三日で鎮静した。


だが、その余波は静まらなかった。


帝都測定局・緊急通信室。


【ヴァルメリア王国:重力異常確認】

【商業連合都市:水晶同期揺らぎ】

【聖教国家:深度異常兆候】


「……三国同時か」


測定局長が顔を引きつらせる。


ハインリヒは、観測盤を見つめたまま言う。


「局所ではない」


一拍。


「世界水晶網全体の揺らぎだ」



三領・会議室。


セレスティア、アルト、エルデン、ミヒャエルが集まっていた。


机の上には各国から届いた報告書。


「王国でも類似現象が発生したわ」


セレスティアが言う。


「規模は小さいけれど」


「原因は同じだ」


エルデンが静かに補足する。


「閾値更新による深度再分布」


ミヒャエルが整理する。


「つまり、今まで抑制されていた層が可視化された」


ラグスが腕を組む。


「抑えてた蓋が少し浮いたってことか」



セレスティアがアルトを見る。


「あなたは分かっていた?」


「可能性は」


「それでもやった」


「締め続ける方が危険だった」


沈黙。



帝都。


緊急閣議が開かれていた。


軍部代表が声を荒げる。


「世界が不安定化している!」


「責任は帝国にあると見なされる!」


測定局長も険しい。


「各国が共同管理を要求する可能性があります」


ハインリヒは静かに言った。


「拒否すれば?」


「帝国独裁の疑念が強まります」


「受け入れれば?」


「制度の主導権を失います」


沈黙。


ハインリヒは、ゆっくりと決断する。


「世界会議を開く」


ざわめき。


「制度の位置づけを再定義する」



三領。


その報が届く。


「帝都が国際会議を提案」


ミヒャエルが読み上げる。


「開催地は中立都市アストレア」


セレスティアが小さく笑う。


「ようやく、背骨が自覚したわね」


ラグスが問う。


「背骨?」


「世界標準よ」


セレスティアは真顔になる。


「測定制度は帝国のものじゃない」


「世界の共通規格」



エルデンが、古い設計図を広げる。


そこには小さな印がある。


「見てほしい」


アルトが覗き込む。


「“外部同期機構”?」


「当初から、国際接続を前提にしていた」


ミヒャエルが息を呑む。


「最初から世界規模だった」


エルデンは頷く。


「帝国は製造者だったが、所有者ではない」



アルトは静かに言う。


「制度は、共有資産だ」


セレスティアが即座に返す。


「ならば、管理も共有すべき」


「賛成だ」


ラグスが驚く。


「即答か」


「独占は、恐怖を生む」


アルトは淡々と続ける。


「恐怖は制度を歪める」



その時、再び急報。


「商業連合都市で水晶暴走」

「魔力逆流現象」


セレスティアが顔を強張らせる。


「連鎖している」


エルデンが低く言う。


「深度再分布が安定していない」


アルトは視界の端のUIを見る。


【領域支配】

世界水晶網:同期不安定

安定化には共同干渉が必要


(単独では無理か)



夜。


アルトは港に立つ。


セレスティアが隣に来る。


「あなた一人で制御できる?」


「できない」


彼は即答する。


「では?」


「共有する」


「誰と?」


アルトは海を見つめる。


「世界と」


セレスティアは小さく息を吐く。


「理想家ね」


「現実だ」



帝都。


ハインリヒが呟く。


「独占から共有へ」


測定局長が不安げに問う。


「帝国の威信は」


「威信より安定だ」


一拍。


「世界が崩れれば、威信も意味を持たない」



三領。


リアが夜空を見上げる。


「なんか、星が揺れてる」


ラグスが笑う。


「気のせいだ」


だが、アルトは感じていた。


世界接続の波。


深度の揺れ。


視界の端で、UIが再び点灯する。


【領域支配】

世界会議:必須イベント

管理形態:再定義段階


境界は、国境を越えた。


制度は、帝国の手を離れつつある。


物語は――


世界標準の再定義へと進む。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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