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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第57話 国家の背骨

三領・迎賓館。


帝国式でも王国式でもない、中立の応接室。


アルトとセレスティアは、向かい合って座っていた。


護衛は最小限。

だが、緊張は濃い。


「単刀直入に言うわ」


セレスティアは視線を逸らさない。


「あなたの閾値更新で、王国騎士団の七名が再評価対象になった」


「知っている」


アルトは即答する。


「そのうち一人は、王位継承候補よ」


「深度が変動しただけだ」


「それが問題なの」


彼女は静かに言う。


「王位継承は測定値を基準に正統性を担保している」


ラグスが小さく舌打ちする。


「数値で王を決めてるのか」


セレスティアは否定しない。


「能力は国家の安定に直結する」


一拍。


「制度は、国家の背骨よ」



アルトは問う。


「背骨が折れたのか」


「揺れた」


即答。


「揺れは崩壊の前兆になり得る」


「揺れは成長でもある」


セレスティアの瞳がわずかに揺れる。


「理想論ね」


「現実だ」


アルトは淡々と返す。



セレスティアは資料を広げる。


「測定水晶は帝国製」

「世界各国が同一基準を使用」

「つまり」


「帝国は世界の制度管理者」


アルトは小さく首を振る。


「管理者ではない」


「なら何?」


「調整者だ」


沈黙。


「あなたが?」


「違う」


アルトは否定する。


「制度が、だ」



セレスティアは立ち上がる。


窓の外、測定塔が見える。


「王国は、三百年前の“深度暴走時代”を記録している」


アルトの視線が動く。


「暴走?」


「深度過剰者が自然災害級の現象を起こした」

「空が裂け、重力が歪み、都市が沈んだ」


ラグスが低く呟く。


「……魔獣生態圏の異常と似てるな」


セレスティアは頷く。


「測定制度は、その再発を防ぐために作られた」


一拍。


「あなたは安全弁を緩めた可能性がある」



アルトは静かに答える。


「安全弁を締めすぎれば、爆発する」


セレスティアが振り返る。


「根拠は?」


「恐怖は蓄積する」


「理屈ね」


「経験だ」


沈黙。



その時、ミヒャエルが急報を持って入室する。


「北西州で局所重力異常発生」

「測定不能から成長途上に再分類された青年が中心」


セレスティアの表情が硬くなる。


「……暴走」


アルトは即座に立ち上がる。


「規模は」


「半径三百メートル」

「建造物損壊あり」


セレスティアが問う。


「止められるの?」


アルトは短く答える。


「止める」



北西州。


地面が歪んでいる。


石畳が浮き、崩れ、重力が乱れている。


中心に立つ青年が叫ぶ。


「俺は危険なんだろ!」

「排除されるんだろ!」


空間が軋む。


セレスティアが息を呑む。


「これが……」


アルトは前に出る。


「イグナート」


青年の名を呼ぶ。


青年が振り向く。


「お前のせいだ!」


重力が跳ね上がる。


アルトは動かない。


視界の端で、UIが強く光る。


【領域支配】

深度過剰接続を検出

局所安定化:可能


アルトは干渉する。


地面が静まる。

重力が均される。


完全制圧ではない。

緩和。


「俺は壊れる!」


イグナートが叫ぶ。


「壊れない」


アルトは静かに言う。


「深度は力じゃない」

「接続だ」


「接続なんていらない!」


「なら切るか?」


沈黙。


「切れば、死ぬ」


青年の瞳が揺れる。


セレスティアが一歩前に出る。


「王国にも、あなたのような者がいる」


イグナートが息を荒くする。


「俺は異常だ」


アルトは首を振る。


「余白だ」


空間の歪みが徐々に収束する。



事件は鎮静化した。


完全解決ではない。

だが、崩壊もない。


セレスティアは、震える指を握り締める。


「……制御できるの」


「できる」


アルトは答える。


「だが、私一人では無理だ」


「どうするの」


「世界で共有する」


沈黙。


「制度は帝国のものではない」


アルトは続ける。


「世界のものだ」


セレスティアがゆっくりと頷く。


「なら」


一拍。


「世界で決めましょう」



三領へ戻る途中。


セレスティアが言う。


「あなたは破壊者ではなかった」


「最初から違う」


「更新者ね」


アルトは否定も肯定もしない。


視界の端で、UIが更新される。


【領域支配】

国際共同管理:可能性検出


境界は、国境を越えた。


制度は、世界規模へ。


物語は――


もはや帝国の内政ではない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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