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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第51話 秩序の剣

境界線の上で、風が止んだ。


ダルク・ヴァインは、ゆっくりと剣を抜いた。


無駄のない動作。

威圧でも、挑発でもない。


ただ、職務。


「最終確認だ」


低い声が響く。


「測定不能者リアを帝都へ移送する」

「妨害は、秩序への敵対とみなす」


三領の兵が動く。

だが、アルトが手で制した。


「武器を下ろせ」


ラグスが歯を食いしばる。


「正気か」


「戦えば、帝都は正当化される」


アルトは静かに言う。


「恐怖を証明することになる」



ダルクが一歩踏み出す。


「理屈で止められると思うな」


「止めるつもりはない」


アルトは正面から受ける。


「問うだけだ」


「何を」


「測定とは、何を守る制度だ」


ダルクの眉がわずかに動く。


「秩序だ」


「秩序とは何だ」


「予測可能性だ」


即答。


「予測不能は混乱を生む」

「混乱は暴力を生む」

「暴力は戦乱を生む」


「だから排除?」


「管理だ」


ダルクの声は揺れない。



エルデンが、静かに口を開く。


「ダルク」


ダルクの目が細まる。


「……設計者殿」


「まだ覚えていたか」


「理論は覚えている」


一拍。


「だが、理論は現場を救わない」


エルデンは苦く笑う。


「現場を救うために、檻を作った」


「その檻が揺れている」


ダルクの視線がアルトへ向く。


「揺らしているのは、この男だ」



リアが小さく声を出す。


「私は、何が違うの」


誰もすぐには答えない。


アルトが言う。


「違わない」


ダルクが即座に否定する。


「違う」


空気が張る。


「測れないということは、限界が分からないということだ」


ダルクは続ける。


「限界が分からない力は、恐怖だ」


「恐怖は排除する?」


「制御する」


アルトは一歩前に出る。


「制御とは、閉じ込めることか」


「必要なら」



視界の端で、UIが強く明滅する。


【領域支配】

外部強制力を検出

干渉可能域:局所


アルトは深く息を吸う。


「戦わない」


ラグスが息を呑む。


「だが」


アルトの声がわずかに低くなる。


「秩序の前提を問う」


地面が、微かに震える。


ダルクが目を見開く。


「何を――」


アルトは、水晶に触れていない。

だが、測定塔が共鳴する。


【領域支配】

測定制度へ接続


映写板が勝手に起動する。


文字が流れ出す。


【世界接続深度:リア】

【深度:不安定・成長途上】

【干渉性:低】


ざわめきが広がる。


ダルクが叫ぶ。


「停止しろ!」


「止められない」


アルトは静かに言う。


「これは制度の内部だ」


エルデンが目を見開く。


「……閾値を書き換えたのか」


アルトは否定しない。


「境界を一段、広げただけだ」



映写板の表示が続く。


【危険度:未確認】

【排除推奨:なし】


リアが呆然と画面を見る。


「……危なく、ない?」


ダルクの拳が震える。


「基準を操作したな」


「基準を“見直した”」


アルトは返す。


「深度は連続値だ」

「成長途上の者を固定値で裁くのは、早計だ」


エルデンが、かすかに笑う。


「檻を壊さず、広げたか」



ダルクは剣を下げない。


「前例ができる」


「そうだ」


「測定不能が増える」


「そうかもしれない」


沈黙。


「それでも、制度は残る」


アルトははっきりと言う。


「絶対ではなくなるだけだ」


ダルクの目が揺れる。


恐怖。

怒り。

そして、迷い。


「……今回だけだ」


低い声。


「少女は残せ」


ラグスが息を吐く。


「だが」


ダルクは視線を逸らさない。


「次は通らない」


「構わない」


アルトは答える。


「次も問う」



帝都強化部隊は撤収した。


リアは、その場に立ち尽くしている。


「……ありがとう」


アルトは首を振る。


「選んだのは、お前だ」


リアは、小さく頷いた。



夜。


エルデンがアルトに言う。


「やったな」


「壊してはいない」


「だが、制度は君を認識した」


視界の端で、UIが更新される。


【領域支配】

測定制度:閾値更新完了

干渉痕跡:帝都側に検知されます


エルデンが続ける。


「ハインリヒは気づく」


「気づかせる」


アルトは静かに言う。


「制度は、恐怖を減らすためにある」


一拍。


「なら、恐怖の定義を更新する」


遠く、帝都の方角に雷が鳴る。


秩序は、まだ剣を抜いていない。


だが――


檻は、確実に広がり始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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