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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第50話 檻の構造

夜。


測定塔の最上階に、アルトとエルデンの二人だけが残っていた。


中央の水晶は、微弱な光を放っている。


「……改めて説明しよう」


エルデンが、水晶に触れずにその周囲を歩く。


「測定制度は三層構造だ」


アルトは黙って聞く。


「第一層――観測」

「第二層――分類」

「第三層――配分」


杖で床を軽く叩く。


「観測とは、世界接続深度の測定」

「分類とは、属性と適性の整理」

「配分とは、役割と権限の割り振り」


ミヒャエルが小声で復唱する。


「……秩序の設計図」


「そうだ」


エルデンは頷く。



「問題は第一層だ」


水晶が、わずかに明滅する。


「深度は本来、連続値だ」

「だが、制度は離散化する」


ラグスが眉をひそめる。


「分かりやすく言え」


「階級に分けるということだ」


エルデンは簡潔に言う。


「S・A・B・C……」

「本来は連続しているものを、段差にする」


アルトが静かに言う。


「段差は、争いを減らす」


「その通り」


エルデンは肯定する。


「曖昧さは、恐怖を生む」

「だから境界を引いた」


一拍。


「だが、境界の外に出る者が現れた」



アルトは水晶を見つめる。


「私か」


「君だけではない」


エルデンは首を振る。


「だが、君は象徴だ」


「深度が一定値を超えると、制度は“飽和”する」


ミヒャエルが息を呑む。


「飽和……」


「観測不能になる」

「正確には、観測拒否」


ラグスが低く言う。


「制度がビビってるってことか」


エルデンは微笑む。


「表現は粗いが、近い」



アルトの視界の端で、UIが重なる。


【領域支配】

外部制度解析:進行中

測定制度=深度閾値型制御


(閾値……)


エルデンが続ける。


「深度が高い者は、制度の配分結果に干渉できる」


「干渉?」


「基準を書き換える可能性がある」


沈黙。


「だから、排除する?」


「排除すれば、制度は安定する」


エルデンは淡々と言う。


「だが、進化は止まる」



アルトは問う。


「ハインリヒは?」


「理解している」


エルデンは即答する。


「彼は秩序を守りたい」

「だが、制度の限界も知っている」


「ならなぜ再測定を?」


「成熟だ」


エルデンの目が光る。


「制度を広げるか、固定するか」

「その分岐点にいる」



その時、扉が叩かれる。


ミヒャエルが応対する。


「……報告です」


顔色が変わっている。


「北部で、測定不能の少女が拘束されました」

「帝都強化部隊が移送中です」


空気が凍る。


ラグスが立ち上がる。


「子どもだぞ!」


「年齢は十三」


ミヒャエルの声が低い。


「暴れてはいません」

「ただ、表示が出ない」


エルデンが目を閉じる。


「……始まったな」



翌朝。


三領の境界に、帝都の強化部隊が現れた。


先頭に立つ男は、漆黒の鎧をまとっている。


鋭い目。

無駄のない動き。


「ダルク・ヴァインだ」


低い声が響く。


「測定不能者の移送を行う」


少女――リアは、鎖こそないが、囲まれている。


怯えてはいない。

だが、唇を噛んでいる。


アルトが前に出る。


「理由は」


ダルクは即答する。


「制度の保全」


「危険性は確認されたのか」


「確認不要だ」


冷たい声。


「測れない者は、潜在的危険だ」


リアが、小さく言う。


「……私は何もしてない」


ダルクは視線を向けない。


「していないかどうかは問題ではない」


ラグスが怒鳴る。


「狂ってる」


「違う」


ダルクは一歩前に出る。


「恐れているだけだ」


沈黙。



アルトが静かに言う。


「測れないから排除するのか」


「排除ではない」


ダルクは言い切る。


「管理だ」


「管理とは何だ」


「予測不能を減らすことだ」


一拍。


「秩序は、予測可能性の上に成り立つ」


エルデンが小さく呟く。


「……理論通りだ」



アルトはリアを見る。


「選ぶか」


少女は顔を上げる。


「選ぶ?」


「帝都へ行くか」

「ここに残るか」


ダルクが低く言う。


「拒否すれば制度外だ」


アルトは視線を逸らさない。


「制度外でも、生きられる」


リアの手が震える。


「……私は」


沈黙。


風が吹く。


森の葉が揺れる。


「……ここに残る」


小さな声。


だが、確かだった。



ダルクが剣の柄に手をかける。


「反逆とみなす」


アルトが前に立つ。


「制度は壊さない」


静かな声。


「だが、絶対にもさせない」


視界の端で、UIが強く光る。


【領域支配】

外部強制介入を検知

更新干渉:準備完了


ダルクと、アルト。


秩序と、更新。


剣はまだ抜かれていない。


だが、境界は――


すでに引かれていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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