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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第49話 設計者の残影

再測定の翌日。


三領には、奇妙な静けさがあった。


恐慌は起きていない。

暴動もない。


だが、人々の視線が変わっていた。


――数値は、絶対ではない。


その認識が、ゆっくりと広がっている。



測定塔の一室。


帝都監察官が、通信水晶に向かって報告していた。


「……世界接続深度、計測範囲外」

「制度適合度、算出不能」


水晶越しに沈黙が流れる。


やがて、低い声が返る。


「特別審査対象として帝都へ召喚を」


「本人が応じない場合は?」


「制度外扱い」


冷たい決定だった。



その日の夕刻。


三領の外れに、一人の老人が立っていた。


質素な外套。

白髪。

杖。


だが、その目だけが鋭い。


「……やはり、ここか」


彼は、測定塔を見上げる。



アルトは、来訪者の報告を受けた。


「名は?」


「エルデン・クロウと」


その名に、ミヒャエルが反応する。


「……まさか」


ラグスが首を傾げる。


「誰だ?」


ミヒャエルが低く言う。


「測定制度の初期設計責任者です」


空気が変わる。



応接室。


エルデンは静かに椅子に座っていた。


アルトが入室する。


目が合う。


一瞬で、観察が終わる。


「……なるほど」


エルデンは、ゆっくりと頷いた。


「君は“測れない”のではない」


アルトは黙っている。


「測定が、追いついていないだけだ」


ラグスが息を呑む。


「どういう意味だ」


エルデンは、杖を床に置いた。


「測定制度は、能力値を測るものではない」


ミヒャエルが眉をひそめる。


「では?」


エルデンの視線が、アルトに向く。


「世界との接続深度だ」


沈黙。



エルデンは続ける。


「人は皆、世界と繋がっている」

「魔力とは、その接続の副産物だ」


「深度が深ければ、影響も大きい」


アルトは静かに問う。


「なぜ、数値化した」


エルデンは目を閉じる。


「戦乱を止めるためだ」


一拍。


「深度の差が、争いを生んだ」

「強すぎる者が支配し、弱い者が反乱する」


「だから、数値で枠を作った」


ラグスが唸る。


「檻か」


「そうだ」


エルデンは否定しない。


「測定は、檻だ」



アルトは視線を落とす。


「私は、檻の外か」


「違う」


エルデンは即答した。


「君は檻の設計図を読める側だ」


空気が重くなる。


「深度が一定以上になると」

「制度に干渉できる」


「だから表示不能?」


「表示不能ではない」


エルデンは静かに言う。


「表示“拒否”だ」


ラグスが眉を上げる。


「拒否?」


「制度が、自身を守るために測定を止める」


ミヒャエルが震える声で言う。


「制度が……自律している?」


「完全ではない」


エルデンは苦笑する。


「だが、基準を守ろうとする構造は持っている」



アルトは、ゆっくりと立ち上がる。


視界の端で、UIが淡く反応する。


【領域支配】

外部理論との一致を確認

測定制度=接続深度制御装置


「なぜ、今さら現れた」


アルトが問う。


エルデンは答える。


「三件目の測定不能報告を聞いた」


一拍。


「制度が限界に来ている」



「ハインリヒは知っているのか」


アルトの問い。


「知っている」


エルデンは頷く。


「彼は私の弟子だ」


ラグスが驚く。


「弟子!?」


「優秀だ」

「だが、秩序を守ろうとする」


「間違っているか?」


エルデンは、ゆっくりと首を振る。


「間違っていない」


沈黙。


「制度は、恐怖を減らすためにある」


ハインリヒの言葉と重なる。


「だが」


エルデンの目が鋭くなる。


「恐怖を恐れすぎれば、進化を止める」



アルトは静かに問う。


「帝都は、私を排除するか」


「可能性は高い」


エルデンは即答する。


「深度が深すぎる者は」

「制度を上書きできる」


「だから危険」


「そうだ」



沈黙の後。


エルデンは小さく笑った。


「面白い」


「何がだ」


「私は、檻を作った」

「君は、檻を広げようとしている」


アルトは否定しない。


「壊さない」


「壊さないのが、厄介だ」


エルデンの目が細まる。


「壊す者は敵にできる」

「だが、更新する者は――」


一拍。


「制度そのものを変える」



外で、鐘が鳴る。


帝都からの第二報が届いた。


――特別審査のため、帝都出頭を求める。


ラグスが怒鳴る。


「行くな」


ミヒャエルが低く言う。


「拒否すれば制度外扱いです」


アルトは、エルデンを見る。


「どうする」


エルデンは、微笑んだ。


「君が決めることだ」


一拍。


「ただし」


「?」


「君は、もはや個人ではない」


沈黙。


「測れない者たちの、象徴だ」


外の空気が、重くなる。


アルトは、窓の外を見る。


森。

自由都市。

三領。


そして、帝都の方向。


「制度は壊さない」


小さく呟く。


「だが、絶対にはさせない」


視界の端で、UIが静かに点灯する。


【領域支配】

測定制度:更新可能域を検出


檻は、揺れている。


そして、その揺れは――


設計者すら予想していなかった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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