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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第48話 三領の選択

再測定の日程が告知されると、三領は静かな混乱に包まれた。


測定塔の前には、長い列ができている。


怒号はない。

だが、ざわめきが絶えない。


「数値が下がったらどうなる?」

「適性が変わったら、職は?」


帝都監察官たちは淡々と準備を進めている。

水晶の調整。

記録装置の設置。

公開用の記録板。


今回の測定は、すべて公開だ。


広場に設置された魔導映写板に、測定過程が映し出される。


ミヒャエルが低く言う。


「前例がありません」


「前例を作る」


アルトは静かに答える。



最初の被測定者は、若い農夫だった。


水晶に手を置く。


光が走る。


【体力:B】

【魔力:D】

【適性:農耕補助】


ざわめき。


「前と同じだ」


安堵の声。


だが、次の者で変化が出た。


【魔力:C → B】

【適性:戦闘補助】


「上がった?」


広場がどよめく。


帝都監察官が説明する。


「基準が再調整されています」

「誤差の是正です」


「誤差って何だ!」


声が飛ぶ。


アルトは、無言で映写板を見ていた。



昼過ぎ。


数値が下がった者が出た。


【魔力:B → C】


男は蒼白になる。


「仕事は……?」


監察官が冷静に言う。


「現時点での職務に直ちに影響はありません」


「現時点で?」


不安が広がる。



測定は続く。


上がる者。

下がる者。

変わらない者。


基準の揺れが、可視化されていく。


ラグスが呟く。


「安心なんて、ねぇな」


「安心は」


アルトは小さく言う。


「固定値ではない」



夕刻。


測定塔の周囲に、重い空気が漂う。


住民代表がアルトに詰め寄る。


「受け入れたのは、あなたです」

「これで生活が揺らげば――」


アルトは真正面から受け止める。


「揺れるのは、基準だ」


「基準が揺れれば、人生が揺れる!」


「揺れていなかったわけではない」


静かな声。


「見えていなかっただけだ」


沈黙。



帝都監察官が告げる。


「最後は、アルト・レインハルト殿」


広場が静まり返る。


ラグスが拳を握る。


「やめとけ」


「逃げるのか?」


アルトは問い返す。


「違う」


「なら、立つ」



測定塔の中央。


水晶の前に立つ。


学園時代。

追放の日。

表示不能の文字。


記憶がよぎる。


監察官が確認する。


「公開測定、開始します」


アルトは、水晶に手を置いた。


瞬間――


光が暴れる。


白。

青。

赤。

複数の属性が同時に脈打つ。


映写板に文字が流れ始める。


【解析中】

【深度測定中】

【適性算出不能】


ざわめきが爆発する。


「まただ!」


「表示されない!」


監察官が焦る。


水晶が軋む。


だが、今回は違った。


新たな表示が浮かぶ。


【世界接続深度:計測範囲外】

【属性:複合・未定義】

【制度適合度:算出不能】


沈黙。


そして、小さな声。


「……範囲外?」


監察官が顔を強張らせる。


「前例がない」


アルトは、水晶から手を離した。


光はゆっくりと収まる。


広場は、静まり返っている。


ラグスが呟く。


「なんだよ、それ」


ミヒャエルが震える声で言う。


「制度が、測れないのではなく」

「制度の範囲が足りない」


帝都監察官が、硬い声で言う。


「特別審査対象です」


「排除か?」


誰かが叫ぶ。


アルトは振り返り、広場全体を見渡した。


「違う」


静かな声。


「これが、再測定の結果だ」


一拍。


「制度は、未完成だ」


ざわめきが再び広がる。


だが今度は、恐怖だけではない。


疑問。


考え。


そして――


可能性。


視界の端で、UIが淡く表示される。


【領域支配】

測定制度との干渉を確認

更新可能性:検出


帝都。


測定局。


報告が届く。


ハインリヒは、表示内容を読み、目を閉じた。


「……範囲外か」


小さく、笑う。


「やはり、来たな」


制度は、壊れていない。


だが――


拡張を迫られている。


三領の空気は、変わった。


測れない者がいる。


だが、それでも立っている。


測定塔の前で、アルトは静かに言った。


「制度は、敵ではない」


一拍。


「だが、絶対でもない」


その言葉は、宣言だった。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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