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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第47話 再測定令

三領の測定塔は、静まり返っていた。


塔の最上階、円形の測定室。

中央には帝都製の測定水晶。

淡く、しかし不安定に光っている。


帝都からの通達は、すでに全文が公開されていた。


――全国再測定令。

――既測定者も対象。

――測定不能者は特別審査。

――拒否は制度外扱い。


「制度外、ね」


ラグスが吐き捨てる。


「帝都の外に出すってことか」


「正確には」


ミヒャエルが訂正する。


「制度の保護を受けられなくなる、です」


「同じだろ」


「違います」


ミヒャエルは静かに言う。


「制度の保護とは、軍事・流通・法的保証を含みます」

「それを外れるということは――」


「孤立」


ラグスが言い当てる。



アルトは、通達書を読み終えた。


帝都の文面は冷静だった。

感情も、敵意もない。


ただ、秩序の言葉だけが並んでいる。


「全員再測定か」


アルトは呟く。


「三領も例外なしです」


ミヒャエルが頷く。


「住民から問い合わせが来ています」

「測定で数値が下がったらどうなるのか」

「適性が変わったら職を失うのか」


ラグスが拳を握る。


「ふざけやがって」


「ふざけていない」


アルトは淡々と返す。


「帝都は本気だ」



三領の広場では、すでに議論が起きていた。


「また測るのか?」

「今さら何を変えるってんだ」


「数値が下がったら、昇進はどうなる?」

「適性外って出たら?」


不安は早い。

測定制度は“基準”だ。


基準が揺れれば、立場も揺れる。



測定塔の下で、ミヒャエルが言う。


「拒否しますか?」


ラグスは即答する。


「当然だ」


だが、アルトは首を振らない。


「拒否すれば?」


ミヒャエルが続ける。


「帝都は制度外扱いを宣言します」

「物流も軍籍も、法的保護も外れる」


「……三領は孤立する」


ラグスが低く唸る。


「受ければ?」


アルトが問い返す。


「受ければ」


ミヒャエルは少し迷う。


「数値の再定義が行われます」

「評価基準が強化される可能性も」

「……そして」


「そして?」


「あなたが、再び“測定不能”と出た場合」


沈黙。


塔の水晶が、かすかに脈打つ。



アルトは水晶に近づく。


かつて、学園時代。

この水晶は、何も示さなかった。


数値も、属性も、適性も。


――表示不能。


それが追放の理由になった。


「再測定、か」


アルトは水晶に手をかざす。

触れない。


触れれば、波形が乱れることは分かっている。


視界の端で、UIが淡く浮かぶ。


【領域支配】

外部干渉を検知

測定制度:再定義フェーズ


(成熟)


ハインリヒの言葉が脳裏をよぎる。


制度は成熟しなければならない。


「拒否は、簡単だ」


アルトは静かに言う。


「だが、拒否すれば帝都の恐怖を肯定することになる」


ラグスが睨む。


「じゃあ受けるのか?」


アルトは答えない。



その夜、臨時会議が開かれた。


三領の行政担当、部隊長、商人代表、住民代表。


「帝都に従うのか?」


「数値が変われば、補助金も変わる」


「子どもたちは?」


議論は割れた。


「拒否すれば孤立」

「従えば支配」


どちらも痛い。


アルトは、全員の意見を聞いていた。


最後に、問う。


「測定とは何だ?」


場が静まる。


「能力の確認だろ?」


「適性の判断だ」


「職業選定の基準だ」


アルトは頷く。


「それは事実だ」


一拍。


「だが、測定は“安心”でもある」


視線が集まる。


「数値がある」

「適性がある」

「だから、自分はここにいると説明できる」


沈黙。


「再測定は、安心を揺らす」


ミヒャエルが小さく頷く。


「だから不安が広がる」


ラグスが問う。


「結論は?」


アルトは、ゆっくりと答えた。


「受ける」


ざわめき。


「ただし」


声が止まる。


「公開する」


「公開?」


「再測定の過程を、すべて公開する」

「数値の算出方法も」

「基準も」


ミヒャエルが目を見開く。


「帝都は認めません」


「認めさせる」


アルトは淡々と言う。


「測定が秩序のためなら」

「秩序は透明でなければならない」



翌朝。


帝都へ返信が送られた。


――再測定、受諾。

――ただし、過程の公開を条件とする。


帝都中央府。


報告を受けた測定局長が眉をひそめる。


「公開?」


ハインリヒは、書面を読んだ。


そして、わずかに笑う。


「やはり、そう来たか」


「拒否すべきです」


測定局長が言う。


「公開は制度の根幹を揺らします」


「既に揺らいでいる」


ハインリヒは静かに言う。


「拒否すれば、彼の言う通り“恐怖”を肯定することになる」


一拍。


「受ける」


局長が息を呑む。


「公開の上で、再測定を行う」



三領の測定塔。


帝都の監察官が到着した。


測定水晶が、強く光る。


再測定の日が、決まる。


ラグスがアルトを見る。


「後悔してるか?」


アルトは首を振る。


「制度は、壊さない」


一拍。


「だが、絶対にもさせない」


視界の端で、UIが静かに点灯する。


【領域支配】

測定制度:接続開始


測る者と、測られる者。


秩序と、例外。


本当の衝突が、始まろうとしていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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