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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 影山クロウ


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第36話 祈りの領域

宗教自治領は、静かだった。


貧しい。

舗装された道は少なく、

家屋も古い。


だが――

荒れてはいない。


「……暴動は?」


ラグスが、確認するように聞く。


「ありません」


ミヒャエルが、淡々と答える。


「配給不足もありますが、

 争いは起きていません」


「治安部隊は?」


「常駐していません」


ラグスが、眉をひそめる。


「……じゃあ、

 どうやって保ってる?」


答えは、簡単だった。


祈りだ。


朝。


鐘が鳴る。


人々は、自然に集まる。

誰かに命じられたわけではない。


司祭が、静かに言葉を紡ぐ。


「今日も、生きていることに感謝を」


それだけだ。


アルトは、その光景を見ていた。


視界の端で、UIが反応する。


【領域支配】

観測対象:宗教自治領

管理指標:低

安定度:高



(……数値が、合わない)


「非効率ですね」


ミヒャエルが、小声で言う。


「物流も、

 医療も、

 最低限です」


「だが」


アルトは、視線を外さず言う。


「壊れていない」


司祭長が、彼らを迎えた。


白い衣。

穏やかな目。


「ようこそ」


敵意は、ない。


「あなたが、

 辺境を変えた管理官ですか」


司祭長は、静かに言う。


「噂は、届いています」


「管理は、

 していません」


アルトは、即座に訂正した。


「設計を、

 少し」


司祭長は、微笑んだ。


「似ていますね」


「……何がですか?」


「神と」


ラグスが、思わず身構える。


司祭長は、続ける。


「あなたは、

 人が正しく生きるための

 仕組みを作る」


一拍。


「神も、

 そう教えています」


アルトは、言葉を選んだ。


「……違います」


司祭長が、首を傾げる。


「私は、

 正しく生きさせるつもりはない」


静かな否定。


「人が選び、

 結果を引き受ける」


アルトは、続ける。


「それを、

 奪わないだけです」


司祭長は、しばらく黙っていた。


やがて、穏やかに言う。


「それは――

 恐ろしい考えです」


否定ではない。

警告だった。


「人は、

 選び続けることに

 耐えられない」


司祭長は、空を見上げる。


「だから、

 我々は祈ります」


一拍。


「選ばなくていい日を、

 与えるために」


アルトは、返す言葉を失った。


視界の端で、UIが沈黙する。


(……管理も、

 判断も、

 ここでは不要か)


ラグスが、低い声で言う。


「……助けなくて、

 いいんですか?」


アルトは、ゆっくりと首を横に振る。


「すでに、

 救われている」


それが、事実だった。


司祭長は、静かに告げる。


「我々は、

 あなたの制度を拒みます」


敵意は、ない。


「ですが――」


微笑む。


「あなたが拒まれることも、

 拒みません」


その言葉は、

どんな反論よりも強かった。


視界の端で、UIが淡く表示する。


【領域支配】

警告:

当該領域は

管理に適合しません



だが、続きがあった。


推奨:

非干渉



アルトは、小さく息を吐いた。


「……了解」


それは、

命令でも、宣言でもない。


選択だった。


夜。


宗教自治領の灯りは、少ない。


だが、

不思議と暗くはない。


アルトは、静かに呟いた。


「……正しさだけじゃ、

 人は生きられない」


それを、

初めて真正面から突きつけられた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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