表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 山奥たける


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/37

第29話 責任を恐れる者たち

帝都中央府。


直轄地の報告書は、机の上に積まれていた。

沈黙が、長く続く。


「……死者が出た」


誰かが、ようやく口を開いた。


「一名です」


事実確認の声。

だが、その先が続かない。


「誰が責任を取る?」


その問いが、宙に浮いた。


返事は、ない。


なぜなら――

答えが存在しないからだ。


帝都では、責任は常に“上”にある。


だが今回は違う。

現地が判断した。


「……判断を許したのは誰だ」


「許可は、出ていません」


「では、なぜ動いた!」


机が叩かれる。


だが、その怒りは

誰にも届かない。


「……辺境が、

 余計なことをした」


誰かが、吐き捨てるように言う。


「判断を渡した結果だ」


「死人が出たじゃないか!」


「だが――」


別の官僚が、言葉を選ぶ。


「判断しなければ、

 もっと死んでいた可能性もある」


その言葉に、

室内が静まった。


ハインリヒ・フォーゲルは、

ずっと黙っていた。


やがて、低く言う。


「……危険だな」


全員の視線が、集まる。


「判断を渡せば、

 必ず失敗が可視化される」


一拍。


「我々は、それに耐える制度を

 持っていない」


それが、核心だった。


「なら、どうする?」


誰かが、苛立ちを込めて問う。


ハインリヒは、ゆっくりと答える。


「判断を渡すな」


「……しかし」


「責任が明確になるのは、

 都合が悪い」


その言葉は、

帝都の本音だった。


同時刻。


直轄地の臨時判断会議では、

再び議論が行われていた。


空気は、重い。


「……怖い」


行政官が、正直に言った。


「次に失敗したら、

 また人が死ぬ」


住民代表も、俯く。


「……それでも、

 決めないと何も進まない」


部隊長が、歯を食いしばる。


「……逃げる方が、

 楽だ」


その言葉に、

全員が黙り込む。


だが。


「……逃げたら、

 次はもっと死ぬ」


誰かが、そう言った。


それは、

アルトの言葉ではない。


彼ら自身の判断だった。


会議は、続いた。


時間はかかった。

声も荒れた。


だが――

結論は出た。


三領側。


報告を受けたラグスが、

小さく息を吐いた。


「……まだ、やる気だ」


「当然だ」


アルトは、静かに答える。


「一度、

 責任を引き受けた人間は」


一拍。


「簡単には、

 元には戻れない」


視界の端で、UIが反応する。


【領域支配】

外部主体の判断継続を確認



それは、

数値では測れない成長だった。


帝都。


別の報告が、ハインリヒの机に置かれる。


直轄地・臨時判断会議

自律的運用を継続中


ハインリヒは、紙を見つめ、

静かに呟いた。


「……恐れているのは、

 失敗じゃない」


窓の外を見る。


「責任を、

 自分の名で負うことだ」


夜。


アルトは、灯りを落とす前に、

短く呟いた。


「……恐れた側が、

 置いていかれる」


それは、警告ではない。


構造の話だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ