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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 山奥たける


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第28話 判断された責任

臨時判断会議が動き始めてから、三日。


帝都直轄地の混乱は、確かに沈静化していた。

配給は回り、治安部隊も巡回を始めている。


だが――

問題は、必ず遅れてやってくる。


「……直轄地南区で、衝突が発生しました」


ミヒャエルの声は、抑えられていた。


「配給優先を巡る争いです。

 臨時判断会議の決定に反発する住民が……」


「死者は?」


ラグスが、即座に問う。


「……一名」


室内が、完全に静まり返った。


アルトは、目を閉じた。


視界の端で、UIが冷静に表示する。


【領域支配】

外部判断による結果を確認

当該事象は管理対象外です



(……分かっている)


だが、

胸の奥に重さが沈む。


「俺たちが介入していれば……」


ラグスが、悔しそうに言う。


「止められたかもしれない」


「かもしれない」


アルトは、否定しなかった。


「だが、それは――」


一拍。


「次の判断を奪う」


アルトは、立ち上がった。


「現地の記録をすべて出してくれ」


「……え?」


ミヒャエルが、戸惑う。


「介入するんですか?」


「違う」


アルトは、静かに言った。


「検証する」


届いた議事録は、生々しかった。


配給量の試算


優先区域の指定


反発が出る可能性の認識


すべて、書かれている。


判断は、軽率ではなかった。


だが――

想定が甘かった。


「……責任者は?」


アルトが、低く問う。


「臨時判断会議、三名全員です」


ミヒャエルが答える。


「連名で、署名があります」


アルトは、頷いた。


「逃げていない」


その日の夕方。


アルトは、直轄地へ向かわなかった。


代わりに、

書簡を送った。


短い文面だ。


判断は、記録されました

結果も、確認しました


次の判断を、求めます


ラグスが、驚いた顔をする。


「……慰めも、叱責も、ない?」


「それは、

 俺の役割じゃない」


アルトは、淡々と言う。


「俺がやるのは、

 “次を作ること”だ」


数日後。


再び、報告が届く。


「……臨時判断会議、再招集」


ミヒャエルの声に、緊張が混じる。


「内容は?」


「配給基準の再設計。

 衝突リスクを織り込んだ配分です」


「……変わったな」


ラグスが、ぽつりと呟く。


アルトは、報告書を見つめる。


死者が出た。

取り返しは、つかない。


だが――

判断は、更新された。


視界の端で、UIが静かに変化する。


【領域支配】

判断委譲:更新を確認

学習効果:発生



新しい一文が、追加された。


《判断委譲》

・結果を引き受けた主体は

 次の判断精度を向上させる



(……そうか)


これは、

俺のスキルじゃない。


彼らの成長だ。


帝都。


報告を受けた官僚が、机を叩いた。


「死者が出たではないか!」


「……はい」


「責任は、誰が取る!」


答えは、返ってこなかった。


正確には――

返せなかった。


帝都は、

“誰の責任か”を

決めていなかったからだ。


夜。


アルトは、一人で窓の外を見ていた。


判断を渡した。

結果も、渡した。


それでも――

関係は切れていない。


彼は、静かに呟く。


「……それでも、

 前に進むしかない」

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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