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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 山奥たける


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第21話 線を引いたのは誰か

帝都からの通達は、これまでと違っていた。


封蝋は一つ。

文面は、短い。


帝国中央府より通達


グラーデン・ローデン・ベルク三領における

新制度制定について確認する


本件は、反逆の認定を目的としない


「……珍しいな」


ラグスが、率直に言った。


「脅してこない」


「だから厄介だ」


アルトは、紙から目を離さず答える。


使者は、翌日到着した。


軍人ではない。

調整官でもない。


帝都法務院所属――

制度解釈官。


帝都が、

「力」ではなく

「言葉」で来た証拠だった。


応接室。


解釈官は、開口一番こう言った。


「まず確認したい」


視線は、穏やかだ。


「あなたは、

 帝国から独立するつもりはありますか?」


直球だった。


アルトは、首を横に振る。


「ありません」


解釈官は、少しだけ安堵した表情を見せる。


「では次に」


間を置く。


「なぜ、

 帝都法に基づかない制度を

 制定したのですか?」


アルトは、すぐには答えなかった。


地図を、机の上に広げる。


三領が、並ぶ。


「この線は、何だと思いますか?」


境界線を指す。


解釈官は、即答する。


「行政区分です」


「誰が引いた?」


「……帝都です」


アルトは、静かに頷いた。


「そうだ」


そして、次の問いを投げる。


「では、

 命が失われる場所を分けたのは誰だ?」


空気が、止まる。


「魔獣は、境界を知らない」


アルトは、淡々と言った。


「飢えも、暴動も、疫病も、

 線を越える」


解釈官は、反論しようとしたが、

言葉が出なかった。


「俺がやったのは、

 線を消したことじゃない」


アルトは、はっきりと言う。


「命が動く場所に、

 制度を合わせただけだ」


解釈官は、書類に目を落とした。


「……だが、それは

 帝都の権限を侵害している」


「侵害していない」


即答。


「帝都は、

 “ここを守る”と明文化していない」


一拍。


「だから、

 空白だった」


その言葉に、

解釈官の手が止まった。


「空白……?」


「誰も判断しない場所だ」


アルトは、静かに言った。


「判断されない場所では、

 人が死ぬ」


それが、彼の結論だった。


沈黙。


解釈官は、深く息を吐いた。


「……つまり」


言葉を選ぶ。


「あなたは、

 帝都が引いた線を否定したのではなく」


「線が引かれていない場所を、

 埋めただけだ」


アルトは、頷いた。


「問題はそこだ」


解釈官は、苦い顔をした。


「帝都法は、

 “空白”を想定していない」


「知っている」


アルトは、静かに言う。


「だから、

 俺は帝都法を使わなかった」


解釈官は、しばらく黙り込んだ。


やがて、書類を閉じる。


「……あなたを

 反逆者とは認定できない」


ラグスが、わずかに息を吐く。


だが、続きがあった。


「だが――」


視線が、鋭くなる。


「あなたの存在は、

 帝都の制度そのものを否定している」


それは、

警告だった。


その夜。


アルトは、一人で地図を見ていた。


境界線は、まだある。


だが、

誰もそれを基準に動いていない。


視界の端で、UIが静かに告げる。


【領域支配】

境界概念の揺らぎを検出

次段階条件:

・境界の再定義



(……線を引いたのは)


アルトは、心の中で答える。


人が生きる場所だ。


帝都。


解釈官の報告を読んだ幹部が、呻いた。


「……違法じゃない」


「だが、危険だ」


ハインリヒ・フォーゲルは、

報告書を見つめたまま、低く言った。


「……線を引く権利を、

 奪われつつある」


それが、

帝都にとって

どれほど致命的か――

誰も、まだ正確には理解していなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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