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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 山奥たける


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第20話 制度を一本に

決断は、会議の場では下されなかった。


三領同時危機から三日後。

アルト・レインハルトは、一人で書類に向かっていた。


税。

軍。

物流。

裁定。


それぞれ、三領で微妙に違う。


どれも「間違い」ではない。

だが――

同時に使えない。


(俺が判断を引き受け続ける限り、

 この歪みは残る)


それは、責任を集中させた代償だった。


翌朝。


三領の代表者と幹部が集められた。


空気は、静かだ。

だが、全員が分かっている。


今日は、

後戻りできない話が出る。


アルトは、前に立った。


「非常時の判断権を、俺に委ねてもらった」


誰も否定しない。


「だが、

 それは本来、

 制度が担うべき役割だ」


地図の横に、

一枚の紙を置く。


そこには、簡潔な条文が並んでいた。


「提案がある」


アルトは、淡々と言った。


「三領共通の制度を作る」


ざわめきは、起きなかった。

誰もが、予感していたからだ。


「誤解しないでほしい」


アルトは、すぐに続ける。


「これは、併合でも、吸収でもない」


視線を、エーリヒに向ける。


「ベルク領の内政は、

 これまで通り、あなたが決める」


次に、ミヒャエルを見る。


「ローデンも同じだ」


それから、全員を見る。


「ただし――」


一拍。


「命に直結する部分だけは、

 一本にする」


示されたのは、三つだけだった。


軍の指揮系統(非常時)


物流の優先順位


住民保護の基準


税率も、法体系も、文化も触らない。


「これだけでいい」


アルトは、そう言った。


ミヒャエルが、ゆっくりと口を開く。


「……帝都法ではないな」


「違う」


アルトは、即答した。


「帝都法は、

 帝都を前提に作られている」


そして、静かに続ける。


「これは、

 この三領が生き残るための制度だ」


エーリヒが、低い声で言った。


「……帝都は、認めない」


「認めさせない」


アルトは、淡々と言う。


「認められるかどうかで、

 作る制度じゃない」


沈黙。


だが、その沈黙は、拒絶ではなかった。


ラグスが、拳を胸に当てる。


「軍としては、

 一本化された方が助かります」


現場の声だった。


「命令が重ならない。

 迷わず動ける」


エーリヒは、しばらく目を閉じていた。


やがて、ゆっくりと頷く。


「……分かりました」


顔を上げる。


「非常時の制度統一、

 受け入れます」


ミヒャエルも、続いた。


「ローデンも、同意します」


その瞬間。


アルトの視界が、確かに揺れた。


【領域支配】

条件達成:

・制度の一本化



だが、まだ続く。


未達成条件:

・境界の確定



(……最後が残ったな)


その日の夕方。


帝都からの使者が、再び訪れた。


今度は、

命令ではない。


「……現地で、

 新しい制度を制定したと聞きました」


探るような口調。


アルトは、否定しなかった。


「事実です」


「それは、帝都法に基づかない――」


「基づいていません」


即答だった。


使者は、言葉に詰まる。


「……それは、

 反逆と見なされる可能性が――」


アルトは、静かに遮った。


「帝都法は、

 帝都のための制度です」


そして、はっきりと言う。


「この制度は、

 ここで生きている人間のためのものだ」


それ以上、話すことはなかった。


使者が去った後。


ラグスが、ぽつりと呟く。


「……もう、帝都の制度じゃ

 測れませんね」


アルトは、頷いた。


「最初から、

 測る気がなかっただけだ」


夜。


地図を前に、アルトは一人考える。


三領は、

事実上、同じ制度で動き始めた。


だが――

境界線は、まだ紙の上に残っている。


視界の端で、UIが告げる。


【領域支配】

統合率:76%

次段階:

・境界の再定義



アルトは、静かに息を吐いた。


「……次で、決まるな」


制度を一本にした今、

次は――

世界の区切り方そのものだ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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