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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 山奥たける


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第13話 監査官、来訪

帝都監査官が到着したのは、快晴の朝だった。


街道を進む一団は、前回の調整官とは違う。

護衛は少数だが精鋭。

服装は簡素、だが徽章だけは明確に“監査”を示している。


「……今回は、空気が違うな」


ラグスが小さく呟いた。


「確認しに来ただけだ」


アルトは、落ち着いた声で答える。


「まだ、裁く段階じゃない」


応接室。


現れた監査官は、初老の男だった。

名をヴァルター・クロイツ。

帝都でも“現場を知る側”として知られている人物だ。


「アルト・レインハルト管理補佐」


淡々と名を呼ぶ。


「私は、判断しに来たわけではない」


最初の一言が、それだった。


「見るために来た」


アルトは、短く頷く。


「ご自由に」


それ以上も、それ以下もない。


最初に見せたのは、倉庫だった。


統合された物流拠点。

無駄な中継はなく、

帳簿と実物が一致している。


「……数字が合っている」


ヴァルターは、帳簿を閉じた。


「辺境で、これは珍しい」


「制度を変えただけです」


アルトの答えは、簡潔だった。


「帝都式を?」


「現地式です」


一瞬、監査官の視線が鋭くなる。


次に案内したのは、兵の訓練場。


派手な号令はない。

だが、動きは揃い、無駄がない。


「死者は?」


「直近の魔獣戦で、ゼロです」


ヴァルターは、黙って記録を取る。


「……あり得ない」


独り言のように、そう漏らした。


街を歩く。


市場は落ち着いている。

住民の表情に、怯えがない。


ヴァルターは、ふと立ち止まり、露店の老婆に声をかけた。


「最近、帝都から何か指示は?」


「さあねぇ」


老婆は、肩をすくめる。


「ここじゃ、

 アルト様の決まりが一番早いからね」


その言葉に、監査官の手が止まった。


「……決まり?」


「そうさ」


老婆は、当たり前のように言った。


「困ったら、

 まずここでどうするか考える。

 帝都は……遠いからね」


それは、反逆ではない。

ただの生活だった。


応接室に戻る。


ヴァルターは、しばらく黙っていた。


「……一つ、聞かせてほしい」


「何でしょう」


「君は、帝都に逆らうつもりか?」


直球だった。


アルトは、即答しない。


そして、こう答えた。


「帝都に、

 逆らった覚えはありません」


「では?」


「帝都が想定していないやり方で、

 問題を解決しているだけです」


ヴァルターは、目を細めた。


「それが、

 どれほど危険か分かっているか?」


「分かっています」


アルトは、静かに言った。


「だから、ここでやっています」


帝都の中では、できない。

ここだから、できる。


夜。


ヴァルターは、宿で報告書を書いていた。


言葉を、何度も消しては書き直す。


最終的に、こう記した。


グラーデン領は安定している

違法行為は確認できない

ただし――


帝都の制度では、説明できない


筆を置き、深く息を吐く。


「……これは」


裁けない。

だが、放置もできない。


翌朝。


ヴァルターは、アルトに告げた。


「私は、

 問題なしと報告する」


ラグスが、思わず息を呑む。


だが、続きがあった。


「ただし、

 異常ありとも書く」


アルトは、頷いた。


「十分です」


それでいい。


帝都へ戻る道すがら、

ヴァルターは空を見上げた。


「……隔離したつもりが」


小さく、呟く。


「別の中心を作ってしまったな」

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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