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スキルなしと追放された俺、辺境で目覚めたのは〈領域支配〉だった 〜帝都が気づいた時には、もう遅い〜  作者: 山奥たける


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第10話 噂は、命令より速い

帝都中央府庁・第三会議室。


「……最近、辺境の報告が多くないか?」


会議の途中、若い官僚がそう口にした。

机の上には、各地から集まった定期報告書が積まれている。


「多い、というほどでもないだろう」


答えたのは、制度運用局の幹部、ハインリヒ・フォーゲルだった。

穏やかな声。

だが、その内側には苛立ちが混じっている。


「魔獣被害が減った、暴動が起きていない、兵の死者が出ていない……

 どれも“問題が起きていない”という報告です」


若い官僚は、紙束をめくりながら続けた。


「特に北方。

 グラーデン、ローデン、その周辺領地で同様の傾向が……」


「辺境が静かなのは、珍しいことじゃない」


ハインリヒは、軽く笑った。


「何も起きていないというのは、

 単に“表に出ていない”だけだ」


会議室に、同意の空気が広がる。

辺境とは、そういう場所だ。

問題は常にあるが、帝都まで届かない。


「ですが……」


若い官僚は、言葉を選びながら続けた。


「“同時期に複数領地で”

 同じ静けさが報告されるのは、少し不自然では?」


その一言で、空気がわずかに揺れた。


ハインリヒは、視線を向ける。


「君は、何が言いたい?」


「いえ。ただの疑問です」


官僚は慌てて頭を下げる。


「最近、現地から上がってくる文面が、どこか似ていまして。

 “統治が安定した”

 “現地判断で対処済み”

 ……同じ言い回しが多いのです」


一瞬、沈黙。


だが、すぐに別の幹部が口を挟んだ。


「それは、誰かが書式を真似ているだけだろう。

 辺境の役人は、そういうことをする」


「そうだ」


ハインリヒも頷いた。


「深読みする必要はない。

 問題が起きていないなら、結構なことだ」


彼は、報告書の束を指で叩いた。


「我々は、問題が起きた時に動けばいい」


その言葉は、帝都の論理そのものだった。


会議の後。


ハインリヒは自室に戻り、改めて数枚の報告書に目を通す。

無意識のうちに、同じ名前が視界に入った。


グラーデン領。

ローデン領。


そして、管理補佐官の欄。


「……アルト・レインハルト」


かつて、自分が辺境へ送った男の名。


「偶然だ」


小さく呟き、書類を閉じる。


「辺境で、何かが変わるほどの力はない」


そうでなければ、

あの判断が間違いだったことになる。


ハインリヒは、自分の判断を疑わなかった。


疑う理由が、ないからだ。


その頃、グラーデン領。


アルト・レインハルトは、複数の地図を並べていた。

視界の端には、静かに灯るUI。


【領域支配】

統合率:41%

外部視認:低



「……まだ、見えていないな」


独り言のように呟く。


帝都は、気づいていない。

いや――

気づかないと、決めている。


ラグスが、慎重に声をかけた。


「帝都は……動かないんですか?」


「動くよ」


アルトは、即答した。


「ただし、噂が十分に溜まってからだ」


人は、命令より先に噂を信じる。

特に、それが“安心できる噂”なら。


「問題は、その時だ」


アルトは、地図の一点を指でなぞる。


「帝都が動いた瞬間、

 こちらがどう立つかだ」


その言葉に、ラグスは息を呑んだ。


夜。


帝都では、今日も何事もなく灯りがともる。

辺境の静けさは、まだ“良い知らせ”として処理されていた。


だが、その静けさは――

嵐の前兆だった。


噂は、もう走り始めている。


命令よりも速く。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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