てる子のきらきら雪魔法
【冬の童話2026】参加作品
◎テーマ「きらきら」
大阪に雪が降りました。しっかりとした粒が6歳のてる子の頬に当たります。彼女は初めて見る雪に目をきらきらさせながら、
「雪や〜もっと降れー! こんこ、こんこー!」
と両手いっぱい広げて言いました。言葉のあとに木枯らしが吹きます。
キャッキャと笑う我が子を見た両親は『魔法使いみたいだね』と笑いました。
てる子は、鼻や頬を真っ赤にしながら嬉しそうに笑います。
(私が、魔法使い?)
彼女は、両親がマンションに入ったあともガレージでずっと遊んでいました。
「雪よ〜もっと降れー! こんこ、こんこー!」
てる子の声に反応するように風が鳴き、耳の奥をツーンとさせます。
「さむい」
……と、思ったものの、てる子は両親が言った『魔法使いみたいだね』という言葉が引っ掛かったのでした。
「てる子は、雪の魔法使いかも」
と。
「魔法使いは猫ちゃん連れてる。私は何かこう……違うヤツが欲しい」
てる子は、ガレージの茶色く濁った雪を見て、思いつきました。
「雪だるまにしよ! 名前はユキ助!」
しかし、雪だるまを作るには雪の量がたりませんでした。彼女は何か使えるものがないかと、周囲を見回します。
(そうや! 何か包も!)
思いついたら探します。雪だるまの、かさ増し作戦です。てる子はガレージの車のタイヤの下に丸いキラキラした石を発見しました。
「これにしよー!」
そこら中の雪をかき集めて、ひとつの雪だるまが出来上がります。
「ふ、我は雪の魔女、てる子やぞ。ユキ助。お前を召喚した者じゃ。これからよろしく頼むぞよ」
てる子はそう言って、ガレージのストッパーのところにユキ助を置きました。
しかし木枯らしが、出来たばかりのユキ助に試練を与えます。
「──あ、なに倒れてんのや!」
何度も何度も風で倒れては雪が崩れてしまうのです。てる子があくせくしているうちに、雪は止んできてしまいました。
「あかんー、溶けてまう〜」
てる子は、太陽のもとでは魔法を使えない事を知っています。だから帰ろうと後ろを振り返りました。
「あ」
溶けた雪が彼女の足を掬いました。まるで金魚がポイのうえで滑るようにふわっと全身が浮きます。
(──やば)
転けた。
覚悟した瞬間、てる子は、誰かが、
「主を転かすな、こがらし吹けよ! ヒューッと吹け!」
そう言ったのが聴こえました。猫の身体のようにくるりと回る体。気がつけばてる子は、綺麗に着地が出来ていました。
「???」
てる子は不思議そうに目の前のユキ助を見ました。溶けて剥き出しになった石が太陽に照らされて、きらきら輝いています。
(ユキ助が、守ってくれたんかなぁ)
上階から様子を見守っていた両親が駆け付ける間にユキ助は、すべて溶けてしまいました。
「ありがとうな、ユキ助。また魔法が使える日に召喚したげるね!」
そう言って、てる子は、ユキ助の石を上着のポケットに入れて部屋に戻ります。
てる子の言葉に応えるように、冷たく爽やかな風が彼女の小指を優しくすり抜けていきました。
おしまい
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