いまさら復縁は求めませんがチン切りは求めます
私が欲しいのは、あなたの未来を支えていた“それ”を、きっちり断ち切ることだけです。
そう宣言したとき、元婚約者のアルベルトは理解できていない顔をしていた。まあ当然だろう。彼はいつだって、私が何を考えているかなんて、知ろうともしなかったのだから。
ここは王都の学術塔。魔法と契約と、ついでに人の人生がよく壊れる場所だ。
「待て、リリア。誤解だ。あれはただの政略で――」
「ええ、知っています。だから復縁は求めません」
私は微笑んだ。なろう的に言えば、“ざまぁ前の余裕ある笑み”だ。
――ピロン。
【称号:冷静なる断罪者 を獲得しました】
【スキル:契約可視化(Lv.1)を習得しました】
この世界では、重要な契約は“見える”。婚約、師弟、加護、そして――才能。
アルベルトの背後には、金色の糸がいくつも伸びていた。王家支援、名門派閥、天賦の魔力循環。彼が「天才」と呼ばれる理由のすべて。
「あなたが捨てたのは、私だけじゃありませんよ?」
私は学術塔の中枢に置かれた《契約刃》に手をかけた。
血は出ない。叫びもない。ただ、繋がりだけを切るための儀式用魔具。
「な、何をする気だ!?」
「チン切りです」
真顔で言うと、さすがに彼も青ざめた。
もちろん、下品な意味じゃない。
“チン”とはこの世界の古語で“柱”。
“切り”は断絶。
つまり――あなたを支えていた柱を切るという意味だ。
刃が光り、金色の糸が音もなく落ちる。
【王家支援:解除】
【名門派閥の庇護:失効】
【天賦の魔力循環:弱体化】
「……あ、ああ……」
膝から崩れ落ちるアルベルトを、私はもう見ていなかった。
「安心してください。命も尊厳も奪いません」
「ただ――あなたが私を見下せなくなるだけです」
復縁は求めない。
愛も情も、もう必要ない。
私が求めるのは、因果応報という名の静かな断罪。
そして私は、次の人生へと歩き出す。
【主人公リリアは自由を手に入れました】
【次章:辺境でスローライフ(※元婚約者視点あり)】




