表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

魅了持ち聖女は幽閉されて幸せです

作者: 満原こもじ

 わたくしメローペは聖女でございます。

 えっ? 聖女とは何かでございますか?

 国際聖女学会で認定されると聖女みたいですよ?

 民に恩恵のある加護と大きな魔力を併せ持っている女性ならば資格があるようです。

 ちなみに現在聖女は世界にわたくししかいないんですって。


 わたくしの持つ加護ですか?

 いるだけで国民全体に幸運が及ぶというものです。

 すごいですよね。

 わたくしも自分では効果がわからないものですから、教えてもらった時ビックリしました。


 一般に聖女は国に雇われます。

 そして持っている加護を生かした仕事を割り振られるものなのです。

 ただわたくしの加護の場合はいるだけで効果を発揮しますので、特にやることがないのですね。

 だから大きな魔力の方を生かし、医療院で癒し手をしておりました。


 毎日くたくたになるまで働きました。

 高い給料をもらっているんだからキリキリ働けと言われます。

 ……でもいただいた給金を供出した魔力量で割れば、わたくしがダントツで安く働いてたのですけれどもね。

 しかもわたくしのお金は国に管理されていて手元にはありませんし。

 こういうことを考えるから、聖女らしくないと言われるのでしょうけれども。


 毎日お腹がペコペコでした。

 だってバカみたいに魔力を使ってるんですよ?

 お腹がすくのは当たり前ではないですか。

 タダで魔力が湧いてくるわけではないのですから。

 わたくしに癒し手を命じていた偉い人達は、聖女だと何もしなくても魔力が満タンになるとでも思ってたんでしょう。


 わたくしはガリガリに痩せていて、しかし他の癒し手と同じだけの食べ物しか与えられていませんでした。

 いつも食べ物を欲しがっていたわたくしは、強欲な聖女と呼ばれました。

 強欲なんじゃなくて、働いた分の御飯が欲しかっただけなんです。


 もうダメだ、身体が持たないと思った時に奇跡が起きました。

 新たな加護が発現したのです。

 神様、ありがとうございます!

 その結果わたくしは、天国みたいな場所に移されることになったのです。


          ◇


 ――――――――――サハトゥリ王国第一王子アリスター視点。


 強欲の聖女メローペ、か。

 瘦せっぽちで目だけギョロギョロさせていて、いつも食べ物を乞うている卑しい女。

 何故あんな女が私の婚約者だったか?

 それはひとえにやつが世界唯一の聖女だったからに他ならない。


 実際にどれほどの効果があるかはわからないが、メローペの幸運をもたらす加護だけは一応本物だと認めようじゃないか。

 聖女学会の下した結論であるし。

 しかしあの意地汚さと性悪が帳消しになるものか。

 身なりに気を使いもしない醜い女が、聖女だからって私の婚約者にのほほんと収まっていたことは大いに不満だった。


 そんな時、性悪聖女メローペに発現したのだ。

 いかにも性悪女らしい加護、他人を魅了する力が。


 加護とは神が人に与える力で、数千人に一人の割合で発現するとされている。

 しかし聖女が務まるほどの恩恵を人々に与える加護なんて、それこそ歴史書に太字で載るレベルの希少さだ。

 また加護を複数持つケースがないではないが、聖女が加護を二つ持ったなんてのは聞いたことがない。

 しかも怪しげな魅了系の加護だなんて。


 魅了系加護は人心を惑わす。

 古の大帝国が一人の魅了系加護の持ち主の女によって滅びた例さえある。

 我が国サハトゥリでは、魅了系加護の持ち主を発見したら処刑することになっている。


 嬉しかった。

 あの欠片も聖女らしくない女は処刑され、私の婚約者でなくなる!

 しかしそう簡単に事は運ばなかった。

 何故ならメローペは世界唯一の聖女だったから。


 例外を認めず処刑すべき、という意見も当然出た。

 しかしメローペは罪人ではない。

 魅了系加護の持ち主を処刑するというのは、我がサハトゥリ王国に限った不文律に過ぎないのだ。

 罪なき聖女を処刑するというのはいかにも外聞が悪かった。


 またメローペの持つ、国民全体に幸運が及ぶ加護もまたバカにならないのではないかと思われた。

 どれほどの効果を発揮しているか不明とは言え、失うには惜しい。

 結局性悪聖女メローペと私との婚約は破棄され、メローペは幽閉されることになった。

 幽閉されていようが、国内にいさえすればあの性悪聖女の加護は有効のはずだから。


 ……私との婚約が破棄されるなら何でもよい。

 そう考えていた。


          ◇


 ――――――――――聖女メローペ視点。


 天国です! 天国です!

 わたくしは現在、貴人牢という名の天国にいます。

 貴人牢とは、偉い人専用の監獄だそうで、設備が充実しているんですね。


 何が天国って、すごくおいしい御飯を食べさせてもらえるんです!

 とても奇麗なお部屋ですし、お布団もふかふかでよく寝られるのです。

 いえ、よく寝られるのは前もそうだったんですけど、魔力が枯渇しかかって死んだように眠るのとは充足感が違うと思うんですよね。

 ああ、生きてるって素晴らしい!


 看守さんと仲良くなったので、外の事情も教えてもらうことができます。

 そもそもわたくしは罪人ではないので、話してはいけないということはないそうで。


 何でも癒し手達がてんてこ舞いだそうです。

 ああ、きっとわたくしがいた頃に、かすり傷でも医療院で治してもらう習慣が、市民の間でできてしまったんだと思います。


 申し訳ないですけれども、わたくしのせいではないですよ?

 第一王子殿下の婚約者だったわたくしを働かせることで、王家の人気を増そうとするキャンペーンがあったからです。

 小さいケガでも癒し手が治すことが常態化してしまっています。

 そしてそのケガ人の九割はわたくしが治していましたから。

 天国に引きこもっていて働かないわたくしをお許しください。


 看守さんによると、わたくしのいるこの貴人牢は、魔法の通用しない壁や鉄格子になっているそうで。

 だからわたくしの魅了の力も看守さんには効かない、という説明を受けました。


 もっともわたくしの魅了の加護はごく弱いものでありまして、わたくしの好きになった殿方一人の心を奪うというもの。

 同時に多数の人を魅了することができないのです。

 わたくしにとっては、必ず両想いになれる素敵な加護なんですけれどもね。


 ……あれ? この貴人牢は、魅了の加護の通らない壁や鉄格子なんですよね?

 じゃあわたくしの国民全体に幸運が及ぶ加護も効果がないのでは?

 ま、まあわたくしが考えることではないですね。

 今はこの幸せを享受しましょう。


          ◇


 ――――――――――サハトゥリ王国第一王子アリスター視点。


 どうもうまくいかない。

 気に食わない強欲で性悪な聖女を視界から消したというのに。

 メローペに対する措置がひどすぎるのではないかという声が上がり、弟の第二王子デーヴィッドを推す勢力が急に大きくなってきた。

 くそっ、あんな惨めな女が婚約者であったことが、私の地位確立に貢献していたとは!

 信じられない、信じたくない。


 市民からは医療院の癒し手サービスが悪くなったと文句を言われる。

 聖女を戻せとハッキリ言われることもあると聞く。

 メローペのやつ、仕事だけはしていたんだな。

 

 医療院からも悲鳴が上がっている。

 癒し手を三倍に増やしてくれと。

 そんな予算があるわけないだろう!

 大体三倍も癒し手がいないわ!


 しかも聖女幽閉が他国に知られ、我がサハトゥリ王国が白い目で見られつつあるのだ。

 仕方ないだろう、魅了の加護の持ち主だぞ?

 放置しておくわけにいくまいが!


 まあいい。

 もうじき隣国マグニコフトから友好使節が来る。

 外交を成功させ、失点を回復してくれる。


          ◇


 ――――――――――聖女メローペ視点。


 うわわわわ、やってしまいました。

 貴人牢の壁を壊してしまいました。

 おいしい御飯を毎日食べてるのに魔力を使ってないものですから、ナチュラルに身体強化魔法が発動しているのに気付きませんでした。

 この壁、魔法は効かないのに物理には弱いんですね。


 あっ、看守さんの目が点になっています。

 ごめんなさいごめんなさい!

 寄っかかったら壁が抜けてしまったんです。

 こんなふうに……あっ、鉄格子が曲がってしまいました!

 ごめんなさいごめんなさい!


 えっ? 今までの生活を見てれば、わたくしに悪意のないことはわかる?

 ありがとうございます、信用されると嬉しいです。

 脱獄するなら看守さんを連れていってくれ?

 いえ、脱獄する気なんかありませんけれども。

 わたくし、おいしい御飯を食べられる生活が気に入っていますし。

 

 外ですか?

 言われてみると久しぶりに出てみたい気がしますね。

 看守さんが一緒ならギリギリ監視下の散歩で通用する?

 そういうものなのですか。

 ではせっかくですからお願いいたしましょう。


 わあ、風が心地良いです。

 忘れかけてた感覚ですね。

 え? 以前看守さんが大ケガした時、わたくしが癒したことがある?

 ごめんなさい、忙し過ぎて覚えてはいないですけれども。

 よかったですねえ。


 え? わたくしが奇麗になった?

 入牢した時はガリガリだったけどふっくらして血色もよくなって?

 そうですねえ、本当に健康的な生活です。

 今の待遇に本当に感謝しているんですよ。

 

 いえ、わたくしは本当に逃げる気はないんです。

 御飯おいしいですし。

 えっ? 逃げた方がいい?

 何故ですかね?


 今サハトゥリの国情が悪くなってる?

 わたくしの待望論も出てる?

 王家に警戒されて、どんなトラブルに巻き込まれるかわからない?

 こ、怖いですね。


 あ、向こうからどなたかいらっしゃいましたね。

 あっ、すごく御立派な方!

 剣呑な目でわたくしを見る、どこぞの第一王子とは大違い!

 これが一目惚れなのですね。

 向こう様もうっとりしてわたくしを見ています。

 魅了がかかったみたいです。


 わたくしは聖女のメローペと申します。

 あなた様は隣国マグニコフトの王子オーウェン様ですか。

 わたくしが幽閉されていることを御存じでいらっしゃるのですか?

 ええ、あなたとならばどこまでも。

 看守さんも面白そうだから従者としてついて来るって?

 いいんですかね。


 ――――――――――


 マグニコフトへの旅路で追手がかかりました。

 や、やっぱり牢に閉じ込められている者が逃げるのは、よろしくないのですかね?

 わたくしは罪人ではないし、隣国に行くなら国外追放と同じなのではという理屈は通用しないようです。

 マグニコフトには魅了系加護に関する規定はないようですけれども。


 逃げきれそうにない。

 不甲斐ないオーウェン様を許してくれ?

 何を仰るのですか。

 わたくしにお任せください。


 張り切って行きますよお!

 追っ手に爆裂魔法をドカーン!

 あっ、オーウェン様。

 爆風がすごかったですか?

 申し訳ありません。

 追っ手を一発で殲滅するには必要なことだったものですから。


 オーウェン様どうされたのです?

 こんな威力の魔法は見たことがない?

 そういえばわたくしも初めて使いましたね。

 でも聖女の魔力はこんなものですよ。


 ついでに念のため、王宮にも爆裂魔法を撃ち込んでおきましょうね。

 そーれっと。

 大丈夫ですよ。

 王宮は粉微塵になりますけど、外部にはあまり被害が出ないように威力をセーブしてありますから。


 えっ、サハトゥリ王国に未練ですか?

 特にないですね。

 牢に入っていた時が一番幸せでした。

 あっ、オーウェン様どうされたのですか?

 涙なんか流して。

 一生わたくしを幸せにしてくださるのですか?

 嬉しいですわあ。


          ◇


 ――――――――――後日談。


 聖女メローペを冷遇したサハトゥリ王国は、それに相応しい報いを受けることになった。

 騎士団の主力と王族全員を爆裂魔法により失い、また聖女メローペも去った。

 王と王位継承権保持者が一人もいなくなったサハトゥリ王国は、混乱の極みにあった。

 サハトゥリ騎士団に追われたマグニコフトの王子オーウェンが逆襲、サハトゥリ貴族を次々と傘下に収め、まとめ上げていく。


 降伏したサハトゥリ貴族は皆、聖女メローペの価値を知っていた。

 あるいは聖女メローペを味方にしたマグニコフトに楯突くことを恐れた。

 マグニコフトはサハトゥリを征服したが、誰からも文句は出なかった。

 何故ならマグニコフトの聖女となったメローペの加護は、旧サハトゥリを含めた新マグニコフト全域に及んだから。

 幸せの時代が訪れた。


 聖女メローペは新王オーウェンの妃となる。

 いるだけでいいと言われた王妃はしかし、とても満足していた。


「オーウェン様、わたくしマグニコフトで幸せです」

「俺の聖女だからだ」


 居場所を見つけ、オーウェン王に愛された聖女メローペは、幸運を皆に分け与えたのだった。

「聖女様、オレはマジでラッキーでしたよ」

「オーウェン様、彼はわたくしの看守で、とてもよくしてくださったんですよ」

「うむ、そうか。メローペへの忠誠天晴れである。帯剣侍従に取りたてよう」

「ありがたき幸せ!」


 最後までお読みいただきありがとうございました。

 どう思われたか、下の★~★★★★★で評価してもらえると勉強になります。

 よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらもよろしくお願いします。
―◇―◇―◇―◇―◇―
にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!
―◇―◇―◇―◇―◇―
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ