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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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87プレイ目 アンセム

「わたしはただ、領主様の館なら使ってない武器がたくさんあって、その中からカタナを選ばせてもらえるのかなとか、なかったらヤマト国からお取り寄せしてもらえるのかなって」

「私もその程度でいいのではないか、と提案させていただきましたよ」


 (もみじ)はアンセムの領主館の応接室で、秘書官相手に愚痴っていた。

 秘書官も渋い表情である。


「ついでに断られて終わりだろうから、代わりを用意しておこうかと」

「なんかうちの召喚獣が気に入られたらしくて…そう、欲にまみれた商人のあとに会ったから人間みたいに金にこだわらないところが良い、的な!」

「最近かの御方を尋ねるのは、そんな輩ばかりでしたね、確かに…」


 おかげで本当に『神の匠』の作品をもらってしまったのだ。

 領主にお礼を申し上げるという(てい)で、作品を実際に見てもらいに来たのである。


 きっと領主様だって『神の匠』の新作なら見たいだろうし。


 秘書官と話して待っているうちに、領主がウキウキした足取りでやって来た。

 ちょっとぽっちゃり気味だが、どこぞのボンボンと違って仕事の出来る領主様である。秘書官情報。


「ほう、これがかの御方の新作か。性能は抑えているが、見た目は全く抑える気がないと見える」

「デスヨネー」


 玄幽に合わせて性能は低いが、見た目は芸術作品のごときひと振りだ。鞘から抜いただけで惹き付けられる輝きを放っている。

 武家屋敷とかで厳かに飾られているのが似合う。


 たいした目利きじゃなくても気付くだろう。

 隠すの無理、と椛は崩れ落ちかけたものだ。


 椛なら使うのをためらうが、玄幽は何一つ気にせずに振り回すだろう。

 開き直るしかなかった。


「ありがたく使わせていただきます」

「それが良いな。こんなに美しいものを産み出しておいて、使わずに飾る人間ばかりが欲しがるから売りたがらなくなったんだよ」

「レベル99の大剣豪でもなければ使えないッスよ、こんなすごいの」

「ですよね」


 あとは何も感じないアホとか自惚れたアホくらいしか使えないだろう。

 刃こぼれひとつだって付けたくないのに。


 椛はお値段についても聞きたかったが、ぐっと堪えて我慢した。

 知りたい、でも怖い。

 領主が気にしていないので、そこには触れずに終えたのだった。






 スニークミッションにハマっていたクランのメンバーが「新ルートを開発したぜ」と次のゴールのマップ情報をくれた。


 椛は何気なく聞いてみた。


「ゴールに何があるの?」

「古い石碑だな。何が書かれているかは辿り着いてのお楽しみ」

組合(ギルド)に報告したの?」


 言わなきゃ駄目え?という顔をしていたが、ちょうど冒険者組合で会っていたのだ。

 ほら早く、と受付嬢のところへ追いやった。


 少し話すと受付嬢が立ち上がって2階へ行き、資料室の職員を連れて戻って来た。


 居心地悪そうにしていたクラメンは、職員に何やら言われてがっかりしていた。


 気になったので近づいて尋ねてみた。


「なんだったの?」

「場所が分からなくなってた記念碑だって言って、案内を依頼された…」

「案内くらいしてやれよ」

「ルートがバレる」

「クラメンにはバレないよ、同行しなきゃ」


 それもそうか!と元気になったところでもう1つ聞く。


「貢献度は?」

「…倍増する勢いで増えた!」


 やっぱりな、と椛は納得した。

 こういう『わざと』失伝していたようなものも、発見者に貢献度をくれるのだ。

 でも見つけようと思って見つかるものでもないだろうし、情報を公開したところで探す酔狂な者は少ないだろう。


 見つからない!と喚きそうだから、黙っていてもいいと思う。


「どう思う?」

「面倒だから気付かなかったことにしようぜ」

「だよね」


 クラン内では周知してもいいし、頼闇(らいあん)あたりが検証クランにこっそり伝えるならそれもいいと思う。


「また高レベルの冒険者チームが呼ばれるのかな」

「あ、『絶賛邁進』みたいなチームか」


 闘技場の有名チームだったら良いなとか、フレンド登録してもらえるかなと話す。

 そんなご褒美付きならやる気が出るというものだ。


 でもバレると面倒なので、周囲にプレイヤーがいないことは確認してある。今日は組合内にいなかったから、たぶん大丈夫だろう。






「新しい武器を初めて使うなら、この相手だよね」

「ガア!」

「あんっ」


 玄幽の芸術作品みたいなカタナの初陣は、森の主どん戦にした。

 せめてボス戦にしておきたかっただけである。


 椛は月牙(げつが)と後方腕組み師匠ポジだが、流星(りゅうせい)星影(ほしかげ)も参戦させる。


 魔法はナシだ。主どんは魔法に弱いので。


 流星はだいぶレベルが上がっているが、まだ主どんと良くて互角のスピードなので訓練になる。

 玄幽の攻撃はきっとあんまり当たらないが、ボーナスタイムにガツンとかませるだろう。


 星影はレベルが低いが、主どん相手に奇襲の練習だ。星影の奇襲を避けたのは今のところ主どんだけなので、こちらも気合いが入っている。


速度(AGI)が上がっても数値ほど上昇した感じがしないのは確かだけど、それでも回避してのける主どんはやはり強い…」

「うおん」


 大剣士のタグが「レベル上がったからもう負けないけど、ルルイエの高速ボス並みに攻撃が当たらないんだよ、いまだに」とぼやいていたものだ。

 他のプレイヤーたちにも敬遠されがちらしい。


 まあ「もふもふー!」「もふもふー!」と言いながら一時期毎日挑戦していたモフラーがいたらしいが、目的の主どんのしっぽを手に入れて旅立ったそうだ。

 ちょっと会ってみたかった。


 話している間に3体が勝って終わったが、3体とも「今日も勝った気がしない」という様子である。

 ボーナスタイムがあるから勝てているだけなのだ。


「また相手してもらおうね。玄幽は新しい武器はどうだった?ダメージが跳ね上がってたけど」

「ガウ!」


 カタナの話に変えると、玄幽も興奮して何か訴えていた。それも良かったけどそれだけじゃないんだ!というように振り回している。


 そんな玄幽を星影がちょっと羨ましげに見ているのは、忍者刀でも思い描いているからなのか。


 流星は「ボクも強いツメが欲しいなあ」という感じである。装備できないので自前で頑張ってほしい。


 しかし武器防具とは言わないが、玄幽の狼耳と尻尾のように見た目だけの装備くらいは着けられるようになったらいいなと思う。

 流星ならスカーフくらいしか思いつかないが、ミルクの服ならドレスやワンピースを無限に用意したくなりそうだ。


 星影に忍者の衣装は──似合いそうだけど本当にそれでいいのだろうかという気持ちも消えない椛だった。






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