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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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85プレイ目 アンセム

 道中に立ち寄ったカレルとドゥナンでも特殊クエストの確認をした(もみじ)は、簡単なものと報酬が良かったものだけはクリアして来た。


 ついでに思い出したので、ドゥナンの植林場でアイテムポーチの肥やしになっていた木の苗を売却して来た。

 果樹を見つけると思い出して近くの木も少しは伐採していたため、偏りはあるがそこそこ貯まっていたのだ。


 上手く植林して育てられるようなら、ドゥナンの街で扱う木工製品も増えるだろうと木こりや管理人が喜んでいたものだ。


 それを見て果樹園の件を連想し、これは運営の規定路線なのでは?と気付いてしまった。

 植林場やレンタル畑で世界中から集めたものを育てて、カナーラント王国内で入手できる物を増やして行く。

 移住者の街にも入荷されやすいだろうし、生産職が活動しやすくなるだろう。


 でも興味の薄い戦闘職メインのプレイヤーの行動にかかっているあたり、そのうち気付いて進むだろうくらいの設定なのかもしれない。


 [と、イベントでもらえた貢献度がカスに思えるくらいたくさん貢献度が増えたので思いました]


 [なるほど、移住者の街の発展に貢献してるからだね。正しく貢献度だ]


 気付いた事は検証クランにチャットで伝えて、あとは丸投げしておいた。

 シラベがわくわくした様子だったから、きっと面倒と思うより楽しいと感じて調べるだろう。


 でも先着順でそのうち売り切れそうな貢献度の入手経路のため、公開には気をつけてとしか言えない。


 苗を持ち込めば買ってくれるだろうが、すでに購入済みなら貢献度が少ないかもらえない可能性が高いからだ。

 検証作業中にガンガン減るのは当然の展開である。


 椛よりマメに伐採しているプレイヤーも、伐採スキルを獲得した時に言われたことを覚えていて試した者もいたようだが、話題にはなっていなかった。

 貢献度とつなげて考えなかったか、秘匿しているのだろう。


 椛とは攻略しているフィールドが違ったから、椛が初売却になった苗があっただけだと思われる。


 そんなことを考えてアンセムの街に戻った椛は、まずレンタル畑の収穫がどのくらい届いてるかなと商業組合(ギルド)に向かったのだった。






 現実(リアル)で3週間以上留守にしていたので、商業組合のお預かりサービスのボックス内には思った以上の果物が届いていた。


「なんとなくノリで雷鳴ベリーも1本だけ育ててもらってるけど、いらなかったかも」


 たまーに食べたい気分になるものの、消費量などたいした事はないのでまだ余っているくらいだ。

 玄幽(げんゆう)も1回食べたら二度と食べようとしなくなったし。好感度上げのために連れている玄幽は、雷鳴ベリーと聞いて痛そうな顔になっていた。


「今は噂を聞いていたけど実物は見たこともなかったというお客様が試しにお買い求めになられていらっしゃるので、すぐに売り切れるそうですよ」

「全住民に行き渡ったら売れなくなるやつ」


 ですから買い取りしてますよ、と商業組合の美人受付嬢が申し出て来た。こちらの受付嬢はゴージャス系の美女が多い気がするが、美女でも儲け話になるとアレなことで有名だ。


 椛はそのうち不良在庫になっちゃうかなと思いつつ、雷鳴ベリーは売却しておいた。


「あ、果実酒がおいしいって誰かが言ってたな。誰だっけ」

「お菓子の開発も進めているそうですよ。アルヴィーナ王国のお菓子も参考にさせてもらいながら」

「王都で売ってたかな…」


 けっこう滞在してスイーツ探しもしていたつもりだが、椛の記憶には雷鳴ベリーを使った菓子などない。

 名前を見てスルーした気もする。


「果汁にしてから生クリームに混ぜると刺激がほどよく抑えられて、変わった食感になるそうです。子供たちには好評だそうですよ」

「ああ、子供は喜びそう」


 あくまで味ではなく食感を楽しむものなのだろう。味だけならラズベリーに似ていた。


「でもジャムにしたら煮詰まって、すごいことになるそうですね」

「すごいのかー…」

「ガウ…」


 それは知らないままでいたい物に違いない。






 想像だけで口の中が痛くなった気がするまま、椛と玄幽は商業組合の向かいの冒険者組合に移動した。虫歯が痛い人みたいな顔になっていたかもしれない。


 こちらは華やかながらも清楚とか清潔感のある可愛さも感じる美人受付嬢が多い。目を金貨のようにギラつかせたりしないタイプだ。きっと。


 冒険者カードの照合をしてもらいながら、椛は忘れないうちに特殊クエストを確認した。

 街ごとに確認しながら移動して来たので、さすがにまだ覚えていたのである。

 未来の自分がいつまで覚えているかは定かではないが。


「あ、初めて特殊クエストのことを聞いてあとで受けようって思ったまま忘れてたクエストがまだ残ってる気がする…」

「気のせいではないと思いますよ」

「デスヨネー」


 依頼人が冒険者組合になっているチュートリアル扱いのクエストなのだ。クリアするまで消えないだろう。

 だが増えたクエストもある。


「幻の枇杷(びわ)を領主館に届けよう…」

「本来はレベル90を越えた冒険者に出されるクエストでしたが、街で買えるようになって来ていますからね。それでもまだ入手困難ですので、もうしばらくの間は受け付けてますよ」


 つまり期間限定になって、消滅が決まったクエストということだ。

 報酬もレベルダウンしたようだが、それでもまだ椛にはおいしい内容だった。


「望む武器をもらえる!カタナあるかな!」

「双剣ではないのですか?」

「カッコいいと後先考えずにこいつにカタナを持たせたせいで、ですね…」

「ガウ!?ガア!」


 玄幽が「どういう意味だ!?」と怒っているが、初心者用以外は練習用なのか木刀くらいしか買えないのがカタナである。


 受付嬢も事情を悟ったようで、ヤマト国に行かないと基本的に買えませんねと納得していた。


「こちらのクエストをお受けになられますか?」

「受けます!さっき商業組合に届いていたのを引き取ったばかりだから足りる!」


 玄幽のおやつが減るが、玄幽の武器になる予定なので構うまい。

 そうじゃなかったら、椛だって自分の双剣が欲しかった。


 ついでに他の特殊クエストをいくつか受けてから、椛はさっそく西回りで領主館に向かうことにした。

 西回りだと途中で衛兵隊の訓練所に寄って、教官に指導をしてもらう予約が入れられるからだ。


 玄幽はまだ不満そうにしていたが、きっといい武器がもらえるはずだからと適当な串焼きを出して渡して宥めた。


 カタナは対象外とは言われないだろう。たぶん。






「カタナ、ですか…」


 領主館の門番にクエストを受けたことを伝えると、しばらくして領主の秘書官を名乗る壮年の男が出て来た。

 果物のお届けでしかないのに、中に招かれた。領主館にはさすがに玄幽は連れて来れないので送還済みである。


 本来は『絶賛邁進』のような冒険者たちが受けるクエストだからだろうなあ、と大人しく応接室まで付いて来た。


 だが枇杷を渡して希望を伝えると、秘書官は渋い顔で椛の腹を探るような目を向けて来た。


 探られて困ることなどないつもりだが、一応受付嬢に話した事情をここでも説明した。


「もしかして、かの御方をご存じないんですか?」

「え?領主様のことですか?ああ、名前も聞いてなかったな…」

「アンセムで1番有名な方です」

「それなら聖女様ですね!聖女ルイーズ様」

「…ええ、はい。1番は言い過ぎました」


 他にも誰か有名人がいるらしい。

 椛が知っているのは最強執事くらいである。


 首をかしげていると、秘書官は相談して来ると席を立った。代わりににこやかな中年のメイドが「おかわりはいかがですか」とお茶とお菓子を追加で持って来てくれた。


「さっきから思ってたけど、はちみつの香りがする…」

「そちらはアルヴィーナ王国のスヴィーという小さな町の近くの蜂型の魔物のドロップ品ですよ。東の大陸ではちみつが手に入るのはそこだけと聞きますねえ」

「無限回収しに行きたくなるう」


 聞けば騎獣平原の近くの町だった。

 領主の好物なのでわざわざ取り寄せているそうだ。


「でも本当は西の大陸の花蜜のほうがお好きなんですよ。ただ滅多に手に入らない物ですし、お値段も桁が違いますから」

「いつか探しに行きたい」


 その前にアルヴィーナ王国に戻ってはちみつを回収するかどうかも悩ましい。知っていたらイベント中に一緒に回収できただろうに。


 そんな話をしていると、秘書官が戻って来た。渋かった顔がさらに渋々になっている気がする。


 カタナってそんなに入手困難だったのかな、と玄幽に片手剣を持たせる方向で考えを変え始めてしまう。


「代金は領主様がお支払いになられるそうなので、こちらへ直接お伺いになって下さい」

「え?あ、ハイ」


 マップ情報を渡されたが、店ではなく工房でもあるようだ。場所が工房区のほうなので。


 カタナが作れる鍛冶師がいるなら頼闇(らいあん)にも教えてあげようと思った椛は、秘書官の渋々の顔の意味を全く考えていなかったのだった。






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