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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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66プレイ目 ブロム

「冒険者組合(ギルド)すら怖くて入れない…」


 椛(もみじ)の愚痴に錬金術で造った魔導具を扱う店の店員が同情してくれた。

 ここはブローゼスト王国の王都ブロムの商店街にある店だ。


「アレ、数年前まではロイド様相手にやってたんだよ。結婚しちゃったから次の生贄…じゃなくて標的…でもなくて、うん、ジーク様に同じことしてるんだ」

「前身があったー!群れて悪化したまま放置するからー!」

「ホントそれ」


 誰かが注意して止めていれば、きっとこんなことにはなっていなかったのだろう。

 文句が出ない、つまりやっても良いと解釈してしまったのだ。


 全然よくねえよ!と椛は思う。


 宰相からの依頼を受けた日、街に戻ったらすでにネタが割れて広まっていた。ジークのファンたちに。

 どうにか宿に逃げこんでログアウトしたが、街もまともに歩けなくなっていたのである。


 日を改めてログインしたが、仕方がないのでカリータ島で新たに手に入れた髪型とメイクに変え、この王都でも目立たないワンピースを着用して誤魔化しているところだ。


 化ける系のアバターで良かったと心から思った。しかしバレるのも時間の問題だろう。


 愚痴をこぼしながらカメラを買う。思ったより手頃な値段だったが、写真を現像するにはお店で頼まなくてはならない。

 そこまでリアリティを求めなくてもと思うが、スクショでは足りない人向けのオプションみたいなものなのだ。こういう設定が好きな者もいるだろう。


 セットするのはフィルムではなく魔石だが、以前アンセムの街で大量に入手したのでいくらでも使える。足りなくなったら補充もしやすいし。


「あ、この王都が舞台の話もあった気が」

「ブロムが舞台の話?本か何かかい?」

「そうそう、港のほうの話だったはず」


 もちろんトンデモ本の話だが、店員は別の話を思い出したようだ。


「そんな恋愛小説があったなあ。ヒロインが健気で可愛かったよ」

「あの連中に聞かせてやりたい…」


 この王都ブロムは恋愛ネタが多いのだろうか。

 椛は苦手分野なのでうんざりしたのだった。






 せっかく思い出したのだから忘れないうちに、いや連中にバレる前に現場を確認しておこうと椛は港にやって来た。


 王都ブロムは半島になっている細長い領土の南端に位置する港街である。もちろん港は南にあって、南海の島々や他国の港、さらに西の大陸との海上貿易の要になっていた。


 現在は西の海に異変が起きているとかで船は出ていないが、きっと何かイベントをクリアしたら解禁されるのだろう。


 そんな大きな港は交易品を扱う店が並ぶ市場もある。漁港でもあるため魚市場も併設されていて、商店街に迫る広さがあった。


「えーと、市場のはずれの喧騒が届かなくなるあたり、と」


 本の描写を頼りに東側へ向かったら、地元の住民たちの憩いの場である小さな広場に着いた。このあたりに空き家があって、子供たちがアジトにしているはずだ。


 とはいえ空き家かどうか確かめる手段が思いつかない。

 椛が考えこんでいたら、街の巡回をしている衛兵たちに声をかけられた。


「どうしたんだい。困りごとかな」

「最大の困りごとはジーク様ファンたちの暴走だけど…この本に載ってる空き家が実在するのか確かめに来た」


 衛兵たちにも「アレかあ」という反応をされたが、本を見せて聞いてみたらすぐに教えてくれた。

 そこも見回る対象だからこれから行くというので、ありがたく便乗した。


「それにしても、その作者はこのあたりに詳しい住民なのか?よく空き家のことを知ってたな」

「まあ10年くらい空き家のままだからな、あそこ。前の住民が失踪してそれきりって話だよ」

「その話もここに載ってるよ」


 謎の失踪も定番の設定である。

 空き家で遊ぶ子供たちがある日、見つけてしまうのだ。隠されていた謎の欠片を。


 というくだりを読みつつ歩いて行くと、子供たちの騒がしい声が聞こえて来た。


「おい、どうした?怪我でもしたのか?」

「な、なんでもなーい」

「怪しい物を見つけたりしてないからな!」

「ふふふ、見たこともない、鑑定もできない古い鱗じゃないかな、それは」

「な、なんで知って!?」

「しー!しー!」


 椛の本を覗き込みながら、衛兵たちも「え?」と困惑している。そっくりそのまま書いてあるからだ。


「この古本屋で10R(リグ)で投げ売りしていた預言書に全て記されているのだよ!」

「うさんくせー」

「でも本当に書いてあるぞ」

「えーと、それでどうなるんだ?」

「あ」


 衛兵の1人がヒョイッと本を取り上げて、話のオチを先に見てしまった。


「鱗に水をかけたら増えるらしい」

「えー、ウソだー」

「増えた!」

「あ、何やってんだよ!」

「でも増えた!」


 子供たちはきゃいきゃい言いながら生活魔法で水を出して、鱗を増やしてしまう。


「鱗を増やしすぎると怪物が復活しちゃう所も見て!」

「おお、すまん。おまえたち、怪物が復活するから止めろ」

「倒し方は?」

「塩をまく」


 塩はお清めに使うので、これも定番の解決策だろう。


「そいつ、塩に弱いんだ、海から来たはずなのに…」

「海水は平気なのか…?」

「えーと、塩なら持ってるな」


 などとぐだぐだしていたら、話を聞かずに鱗を増やしまくった子供たちが、ようやく悲鳴を上げて逃げ出した。


 鱗が蠢いて、見るからにヤバい。

 しかし衛兵さんは情緒より最速の安全確保を優先して、怪物が復活する前に塩をぶちまけてしまった。


 怪物はしゅうぅと音をたてて、ナメクジみたいに縮んでしまった。

 あとに残ったのは鱗と同じ色の石だけだった。


「おお、本当に効いた」

「それで結局なんだったんだ?」

「海より来たりし怪物…」


 というタイトルだが、こまけえコトはいいんだよとばかりに説明などないまま終わっている。


「あと、その石をキレイな水で洗うと失踪してた人が復活するって」

「「なんでだ」」


 衛兵たちがトンチキ展開にハモって抗議した。

 それでも本を見ながら石を洗い、10年近く封印されていた人が復活すると、常識など捨てて復活を喜んでいたものだ。


 椛はバトルがあるはずだったのにと遠い目をしつつ、クエストリストを確認した。


『おめでとうございます!被害皆無のパーフェクトなエンディング!』


 と書いてあったが、次は物語を再現してねとバッドエンドだった。

 被害皆無のパーフェクトとは。


 どのあたりからインスタンスエリアに移動していたのか不明だが、今のは『もしも』の世界という扱いで、実際には失踪した住民は復活していない。

 衛兵や子供たちも、今のイベントは知らない状態になっている。


 他のプレイヤーも体験可能にして、あくまで物語の追体験をしているだけということだろう。


 たぶんオペラ座の怪人リスペクトのイベントもこんな感じだったのだろう。あの時は写真集に群がるファンのせいで切り替わった瞬間を認識するヒマがなかっただけで。


「ここが空き家だよ」


 衛兵にそう言われて、もう一度やる気がしなかった椛は無難に聖地巡礼中のオタクのような反応をしてみせた。

 子供たちは鱗を見つけたようだが、プレイヤーが関わらない限りイベントは進行しないだろう。たぶん。


 バッドエンドだったが、報酬は良かった。被害皆無のパーフェクトだったからかもしれない。

 失踪した住民が封じられている石にそっくりな宝石だった。

 そっくりなだけで失踪した住民は出て来ないはずだ。きっと。


「怪人の時もそうだけど、速攻でクリアして被害が出ないと報酬が豪華になるのかな。でもミュータント生物・カエルの時みたいな栞は貰えない、と」


 栞は物語を再現した時のクリア報酬なのだろう。見直してみたら、あちらはグッドエンドだった。


 こういうの検証するのが検証クランのはずだが、うかつに伝えると「どんだけパターンがあるんだよー!」「こんなん終わる訳あるかー!」とブチ切れるかもしれない。

 逆に喜ぶかもしれないが。


 椛はそっと頼闇(らいあん)にメールで顛末を伝えて、よきにはからっておいて、と丸投げした。


 もちろん後日、頼闇に怒られた。






たすけて頼闇と書こうとしたものの、ジャイ○ンに似てるなと気付くなど

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― 新着の感想 ―
>数年前まではロイド様相手にやってたんだよ。 その内、腐海が広がって天井やら壁を四つん這いで這い寄ってき口から煙吹き上がらせながら粘着質な視線向けてきそうね 目を赤くビコンッ!と光らせながら…
どういう原理の鱗?石?なんだろうか〈水で増えたり塩で縮んだり
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