63プレイ目 ルルイエ
フレッド団長の愚痴は長くてウザかったが、有用な情報もあった。
椛が話の方向性を変えられないかと「そろそろランクAに昇格したい」といったネタを振ったら教えてくれたのだ。
今、闘技場にいたフレンドたちに伝えているところである。
「もう攻略組がランクAになって掲示板でも話題になっているだろうけど、ランクA以上のダンジョンには危険度という概念が設定されているらしい」
椛は掲示板は召喚獣自慢スレ9割雑談スレ1割くらいしか見ないタイプなので、初耳だっただけだ。
たまにしか現れない、まさに通り魔、とか呼ばれていることなど本人は知らない。
「危険度Sはフレッド団長すらヤバイって言うレベルらしいよ!まだエンドコンテンツが仕込まれてたなんて!めっちゃ挑んでみたい!」
「危険度Sってクリア出来る想定になってるのか?勇者ぐらいしかクリア出来ない設定になってないのか?挑んでみたいけど」
「ランクB以下は危険度で言えば全てFだって。初心者レベル」
冒険者組合に登録するとランクFから始まるのだ。1番下のランクという意味だろう。
「そう、エリアボスもすべてが危険度F」
「あの高速泳法の魚もか!?レベル差10近いのにまた負けたんだけど!?」
「危険度F」
その先は地獄だぜ、と言わんばかりの設定である。
「だから危険度E以上のダンジョンはランクB以下には閲覧許可すらなかったらしいよ。強くなりたいならランクAに上げて、そんな手強い魔物と戦えって」
「このゲームの難易度おかしくない?」
「大作ゲームとか危険度GかHって感じなのに…モーションアシスト付きでなお易しい難易度なのに…」
文句を言っているように見えるが、闘技場に住み着く勢いのバトル好きたちである。
そんなん燃えるしかないやろ!と喜んでいるだけだ。
「という訳で、ランクA昇格クエストを受けるのが急務になりました」
「海底ダンジョンの攻略じゃなければ、推奨レベル50ならいける」
「海底ダンジョンだったら、他の国で受けよう」
早くランクAになりたいから敬遠しているが、水中戦にまだ自信がないので仕方がない。
急いでいなければ、椛だって海底ダンジョンをクリア出来るように頑張っただろう。
あと件のエリアボスは、近いうちに絶対倒すと誓っている。
蛟戦で自信がついて戻ってから挑んだのだが、負け越し中なのだ。エリアボスのほうが強かった。
冒険者組合で昇格クエストについて尋ねると、ブローゼスト王国では闘技場で指定のランキング順位まで到達することと指定のポイントを稼ぐことだった。
「あら、みなさん達成してますね」
受付嬢の笑顔は眩しかったが、椛たちは膝から崩れ落ちかけた。
なんで今まで確認していなかったのか。
シングルバトルだけではなく、各部門でも達成可能だったので椛もその場でランクAに昇格していた。
ちなみに指定の順位はメイン会場のほうに出られるくらいだったので、それなりの勝率が必要だった。苦手な人は他の国に行ったほうが良い。
「あ、クエストの表記が変わった。危険度も出てるのある」
「ご説明は必要でしょうか?」
聞きかじっただけなので、受付嬢からきちんと聞いておくことにした。
危険度はフレッド団長が言っていた通りだが、ダンジョン以外にもレベルが高くて近付けなかったフィールドでも設定されていた。
奥地にいるエリアボスはレベルも危険度も高いので、事前に調べておけという話だ。
そう、エリアボスがレベル30前後だったのはフィールドのレベルが低いところだけで、まだまだたくさんいるということだ。
ランクAになって初めて解禁される情報だった。
冒険者ランクAでもランクSクエストが受けられるのだが、こちらは失敗すると罰金が発生するので気をつけるように言われた。
身の丈に合わないクエストに手を出すな、ということだろう。
クエストの危険度はそのクエストで訪れる場所を参照して決まるので、魔物のドロップ品の納品などの場合、危険度以上の難易度になる場合もある。
「レアドロップの場合、報酬が高いので分かるかと思いますが、クエスト内容に明記されていないのでお気を付けて下さい。依頼人がレアドロップと書くと受けてもらえないとごね…おっしゃるので、現在はこの形になっております」
「商人どもか…」
この世界の商人NPCたちはタチが悪い。
激レア騎獣を手に入れた椛は何度か被害に遭ったのでそう認識していた。
闘技場での騒ぎを知っているフレンドたちもアレなと納得していた。
「でもわたし、納品系のクエストは手もとにあったらやるくらいで、わざわざ取りに行かないなあ」
「レアドロだったら商業組合で相場を確かめろって話でもあるだろ。依頼人が商人なんだから」
「あそこ商人どもの総本山なのに、個人よりはマシだから」
マシなだけ、と認識されているのが商業組合である。業が深い。
「それから、ランクAの冒険者様には指名依頼が入る可能性があります。そう起きることではありませんが、闘技場で名前の知られていらっしゃる方は時々指名が入りますね」
ランキングの真ん中くらいをうろついていると言っても、どの程度の力があるかは見てわかる。
それを参考にして指名する者がいるそうだ。
ちょっと冒険者としてわくわくする響きだ、指名依頼。
他にもいくつかの注意事項を聞いて、買えるようになったスキルブックなどのアイテムをチェックして、2階の資料室で閲覧許可の出た資料を見てみることにした。
思った以上の資料があって、レベル99のダンジョンとか見ているだけでテンションが上がった。
危険度Sのダンジョンの資料は、ルルイエにはなかったが。
「うふふ、無理」
ルルイエの近くの小さな無人島にある推奨レベル50で危険度Cのダンジョンに試しに行った椛は、入って最初のバトルで負けて、そのまま諦めて戻って来た。
他の者たちもパーティを組んで挑戦しているはずだが、きっと無理だろう。パーティバランスも悪いし。
「そんなにか」
「今までのダンジョンはランキング下位の常連たちがいるところで、危険度Cはランキング中位くらいの強さになってる感じ。魔物のAIが賢さを増したというか」
「ああ、ステータスだけ見たら同じなのに、全然違うやつか。え、ダンジョンボスどんな強さ?」
「たどり着く前に負けるんよ…」
レベル差の暴力に訴えればどうにかなるだろうが、そんなつまらないバトルはしたくない。かと言って中位あたりをうろついている椛では、今は勝ち筋が見えなかった。
行動パターンなどを研究すれば、人間相手ではないのでどうにかなる日も来るだろうが、そこまでしてクリアしたいダンジョンでもなかった。
「でもフレッド団長が強くなりたいならランクAになって魔物と戦えって言った意味は分かった気がする。修行にぴったりだよ」
「俺も後で体験しに行ってみるか」
パーティを組むフレンドが運悪く見つからなくて街にいたその者も、途中で負けるだろうと言う話を聞いても闘志は衰えなかった。
むしろ早く誰か来ないかなという顔である。
「あ、でもパーティ戦の修行になっちゃうか」
「ハーフパーティ戦なら参加してポイント稼ごうかと思ってたし、それもいいよな」
「なるほど」
フルパーティ戦だと魔術士や治癒士まで入ったバランスの良いパーティで参加するチームが多いが、3人のハーフパーティ戦は前衛ばかりの特攻チームが主流になっていた。
タンクが入っても魔物相手のようなヘイトコントロールが効かないため、3人くらいだと活躍しにくいのだ。
それなら魔物相手でも充分練習になりそうだ。
「でも危険度Dくらいから慣れたほうがいいかも…」
「連携の練習するなら、そうだよな」
椛も練習するなら危険度Dくらいからにしようと思ったものだ。
ブローゼスト王国のランクA昇格クエストはレベルを問わない内容ですが、ランクBになっているならレベル45前後ある想定なので、一定のレベルはあるとして条件に含めていないという設定




