61プレイ目 カリータ
南国リゾート満喫回 短めです
バトルの練習も兼ねて、あとから合流したフレンドたちもいたこともあり、椛たち全員が騎獣と契約するのに数日かかった。
数日かけても「たまに成功する」「なんとなく分かって来たけど再現できない」と水中戦にはまだ苦戦中だ。
島の南側に高速移動するタイプの魔物がいたので、訓練場所はそちらに移っている。
だがずっとバトルをしていた訳でもなく、気分転換に遊ぶ時間も長かった。
海水浴場になっている砂浜があり、マリンスポーツを楽しめる有料サービスもあり、海岸沿いの通りはそれらを楽しむ観光客向けの店が並んでいた。
海のリゾートはほぼ揃っているだろうと思えるくらいだった。
「タグはあの水上スキーはやってみた?」
「おお、楽しかったぞ、あれ。調子に乗ってそのまま潜ったら水圧に負けてぶっ飛ばされたけどな」
「誰もがやらかすんだね、それ」
あとから来たタグに尋ねると、予想通りの答えが返って来た。
椛も他の者がやらかしているのを見ていなかったら、同じことをしていただろう。
水上スキーと称しているが、騎獣の鞍に追加の装備を付けることで似た乗り方が出来るというものだ。
海の騎獣も鞍を着けてそこに座って乗るものだが、水上のみ別の乗り方があったのだ。
のんびり進むタイプに着けてもたいしてスピードは出ないが、サメやシャチはかなり爽快な移動が出来た。
イルカはジャンプ混じりになるので難易度が高そうだったものだ。
椛は予定通りシャチと契約してジェットと命名した。種族名はモノクロ鯱というらしい。普通に白黒ではある。
タグのほうは「顔が強そうだから」とサメにしていた。強面が好きだったらしい。
そんな話をしつつ、2人はマリンスポーツ各種を楽しめるサービスを提供している施設に向かった。
今日は遊びたい気分の日なのだった。
ヨットの操作を教わってみたり、サーフィンを教わったり、水上(騎獣)スキーのコースが用意されているのでタイムを競ったり。
数時間ほど遊んでいたらさすがに疲れたので、椛とタグは途中で合流したフレンドたちと海岸沿いのオープンカフェで休んでいた。
観光客っぽい衣装にきちんと着替え済みだ。
フルダイブ型のVRだから体力の心配はないが、精神的な疲れを感じるのだ。
リアルだったらもっと早くダウンしていただろうくらいには遊んだはずだ。
「この店も狙いすましてる立地だよな。海で遊ぶ観光客たちを一望できる上で、景色が最高だし」
「まさに南の島のリゾート地だよなー」
「この辺りに別荘が欲しい」
「転移プレートを置いて、いつでも来られるようにするんだな」
「覇王の別荘がありそう」
みんなで定番のトロピカルジュースを飲みながら、ぐだぐだ駄弁る。
いつものぐだぐださえ、観光地マジックでリッチな気分にしてくれる。ほぼ気のせいだけど。
「そういえば、ここに召喚士専用クエストがあるんじゃなかったか?どんな召喚獣が増えたんだよ」
ふと記憶力がいいほうのフレンドが椛に尋ねた。
椛はストローを咥えてそっと目をそらす。
もちろん忘れていた。
「そ、そろそろクエストやろうかなって」
「掲示板にそういう情報が増えてるっぽいけど」
「そ、そろそろチェックしようかなって」
もちろんそれも忘れていた。椛の記憶力に期待してはいけない。
教えてくれる友がいれば大丈夫なのだ。
今回はたまたまだけど。
そんな訳で掲示板を見てみると、確かに召喚獣の情報が増えていた。自慢スレの可愛い人たちはのんびりさんが多いらしくて、そういう新しい仲間が増えた人はあまり見ていなかった。
「えーと、カリータ島で契約できるのは、蛟って種族らしいね。東洋の龍と蛇の間の子っぽいやつ」
現実のほうでは想像上の生き物とされているものだ。他のゲームでもたまに採用されている。
「蛇要素が強めのドラゴンって感じだな」
「フィールドチェンジってスキルを持ってて、一定時間フィールドを水辺判定に変えるんだって。サンダー・エレメントさんの相棒かな」
「雷が弱点属性で水辺にいない魔物…鳥系の天敵か?」
水生の魔物はたいてい雷属性が弱点だが、鳥系の魔物にも雷属性が弱点のものが多いのだ。
地属性や岩属性には無効化される雷属性だが、それを補って余りある強さに思えてしまう。
「確か天候を変えるスキルがあったよな?」
「ああ、風水だっけ。なんかのクエストの報酬で貰ったって話題になってたよな」
「風水って、西側に黄色い物を飾ると金運上昇でお馴染みの」
「それ1番聞くネタだよね」
それ以外は知らない人のほうが多い風水さんである。椛はなんで天候が変わるの?と意味が分からなかった。
ただ大昔のゲームで風水師は天候を操ったり天変地異を起こすジョブとして採用されていたらしく、それを踏襲して使うソフトもあったそうだ。
椛のやって来たゲームでは出ていなかったが、今もたまに見かけるという。そう、このゲームでもまさに採用されていた。
「で、天候を変えるスキルがどうしたの?」
「天候でフィールド効果と似た効果が出るんだよ。雨だと火が弱まるとか、雷属性が強化されるとか」
「サンダー・エレメントさん…!どこまで強化されてしまうん!?」
「雷鳴平原に雨の日に行くなって話はそれが原因だからな」
理由までは聞いていなかったが、それは忠告されるだろう。
「ただ天候チェンジは消費MPが大きすぎて、実用性はなさそうって話だったぞ」
「フィールドチェンジもそっちか」
そこまでうまい話はなかったようだ。
「じゃあ雨の日の海で水生の魔物に雷属性で攻撃すると、まさか威力が6倍に?」
「さあ…」
「南の海ってほとんど雨にならないし…」
「天候チェンジの消費MP的に、2倍効果がないとおかしくないか?」
「天候は海中や水中にも効果が及ぶんですか、教えて検証好きの人!」
自分で調べる気はなくても気になる時に頼りたくなる検証好きの人たちは、今は検証クランを作って活動中だそうだ。
ただ調べたいことが多すぎて、赤の他人の疑問を全て晴らしてくれる訳ではない。
椛はネタにはするが、検証クランとのつながりなどないし、実際に何かを頼んだこともない。
でもこういう時は、調べてくれないかなと他力本願なことを思うのだった。




