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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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255プレイ目 グルタ

 シラベが面倒くさい光属性をどうしたのかは聞かなかったが、1週間なんてあっという間である。


 レイド戦の当日はリアルの日曜日なので参加率は高そうだった。時間帯も夜なので、休日出勤(夜勤)という人以外は参加しやすいのではないだろうか。


 集合場所で勘違い系光属性が「全プレイヤーの都合を確かめたのか!」とか喚いていたが。


 (もみじ)は流れるように通報した。イベントの進行を妨害しているプレイヤーがいる、と。

 そして他のプレイヤーに無理難題を吹っかけている、と。


 何かが着弾したらしく、喚いていた光属性が「なんでボクが運営から警告されるんだ!」と悲鳴混じりに叫んでいた。


「良い仕事をした。他の人かもしれないけど」

「バレたら面倒くさいだろ、あれ…」


 誰が通報したのかなんて運営は明かさないものだ。証拠もなしに決めつけるようなら、イエローカードがもう一枚増えるだけである。

 なのでプレイヤーが大勢いる場所での通報は匿名性が高いため、ロウガイも気にせずに通報した事だろう。


 近くにいたクラメンと話していたら、集合場所に並んでいた帝国騎士の代表のランスロット様が「もういいかな」と笑顔で割って入った。

 笑顔だが腹の底が窺えない作り笑顔である。


 絶対に怒っている、と確信できる笑顔だ。


 表面にしか興味のない女性陣がきゃあきゃあ黄色い声を上げてはしゃぎ、光属性は相手の気持ちなど考えない人種なので怒鳴り返している。


「これはボクの名誉の問題だ!」

「だったら、どうでもいいってことだね。君、邪魔だから参加禁止」

「…は?」

「戦闘行動中に邪魔されると困るから、終了まで衛兵隊の牢につないでおいてもらえるかな」

「かしこまりました!」


 ランスロット様は運営の代弁者なのか、光属性を衛兵たちに拘束させて連行させていた。

 もちろん喚き散らしていたが、誰も庇わなかった。仲間はいなかったらしい。


「移住者が少し増えたと報告は受けたけど、なんなのかな、あれは」

「えっと…」

「ああ、君に言った訳じゃないよ。知り合いではないのだろう?」


 イベントの進行者らしいプレイヤーが頷いている。察してもらえて何よりだ。


「さて、予定外の邪魔が入ったので時間が押しているから、手短に済ませよう。敵は強大だが過去に討伐記録のある魔物だ。我々に倒せないものではない。臆せずに挑んで欲しい」


 邪魔が入らなかったらランスロット様の演説が聞けたらしい。

 ランスロット様ファンたちの目が標的をロックオンしていた。もう喚く声も聞こえないけど。


 そんな訳で東の海のカニ退治の始まりだった。






 街の神殿前広場に1度に数千人、NPCを含めると1万人以上が集まると入りきらなくなるはずだが、イベント中なので拡張されていたのだろう。


 ぞろぞろと港に向かい、海の騎獣で東に進む。


「あ、天馬(ペガサス)…!」

「あれが天馬騎士…!」


 本日のランスロット様は白いペガサスに乗って空を翔けていた。何もかもが絵になる筆頭騎士様だった。


 他にも空の騎獣で行く帝国騎士が多いが、海の騎獣で向かう帝国騎士たちもいる。

 トシュメッツ国の兵は少ないようだが、冒険者NPCたちの集団もいるし、戦力は充分だろう。


 椛もジェットに乗って進みながら、勝利しか考えていなかった。


「あれが囮の船かな」


 この海の大ガニは大きな船を見つけると襲って来るという。そのために囮が必要だった。

 囮と言っても立派な戦力である。


「格好いい軍艦だな。ブローゼストの船とも違う」

「軍艦のフィギュアとか欲しい」

「それは格好いい」


 椛は詳しくないが、格好いいことは分かる。

 でも天使のお家をイメージした可愛い家のどこに飾ったらいいのか。

 作業部屋ならギリセーフだろうか。


 なんて考えていたら、囮の軍艦に釣られた巨大カニが海中から現われた。

 そこに軍艦から発射される一撃。


「荷電粒子砲!?」

「雷魔法だろ」

「格好いい!格好いいがすぎる!」


 心が男の子の連中が大喜びしているが、椛だってテンションが上がる。

 ブローゼスト王国の軍艦にはなかった兵装だ。使わなかっただけかもしれないが。


「サンダー・エレメントに上級魔法を覚えさせたいっ」

「どっかに雷の魔神いないかな」


 などと話しながらも、椛たちも急いで巨大カニ退治に参加するために向かった。前方のプレイヤーたちは攻撃を開始しているようだ。


「カニが海上に出てるから海上戦一択なの、もしかして?」

「潜っていいんじゃないか?」

「下から攻撃してもいいだろ」


 特に指示が来ないので、戦いやすい場所でいいよねと思うことにした。帝国騎士たちはブローゼスト王国の海軍ほど、海戦は慣れていないのかもしれない。

 ゲーム的に言えばチュートリアルは終わっただけかもしれないが。


 だいぶ近付いた所で、椛は1度止まって仲間を召喚した。常時召喚枠コンビの流星(りゅうせい)玄幽(げんゆう)だ。玄幽はさっさと流星に跨がっている。


 さらに応援係の月詠(つくよみ)を呼ぶ。


「応援よろしくね!」

「みゅっ!」


 さっそく月詠が『応援』スキルで椛とその周囲にバフをばらまく。レイド戦だとパーティを組んでいなくても味方には無差別にかかるスキルなのだ。


 バフを期待して待っていたクラメンたちは喜んで水中に潜って行き、流星と玄幽もカニを目指して水中から向かうようだ。

 月詠は椛のほうに残ったが、何故か頭の上に乗る。


「そこ危な……な!?」

「みゅう!」


 月詠が椛の頭を足蹴にして飛び出した。

 そこにさっと通りかかる天馬騎士──


 アイドル様に喜んでいたプレイヤーたちが落胆し、ランスロット様ファンたちがキャアキャアとボルテージを上げてはしゃぎまくる。


「イケメン騎士に攫われるアイドル様…」

「絵になる…絵になるけど…近くで戦いたかった…!」

「生アイドル様…!」


 ランスロットが伝説のミーティアを狙っていたとしても、月詠のほうから喜んでついて行った形である。

 前回のカースオーガ戦で味をしめたに違いない。


「最大戦力を強化するんだから正しい…正しいけどさあ…」


 釈然としない気分である。


 仕方がないので月詠は放っておくことにした。どうせ空の上だから手も足も出ないので。






 椛も水中に潜って、とりあえず流星と玄幽を追った。

 追いついた椛を見て「月詠は?」という顔をされたが、答えようがない。バフが切れたらがっかりされそうだ。


「よし、雷玉(らいぎょく)!それと(りく)地波(ちなみ)!」


 水属性との相関関係で効果があるのは地属性だ。

 椛も攻撃に行くので、地波に陸を持たせる。


「アイドルとマスコット」

「…この子、可愛いね!」


 自称アイドルの地波は、可愛いグノームが自分に似合うと判断したようだ。喜んで抱いていた。


 そんな地波に周囲の、特に男性プレイヤーたちが「魔神ちゃんだ!」「あれが魔神ちゃんか!」と盛り上がっていた。


 もちろん地波は得意満面で「よーし!頑張っちゃうぞ!」と媚びを売っていた。


 MP切れたら歌でも歌ってて、と言って放って行く。バフとは別の何かで周囲が強化されることだろう。


 ようやくカニのもとにやって来た椛は、双剣で斬り付けて叫ぶ。


「見た目通りの甲殻類ー!」

「カニの腹はちょっと柔らかいぞ」

「カニをバラす時の知恵が役に立つ!」

「妖狐にゃんがカニ鍋にすると美味いって言ってたな」

「お前のところの妖狐にゃんもか」

「同一個体だからな」


 関節とかじゃないの?と思ったが、危なくて近付けなかった。腹のほうがマシだ。


「雷属性の武器より、固定ダメージのほうが効くー!」

「そのスキル、ちょっといいなって思ったんだよな」

「双剣がいまだかつてないほど活躍してる!」

CT(チャージタイム)長いんだよなー!」


 椛が、双剣が輝くのはちょっとの間だけだった。月詠も他に応援に行くというものである。


「アイドル様の応援、あんまり意味なかった…」

「打属性が輝くレイドだな、今回」

「そういえばさ、新規って海の騎獣と契約できてるのか?あの光属性とか」

「知らん」

「パワーレベリングしてもらえば…」

「3人で協力して、サンダー・エレメントさんに頼めば…」

「フレンドらしき姿はなかった気が…」

「忘れてやれよ…」


 チマチマとカスダメを与えながら駄弁る。

 もっと楽しいレイド戦だと思っていたが、相性が悪かったのだ。


 そのうち地波が本当に歌い出したので、MPの尽きかけている陸の代わりにブルーを召喚した。ブルーには地波の側で付き合ってやりながら、地属性魔法で攻撃してもらった。


 雷玉もMPが切れたようなので、お疲れ様と送還した。


「これ、レイド戦だよな…」

「公式PVに期待しよう」


 地波onステージになっているが、一部の人々が楽しそうだから良しとしたのだった。






マク□ス…!(違うんです…)(でもバトルシーンで流れる主題歌は熱いと相場が決まってる)

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― 新着の感想 ―
地波ちゃんデビューライブ成功おめ! その陰で牢獄内で垢BANされただろう光属性くんがいたこと、みんな秒で忘れそう
殴りながら歌ってたらシ◯フォギア 見守って歌ってたらマク◯ス 前線で歌を聴かせにきたらバ◯ラ
地波ちゃんの歌をバックに勇敢に戦う水中班がPVになるんですね。 なおダメージ表記はカットされる。
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