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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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174プレイ目 マリンシア

 タグは一足先に次の街へ向かった。

 せっかくなので古サマリータ王国内の街を回るそうだ。

 美味しいカボチャがあるらしいので、忘れなかったら苗を買っておいてと頼んだが、タグの記憶力は(もみじ)並みなので期待はしていない。


 椛はクエストで納品した素材で作るアクセサリーが完成するのを待っていた。少し時間がかかるらしい。


「借りてた防暑スキル、けっこう街の中でも効果あったからなあ…」


 すでに返却したので、上位互換の防熱スキルのアクセサリー待ちだ。もっと性能の良いものが欲しくなったらまた素材を取って来れば対応すると言っていた。

 アクセサリーは複数のスキルをひとつにまとめようと思うと途端に値が上がる。


 でも新調する日は来ない気がしている。


 そんなことを思いながら港のほうに向かった。来た時はほぼ素通りしたが、市場が賑わい美味しそうな匂いもしていたのだ。


 今の気分は暑いからアイスが食べたい、だ。


 冷たくて甘い物ならなんでもいいなと思ったが、特に見当たらなかった。


「まさか、みんな防暑スキルあるから暑くない!?冷たい物を求めてない!?」

「ああ、他所から来た冒険者さんか。まあ、一生使うものだから、街の者はみんな持ってるさ」

「他所から来た客にバカ売れするよ、冷たいスイーツ!」


 特に椛みたいに防熱スキルを手に入れに来た冒険者に売れるだろう。あまり来ないらしいが。


 裏切られた気分で探し、やっと冷たいジュースを見つけた。


「カフェとかで本でも読むか…」


 冷房が効いていなくても外を歩くよりはマシだろう。

 無駄な体力を使った気分で日陰になってそうな店を探した。


 港から商店街のほうへ移動して、太陽の向きから日陰確定のカフェに入った。

 客入りは良く窓際の席になったが、店内のほうが涼しかった。


 アイスはなかったが涼やかなゼリーを注文し、冷たいジュースも頼む。


「あ、ちょっと召喚獣を呼んでもいい?」

「他のお客様にご迷惑が及ばないのでしたら構いませんよ」

「分かった」


 給仕に確認してから月詠(つくよみ)を召喚した。さっとベリーの乗った小皿を出してやる。


「…みゅう?みゅうみゅう!」

「ああ、ストロベリーはこの間これで最後って言ったでしょ」

「みゅ…!」


 ストロベリーは椛も食べたが、半分は月詠のおやつになった。ストロベリーがあるとそればかり欲しがるからだ。


 月詠もそれは覚えていたようで、がっかりしながら他のベリーを見比べ始めた。


「ところで砂漠で激辛ベリーを見つけたけど、見てみない?」

「みゅ!?」

「灼熱ベリーって言うんだよ」


 どうせ食べないだろうとひと粒だけ出してみせる。見た目はラズベリーに近く、甘酸っぱい匂いもしていた。

 しかし激辛らしい。椛は食べていないが、鑑定すれば分かることだ。


 でも砂漠でこれを見つけて、知らずに「美味しそう!」と食べた被害者の数は気になる。絶対に騙された者はいるだろう。


 月詠も「これが?」「これが激辛?」「どこが?」と困惑して、すんすん匂いを嗅いでいた。


「…みゅう?」

「食べないほうがいいよ」


 ベリーが好物のミーティアまで騙すとは恐ろしい物体だ。砂漠で見つけても食べちゃ駄目だよと言っておく。

 砂漠になど行かないと思うけど。


 椛は危険物はしまって、ゼリーを食べながら月詠の様子を眺めた。改めてベリー選びを始めたアイドル様は確かに可愛い。

 近くの席の客たちも気付いてチラチラと見ていた。


 月詠のおやつタイムを見物して、飽きたようなので送還した。

 代わりに雪ぽよを召喚する。


「なんか涼しい気がする…」


 通路には出ないでねと言って、雪ぽよは床に降ろした。足元でコロコロし始める。


 本を取り出して、その日はのんびり読書を楽しんだのだった。






 次の日は前日の反省を活かして、最初から過ごしやすそうな店を探した。別の店を開拓したい気分だった。


 見つけたのはスイーツがメインの店でドリンクのメニューは少ない。だがアイスケーキがあった。


 迷わずアイスケーキを注文し、今日も雪ぽよを召喚して涼しむ。気分だけでも涼しくなるので、手放せなくなりそうだ。


 のんびりとケーキを食べてから、本を取り出す前に思い出してメールを書いた。


「うーん、やっぱり長くなった…」


 検証クランのシラベに西の大陸の情報を送ろうと思ったのだ。

 エルフの国のこと、兎の国のナンパ男御用達クエストの話、そして砂漠で気付いた発見について。


 他のクラメンが報告したかもしれないが、一応すべて書き連ねた。


 送信してスッキリしたので、本を取り出す。これはエルスティ王国の王都で見つけた西の大陸のトンデモ本である。

 こちらには東の大陸では見たことのない本ばかり売っていたので、一気に数十冊も増えたものだ。


 美貌の一族エルフが主人公だが、今日の本はコメディタッチでつい吹き出しそうになる。

 大きなカブっぽい話だなと思えばカブがモンスター化するし、コウノトリは赤子に見せかけたクリーチャーを街に降らせるし、童話が元ネタのようだった。


 笑いを堪えつつ、アイスティーがなくなったのでおかわりを頼んだ。

 そのついでにメールの返事が届いていることに気付く。


 おかわりを淹れてもらってから、メールではなくメッセージのほうだったので確認してみた。


 [ナンパする気はないよ]


 1言メッセージだった。


 ログイン中なのを確かめ、チャットを送る。


 [それは頼闇(らいあん)に任せておけばいいよ。兎の国でしか発生しないかもしれないし、ネタだけ上げればナンパ男たちが勝手にやるよ]


 [なんで変なクエストを見つけるの?]


 [説明したはずだ!奴がヤマト国のことを思い出して騒がないようにする餌だって!]


 [まだ様子がおかしいの?]


 [兎の国に置き去りにしたから知らない。1回だけって言ったのに付き合わされかけたから]


 あれは危なかった。一目散に逃亡してしまった。


 [砂漠の話は有益だったと自負してる。行けば分かる]


 [事前準備が大変すぎる。ゴーグルくらいじゃ大差ないよ]


 [あの風水士?とかは?]


 [風水スキルね。クエスト起こすより氷の平原に行くほうがマシ]


 そんなにか…砂漠と比べてもまだ砂漠に行くとか言い出しそうだ。どんなクエストか知らないけど。


 しばし情報交換して、詳しくは雑スレでも見てと言われて話は終わった。

 トシュメッツ国の後日談的なイベントが進み、ついでに二陣がハイレオン帝国のイベントを進めたらしいのだ。


 一陣の奴らが発見できていないイベントだ!と向こうは盛り上がっているそうだ。

 でもそれはちょっと情けないなと思った。


 椛は当分ハイレオン帝国には行きたくないけど。


 掲示板を見ようかと思ったが、手元の本の続きも気になる。おバカなわんこが咥えた肉を橋から川に落とし、川に落ちた肉が超次元的な化学反応を示したその時、新たな命が誕生した!


 ──ところでアイスティーを頼んだのだ。

 ちなみに主人公のエルフはわんこに肉を取られて探し回っている。


 どこで手に入れた何の肉だったのか。


 やっぱり掲示板よりこっちが気になると本に没頭した椛は、掲示板の存在を忘れきったまま宿に戻ってログアウトした。


 誰かに指摘されるまで思い出すことはないだろう。






剣と魔法の世界の住民NPCたちは、超次元的な化学反応とか言われてどんな顔でこの本を読んでいるのだろうか…(今さら)

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― 新着の感想 ―
NPC全て塩対応状態で、よくクエストを進められましたね。 第2陣って根性があるのかな。
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