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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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162プレイ目 カドマン

 1日経ったら少し気分が落ち着いたようで、(もみじ)は危険度の低いダンジョンに行って来た。


 クランチャットは覗かないのが元気の秘訣だ。


 危険度Eだがレベルは55だったので、流星(りゅうせい)玄幽(げんゆう)たちも弱くてつまらない、みたいな反応はしなかった。

 簡単なほうではあったが。


 そしてこのダンジョンは薬草系のアイテムが豊富な場所で、冒険者組合(ギルド)でクエストがたくさん出ているし、買い取り価格もまずまずだ。

 転売屋は狙わないレベルなのも気楽で良い。


 椛は組合の買い取り窓口で売りながら尋ねた。


「ボスドロはレアじゃなくても良いお値段ですが、もしかして…」

「ダンジョンに行ってもボスは狙わない奴が多めでな…」

「なるほど、完全に理解した」


 転売屋が狙うアイテムだ、と。


「研究所に直接売り込みに行きたいな。次も行くつもりだから、あとで良いんだけど」

「そのほうがこっちも助かる。研究所を優先するアイテムは決まってて、それは対象外でな…」


 なんでもかんでも研究所を優先していると在野の薬師たちが怒る。でも薬師より先に転売屋が買い占めるので、薬師たちは高値で買わされるそうだ。


 クエストを出したほうが安上がりなくらいらしいが、今はクエストが出ていなかった。


 クエストがあったら納品しても良かった。

 窓口のおじさんもクエストでも助かると言っていたものだ。


 さらに良い薬草系が手に入るダンジョンがあるそうだが、レベル65だった。

 危険度Eで木属性特化だから、レベル上げついでに採取するなら良さそうだ。


 疲れるバトルはなあ、もう少しのんびりしたいなあ、と思ってしまう。

 でもメモはしておいた。

 椛もサブ職は薬師なのだ。ほとんど上げていないが、覚えておいて損はないだろう。


 そうだ、調薬するのもいいな、と今さら思ったりもしたのだった。






 街歩きはしばらく止めるため、その後は組合の酒場で食事をしていた。


 月牙(げつが)が喜ぶ姿が見たいので、罠を設置するのはすでに習慣と化しているのだ。今日ももちろん売ってある。


 とはいえ売ったばかりなので、今日は野菜多めのシチューを頼んだ。カドマンは何げに野菜料理が多い印象である。


 1人だと少し寂しかったので、雪ぽよを呼んでみた。テーブルの上をコロコロしているが、落ちる心配はなさそうだ。


 冒険者NPCに「そのボールはなんだ?錬金術で作ったのか?」と聞かれて答えていると、組合の売店にプレイヤーたちが駆け込んで来て「本当に入荷してる!」と喜んで薬草類を買っていた。

 薬師のプレイヤーのようだ。


「あんまり入荷しないの?」

「そんなことないだろ。ただ売り切れるのも早いな」

「ああ、わたしも売ってる所は見ないな」


 自分の売却した物がさっそく並べられたのを見たくらいだ。


 薬師たちは「これでアレが作れる」「クエストを受けられる」とホクホク顔で帰って行った。

 なんだか平和そうだった。


「…転売屋じゃなくてああいう人たちが買って行くのを見ると、またたくさん採って来ようって気分になるね」

「そうだな」


 転売屋は売る気が失せるだけだ。

 椛はちょっとだけ、この街でダンジョンに行くモチベーションが上がったものだ。






 良く考えるまでもなく、薬学研究所などがあって薬草系が豊富なカドマンは、薬師プレイヤーたちの拠点として人気だった。


 港街ラフィスも薬草園があったりして薬師向きだが、カドマンのほうがダンジョン産の素材が手に入りやすいそうだ。


 レベル55ダンジョンの周辺で良く捕まる鶏で作った唐揚げを食べながら、椛はそんな情報を掲示板で見つけた。


 薬師とか拠点といったワードで検索したら、マトモな薬師スレも見つかったのだ。

 興味がなくて初めて検索した気がする。


 この街にいる薬師プレイヤーに高性能なポーションを注文したら作って貰えるかな、と考える。椛では作れないランクの物は多い。


 冒険者組合の酒場で唐揚げをつまみながら掲示板を読んでいると、冒険者NPCたちもカウンターに出ている『数量限定』のアナログなメニュー表に気付いて注文していた。


 ダンジョンに行く冒険者は多くても、罠を仕掛けて獲物を捕まえる者は少ない。

 ゆえにこの都を拠点にしている冒険者でも滅多に食べられない鶏肉だそうだ。


 ランクCのうだつの上がらないほうの冒険者NPCだから。


「それにしても美味いな、この鶏の唐揚げ!また獲って来るんだろ?」

「その予定。罠を倍にしても良さそう…」


 椛も確保しておきたい味だ。

 月牙もこれは気にいったようだし。


「フライドチキンも美味いぞ」

「ここの人、揚げ物好きだな!」


 酒場のマスターまで期待して来るので、たくさん捕まえて来るしかなさそうだった。


 もちろん椛もフライドチキンは楽しみだ。






 のんびり過ごしたいが、そのために頼闇(らいあん)対策を考えたほうがいい。今のまま放っておくと悪化する気がしてならない。


 フィールドで採取しながら頭の隅でイベントのことを考えていたが、椛はふと閃いた。


「ヤマト国より先に兎の国に行けばいいじゃない!」


 しばらく兎の国に放逐したい。

 名案ではなく願望だった。


 でもイベントが行き詰まっているのだから、転移(ゲート)を登録していつでも(金さえあれば)行けるようにしておいたらどうだろう。


 まあ、意地になって「先に侍になりたいのよ!」とか言いそうだが。性格や趣味嗜好は漢らしいのに、そういう所はオネエっぽい。


 オネエじゃなくても面倒くさい人は割と良くいるけど。


「そもそも一介の冒険者が国を動かせる訳ないじゃない。ご都合主義ラノベじゃないんだからさあ」


 九尾の妖狐の件はあくまで「《七つの災厄》がいるだと!?ヤバい!」と判断したから二大国が動いただけだ。移住者はあの国が怪しいと情報提供しただけである。

 聖女様はヤバすぎ案件だから動いただけだろう。


 西の海の怪物だってブローゼスト王国の領海に出没していて、国として対処したいと思っていただけだ。

 情報提供したのが移住者だっただけで。プレイヤーがフラグを立てないと進まなかったとは思うが。


 本来はトシュメッツ国が対処する問題だが、そのトシュメッツ国がアホ妖狐のせいで上層部がガタガタ、二大国にサポートを受けている状況で、ヤマト国との交易なんて後回しになって当然だ。

 そんな余裕もないだろう。


 救援を求めるなら「トシュメッツ国が」他国に頼む形にしないと相手にされない。個人の問題ではなく、国家の問題だから。


 必要なのはトシュメッツ国が救援を求める重大な理由である。《七つの災厄》がまた来た助けて!くらいの理由が必要だろう。


 ありえない。無理。


「この方向で考え方は間違ってないはずだけどなあ…」


 椛がランスロットに頼めばイベントが進むとか、頭お花畑なシナリオライターが書いた乙女ゲーでもありえない。いや、あるかも。


 あったとしても特定のプレイヤーにしか進められないイベントなんて、このゲームには存在しないと思う。そう見えたとしてもフラグが足りないとか貢献度が足りないという話のはずだ。


 つまりはオノレの怠慢を他のプレイヤー(椛)に押し付けているだけなのだ。

 話が通じない判定を食らった連中だってNPCたちとちゃんと交流しなかったからの結果であり、あれもゲーム的にはある種のフラグ不足だったはずだ。


 それ以前にあの腹黒騎士は椛を重要視などしていない。ランスロットは聖女様ファンなだけなのだ。


「言わなかったっけ?言ったはずだけどなあ…」


 《神殺しの塔》装備を手に入れたクエストも、ランスロットが自ら出向いた理由も聖女様だった。

 掲示板で公開していないネタだが、検証クランとクランのメンバーには言った気がする。


「ねえ天狐(てんこ)、東の海のカニを早く倒さなきゃいけない理由とかないの?」

「そんな理由があったら放置してないにゃ。ヤマト国が倒してくれても良かったにゃ」

「ヤマト国のほうも放置してるだけだもんなあ」


 レベル上げをするために召喚している妖狐に聞くと、全く役に立たない答えしかなかった。

 採取を手伝わせているが文句のほうが多いし。


「…黄金のさつま芋はいつ手に入るの?」

「にゃ!?早くヤマト国に取りに行くにゃ!」

「お前のせいでトシュメッツ国は海なんて放置して国の立て直し中だよ」

「妾は過去を振り返らにゃい主義にゃ…」

「昔のことを未練たらたらで本にしたためて出版した奴は言うことが違うねえ」

「…うにゃー!妾としたことがー!」


 頼闇、これは好みじゃなかったんだろうなあ、と見た目だけは可愛い妖狐を見る。採取するために今は幼女姿だ。


 好みだったら愛でて多少は慰めになっていただろう。

 本当に役に立たないなあ、と思う椛だった。






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