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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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151プレイ目 レイル

「お前ら…」


 (もみじ)は掲示板を眺めながら、書き込みをするタグたちを見た。

 椛もイベントのテンションで掲示板の雑談スレに少し参加していたが、クランのメンバーたちもけっこう書き込んでいたのだ。


 まだ椛たちは王都ブロムの手前の海上にいる。鬼女が活性化しそうなので、あえて最後尾でのんびり戻っていたのだ。


「だ、だって侍に転職したくて!」

「カレーライス…」

「麻婆豆腐…」


 リアルで食えよと思ったが諦めた。

 それに他の人がイベントを進めるなら、喚かれたり睨まれたりしないので椛は困らないだろう。


 でも十中八九ハズレだと思っていた案にすがるくらい、他の可能性が思いつかないらしい。


「いいけどさ。怪しまれてるじゃん」

「ロウガイもカレーライス派だったんだな」

「うむ。ライスのないカレーなどただのカレーじゃ」

「カレーパンも美味しいよ」


 とりあえずイベントを進める方法を具体的に仄めかし、誰かやってと言わなくても抜け駆けする奴が出るように誘導する。


 他人の発案でも実際にやったのは自分だ、とドヤれる神経の持ち主はけっこう存在するものだ。

 転移(ゲート)を使ってでも達成しようとするだろう。


「これでイベントが起きるのか否か」

「けっこう当たってると思うわよ。当たっていて欲しいわ…!」


 今は槍士の頼闇(らいあん)だが、カタナを使う侍に転職したくて神頼みをするような顔で言っている。

 ほぼ希望的観測であって、信憑性はない。


「あと抜け駆けするアホがコミュ力なさすぎて、ちゃんと話が通じなかった時ー」

「ありそう…」

「誰かフォローしてやってくれ…」


 攻略組すら話が通じない判定を食らったくらいだ。NPCとマトモに会話が成立していないプレイヤーも存在するのである。


 NPCどころか同じ人間相手でも話が通じない者はけっこう存在するし。


「それで西の大陸はいつ行くの?」

「今聞く?」

「気になるけどヤマト国…」

「転移代はまだまだ高いとしか思えないからなあ…」


 トシュメッツ国のイベントの進捗具合を見てから考えたほうが良さそうだった。

 それにイベントの直後は混雑しているに違いない。






 九尾の妖狐本人が書いた自伝のような本。

 数十年前の革命以降、国民性が豹変したかのようなトシュメッツ国の商人たち。


 そのふたつを理由に周辺国に違和感を伝える。今回の話はそれだけのことだった。


 だが案の定、アホは話が下手すぎて「騙された!」と喚いていたらしい。

 人の話を勝手に横取りした自分を棚に上げて。


「そんな気がしてた…」

「何がそんなに難しかったのか…」


 仕方がないので椛と帝都レイルに戻ったクラメンでリベンジだ。本当に予想が外れている可能性の確認もかねていた。


 問題の本を手にして話しながら歩いて行く。今日は冒険者組合(ギルド)に寄っていないので、例のストーカーっぽい連中は付いて来ていない。


 しかし召喚獣研究所に向かう途中で、13騎士の御一行様に遭遇した。白馬に乗ったランスロットが先頭である。


「…この本がフラグ?」

「手に持って歩く必要があった…?」


 遠くから見てやり過ごす気でアホなことを言い合っていると、今日もランスロットのほうから声をかけて来た。

 周囲の圧力にタグたちも青くなっていた。


「珍しいところで会うね。その本は何か重要な物なのかな」

「マジでフラグ!?じゃなかった!誰か(いち)を聞いて(じゅう)を知る感じの察しの良過ぎる頭の良い人に聞きたいなと思ってただけです!」


 周囲が「まさにランスロット様のことじゃない」「なんて図々しい」とさらに圧を増したが、ランスロットが興味を示したのでちょっと抑えられた。


「それにこの先は研究所だ。そこに向かってたのかな」

「はい。伝説の幻獣の話なので」


 機転の利くランスロットのおかげでさらに圧が小さくなった。

 でもそれならこんなところで声かけてくんな、と思わなくもない。


 そこまで同行しよう、と研究所に向かった。


 追っかけもいたが、研究所の敷地内に入ればさすがについて来なかった。

 だが建物には入らずに入口近くで話す。


「他の移住者が持ち込んだ本じゃないかな、それは」

「話が通じない判定を受ける移住者が稀に良くいるので、念のため…」

「うん、前にもいたね」


 ランスロットに差し出すと、題名に眉を顰めてあらすじに眉間を指でもんでいた。


「でもここの研究者たちも、話がいまいち通じないほうでね」

「自分の研究以外は興味ない系の人とかそんな感じッスよね」

「どんな本だったか確かめようと思って来たけど、これは酷い」

「友達が、本人が自画自賛する自伝のようだって評価してたので…トシュメッツ国の革命後の豹変の噂も怪しいなって」


 なるほど、とランスロットは読みたくなさそうな顔で本を開く。


「付き合いで読まされる自伝にそっくりだね」


 つまりそちらの自伝も読む気がしない出来なのだろう。


「あ、でも確認に来たならいらなかったのでは」

「実物がないから話を聞くしかなかっただけだよ」

「そちらは差し上げます。調べていただきたいなと思ったので」


 ありがとうとにっこり笑うランスロットに、こちらの意図が正しく伝わったことを確信したのだった。






 アルヴィーナ王国のほうも「騙された!」からのショタジジイのフォローで、どうにか伝わったようだ。


 図書館の館長が「移住者って、本当に異世界から来たんだって思い知ったよ」とコメントしていたとか。

 よほど話が通じなかったようだ。


「話してる本人も話の内容を理解してなかったんじゃないか。掲示板のネタを丸パクしただけとか」

「ああ、本人が理解してないと要領を得ないよな。いや、そんな難しいこと言ったか?」

「急いでたんだろ。先越されたくなくて」

「とにかく1番に言えば良いって思ったのか」


 椛は掲示板の書き込みを思い返しながら、想像してみた。


「本を差し出して、これは九尾の妖狐本人が書いたんだ!ドヤァ!」

「あ、駄目だわ」

「1発で聞く気失せるな…」


 会話って話す順番も大事だよね。

 椛もそう思う。


「トシュメッツ国の商人は怪しい!ドヤァ!」

「言われなくても知ってる…」

「あー、あれだとそうなるかも…」


 そうだけどそうじゃない。

 話の主題はそこじゃない。


「革命以前とは違うとか、そういう何故そう思ったのかの部分こそ重要だったね」

「結論だけじゃ駄目だなー」

「まあ、こっちは本だけでも渡しておけば、ランスロット様が勝手に理解してくれた可能性も…あ、邪神教団の話もちゃんとしないと進まなかったって言ってたっけ」

「そんな話も聞いたな」


 全部察してくれる訳ではなかった。

 でもある程度の推論を伝えれば、話の流れを理解してくれる気がする。


「ところで、黙っていれば自分の手柄だったって勘違いするかな」

「いや、あれだけ目立つランスロット様に声かけられたから…」

「あれでバレただろ…」

「でもそういう奴って自分にコミュ力がないって自覚ないからなあ…」


 デカい声で一方的に喚くことをコミュ力とは言わない。相手に理解力があったから伝わっただけで、コミュニケーションが取れていないのだ。

 相手が理解しないと、相手にコミュ力がないと決めつけて自分の否を自覚しない。

 そういう人間もいる。


「あ、正解は研究所じゃなくてランスロット様だったって解釈するかな?」

「13騎士はほぼ会えない存在だし、せいぜい騎士たちじゃないか?」

「上に報告って形だな」


 どちらにしろ、騙しやがった!横取りした!とか喚きそうだ。


「次はどこの街に行く?」

「北のほうはまだ行ったことないな」

「そうだ、北に行こう」


 何も言わなくても伝わったらしい。

 帝都をさっさと旅立つことにした。


 このくらい理解力があれば…とどこの誰だか分からないプレイヤーの残念さを思ったのだった。






研究所から報告を受けたランスロット様

「え?移住者が怪しい本を持ち込んだ?九尾の妖狐って題名に入ってた?でも本ごと移住者を追い払った?…報告するなら現物を付けてくれないかな…」


冒険者組合から報告を受けたランスロット様

「そうか、やっぱり、話が通じないほうの移住者か。会うだけ時間の無駄だね」


巡回中の騎士から報告を受けたランスロット様

「椛が例の怪しい本とみられる物を持って歩いてる?研究所のほうに向かってる?よし、私が出よう」


こんな流れかな、と

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― 新着の感想 ―
こうして椛の貢献度がさらに上がり、椛がさらに信用されて、椛が関わると聖女様やランスロット、王女様など重要人物がホイホイ出てくるようになり、話の通じない方の移住者がいよいよ話が通じなくなるのであった。 …
ランスロット様は椛を話の通じない方の移住者の通訳係か、有用な情報をくれる便利な移住者扱いしてそうですね。  レイルでもそのうち鬼女がでそう。
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