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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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171/251

150プレイ目 ブロム

 (もみじ)はブローゼスト王国の王都ブロムにある、海軍基地に来ていた。


 カナーラント王国のハトロワの街から海の騎獣で港に入ったのだが、入国管理事務所で手続きしている時に鬼女に見つかってしまったのだ。


「なんか嗅覚が上がってるというか、謎のセンサーで敵性生物を発見できるようになってない?鬼女って進化するの?」

「分からん…」


 今のところ椛ほど目の敵にされている人が他にいないらしいので、比べようがなかった。


「だが敵対していたはずの移住者とは、いつの間にか普通に話すようになっていたらしい」

「そいつら仲間認定受けただけじゃないかな…」


 鬼女は鬼女とは分かりあえるらしい。

 椛には無理である。


 レイド戦の日程が決まって、ゲーム内では4日前だが現実(リアル)では前日に現地入りしただけなのに、宿にも泊まれなかった。

 海軍基地の客室を貸してもらえることになったから、どうにかイベントには参加できそうである。


「男所帯で済まないが」

「鬼女が生まれる危険がないほうが安心できるから!」


 海兵に苦笑いされたが、寝室は鍵をかければ絶対安全な空間になる。ログアウト中のプレイヤーを守る処置だ。

 それに全年齢対象のソフトなので、いかがわしい方の心配はする必要はない。


 せっかくの機会なので、部外者でも出入りできる範囲で見学させてもらった。

 訓練に参加はできなかったが、見ているだけで楽しいし、模擬戦は闘技場のバトルを見るようで大変盛り上がった。


 1人だけレアイベントを体験したと思えば楽しく過ごせた。

 他のプレイヤーたちは大勢で集まってワイワイしてるんだろうなあ、とか考えなければ楽しかったのだ。


 …椛もレイド戦前の盛り上がりをみんなで楽しみたかったなんて、半分くらいしか思っていない。

 おのれ、鬼女どもめ。






 イベント開始前にようやく合流した椛は、クランのメンバーやフレンドに声をかけた。

 けっこう知り合いが固まっている。


「いいなあ、海軍基地とか関係者しか入れないのに」

「ジーク様に色目を使えばレアイベントが目白押しだよ!早く行って来いやコラ」

「ごめん、冗談です、無理です」


 検証クランの女子メンバーの軽い一言についキレたが、誰も怒らなかった。

 広場などで集まっていたら突然鬼女たちが覚醒して、一斉に発狂したのを見たそうだ。


「なんかテレパシーで繋がってそうなシンクロ具合だったよ…」

「その少し後で椛から連絡が入って、原因が分かったけど…」


 鬼女たちがひとつの生き物になりかけているのだろうか。

 ますます意味不明になっている。


「あと片膝ついてアレだった話もすっかり知れ渡ってたわよ」

「それは鬼女の同類認定受けた連中が話したんじゃないかな。掲示板に載ってたらしいし、そいつらも鬼女らしくわたしを目の敵にしてるっぽいし…」

「あ、それで」

「そうか、あいつらか…」


 ジーク様ファンだか乙女ゲー気分でNPCを攻略しようと思っているのか知らないが、全く接点を持てない連中が椛を敵視しているのだ。

 椛は乙女ゲーはソロで攻略するソフトしかやったことがないが、MMOタイプの乙女ゲーは戦場だと聞いたことがある。そういうところに生息しているプレイヤーたちに思えた。


 ちなみにMMOの乙女ゲーは課金ゲーなので、愛とは課金額であり、覚悟のない者は触れてはいけない世界だ。

 …下手な戦場より怖い。


「でもジーク様が片膝をついているシーンのスクショが上がってたけど、これは惚れる!ってなったよー」

「あれを目の前にして、鬼女が!アンセムにも鬼女が生まれる!としか思わなかったわたしがおかしいのか…?」


 頼闇(らいあん)に「当事者とそれ以外は違うわよ」と慰められた。


 そんな鬼女の話をしているうちに時間が来て、出発となった。

 海軍や王国騎士団が大勢参加しているため、鬼女たちも近付けなかったのだ。こんな規模の護衛がいないと入れない都、それが王都ブロムなのだった。






 戦場は王都の西にしばらく進んだ先の海上だ。海軍が監視を続けていたが、積極的に動く様子はなかったそうだ。


「敵の名前はエンペラークラーケン。こっちがクラーケンなら東には何がいるんだろう」

「リヴァイアサンとか海龍系じゃないか」

「東洋の龍がモチーフとか」


 テンプレであり、戦いたいボス代表のようなモンスターだ。きっとPVも映えるだろう。


「ところで、あそこに人魚…じゃなくて半魚人メスに乗ってる1団が…」

「けっこう掲示板では有名だよ」

「NPCたちの視線がイタイ…」

「カリータ島だっけ、あそこでも悪名高くなってるらしいよ」


 より好みの半魚人メスを求めて居座って厳選しているらしい。

 本当にこのゲーム、健全な全年齢対象のゲームなのだろうか。


 途中で変なものを見たり、NPCたちの一糸乱れぬ隊列の見事さに感心したり、今回は最初から視界の端を飛んでいる水竜騎士隊を眺めた。

 水竜の数が少なく、増やすのも困難なので騎士団ではなく騎士隊なのだろうと今は思える。ちょっとこの世界の知識が増えていた。


 そうしてたどり着いた先に、前回のレイドボスよりは小さいが、海軍の船よりずっと大きいエンペラークラーケンが待ち構えていた。


「でっか。顔がちゃんと分かる」

「壁を殴ってる気分にしかならなかった前回より、魔物っぽい」

「海上と水中に分かれるんですって。どうする?」


 頼闇が一応と尋ねて来たが、クランのメンバーは「水中」と即答していた。椛も水中派だ。


「水中のほうが大変だから?」

「何を言っている…?」

「水中は水流で流されるだけだよ。海上は波で三半規管が死ぬほどシェイクされるよ」


 水中戦をあまりやっていない事が分かる質問をした者は、やや考えて水中戦を選んでいた。


 きっと水中戦をやらない連中が海上を選ぶから、椛たちが全員水中に回っても問題ないだろう。


「海でレベル上げたんだろ。なんで今さら初心者みたいなこと言ってたんだ」

「海でレベル上げはしたけど水中戦はしてないんだよ」

「トンチか?」

「サンダー・エレメントさん頼りで海の中を移動することを水中戦って呼ばないんだよ…」

「あと海面を移動するタイプの魔物を狙わない限り、海上の波の酷さは知らないままだと思うよ」


 椛も海上で戦って初めて気付いたことである。海上を移動している魔物は狙いにくいから、好んで戦う者は少ないだろう。

 高速タイプだから手を出すと酷い目に遭うし。


「とりあえず常時召喚枠で流星(りゅうせい)玄幽(げんゆう)


「あんっ」「ガア!」とやる気いっぱいに出て来て、玄幽は流星に乗っている。


「あと月詠(つくよみ)CT(チャージタイム)いっぱい頑張って応援よろしく」

「みゅっみゅーう!」


 椛が連れているより流星に乗っているほうが良いだろう。PVで椛まで映りたくない。


 周囲が「アイドル様!?」「アイドル様だ!」とざわついたが、すぐに戦闘開始だ。

 召喚獣トリオは好きにやってていいよ〜、と放流しておいた。


「確認したことなかったけど、レイド戦ならパーティ組んでない人にもバフかけられるよね」

「バフも回復もイケるわよ」

「あ、1.5倍のチートか!」

「行く前に俺たちも『応援』しておいてくれよ!」

「あ…」


 召喚獣トリオが去ってから椛も気付いた。

 月詠のバフをもらってない、と。


 気が向いたら帰って来るんじゃないかな、と思うしかなかった。






 海上は波にシェイクされて大変だろうが、水中は水中で大変だ。

 人が多いので想像以上に水流が荒ぶっているし、エンペラークラーケンの足が縦横無尽に暴れ回っている。


 正直プレイヤーたちよりも、誰もが契約している召喚獣たちこそが主力だった。

 特にサンダー・エレメントさん。


「騎獣に乗ってるほうが安定する…!」

「双剣のリーチだと攻撃できないんですけどー!」

「両手持ちの大剣も騎獣に乗りながら振り回せないんだけどー!」

「騎乗スキルってあくまで騎獣が攻撃できるようになる効果だったんだなー」


 騎乗スキルは騎士系に転職しなくては入手困難だが、騎獣に乗ったまま攻撃する分には必要のないスキルだった。

 名前のせいで誤解されやすい効果だが、椛は月牙(げつが)のために欲しかったから間違った訳ではない。


 そして今は海の騎獣のジェットが椛の代わりに攻撃してくれている。

 クラーケンの足から逃げるためにちょっと乗っただけなのに。


「NPCどころか騎獣にも負けている気分…」

「レベル上げに意味があったのだろうか」

「槍は良いわよ、槍は!」

「豪槍勇者を思い出すから…」

「本屋で『これが椛の言ってた豪槍勇者か』ってちょっと眺めてただけなのに、王都カナリアでもなかったのに、ご興味がおありですかって腐界の住人臭のするNPCが寄って来たからな…」

「どこの街のどの本屋!?」


 槍士の頼闇が怒っているが、豪槍勇者は腐界との繋がりが強すぎた。

 腐界の住人向けに用意されたコンテンツだとでも言う気だろうか。全年齢対象の範囲であって欲しいものである。


 そんな与太話をしながらも、出来る範囲で攻撃はしていた。地上でのレイド戦のほうが楽しかったというか、易しかったというか。


 でもフレンドたちとワイワイ騒ぐのは、たまには楽しいイベントである。


「アイドル様はいずこ〜?」

「知らん」

「ワタシ、『応援』してもらってない〜」

「召喚主も『応援』されてなかったよ」

「されても無意味だったなって今なら分かる」

「それな」

「もふもふさんは参加してないの?」

「どこかにいると思うわよ」

「るー君の『応援』も欲しい〜」


 水流で流されて来たプレイヤーが嘆いていたが、召喚獣トリオはどこかで戦っているはずだ。椛にも分からない。

 普段は召喚可能距離があるためか、マップに仲間の位置が表示されるようなゲームでもないので。


「クラーケンの動きが変わるみたいだよー」


 誰かの注意喚起の(のち)、エンペラークラーケンから何かが大量に噴出された。

 イカやタコと言えば墨吹きを連想するが、丸い物体である。


「何あれ」

「砲弾じゃないよな」

「まさかのサイコキネシス?」

「クラーケンはESP(エスパー)だった?」


 などと言っていたら、丸い物体が弾けて中身が出て来た。


「タマゴー!?」

「メスならエンプレスだろ!?」

「ジェンダーレスなのよ、クラーケンは!」

「でも小さいのなら戦え…ぎゃー!?」

「小さいのは高速移動するって決まってるよね…」

「小魚は海で1番厄介だぞ…」


 タマゴから出て来たのはクラーケン・ベビーだった。産まれたてなのに殺意の高いベビーたちが、高速泳法で水中を暴れ回り出す。


 HPは低いようなので攻撃が当たれば倒せるが、当てるのが難しかった。

 召喚獣たちは見事に戦ってくれているからそのうち倒しきれるだろう。

 

「うちの騎獣が優秀…!」

「騎乗スキルが欲しい〜」

「貢献度いくつ必要なんだよ、あのイベント!」


 ただし椛の場合はジェットが倒してくれるので、クラーケン・ベビーの猛攻タイムは楽しい狩りの時間だった。

 椛は乗っていただけだけど。


 その後も巨大な水竜巻(たつまき)で洗濯される気分を味合わされたり、凄い勢いで空に向かって打ち上げられたり(もちろん自由落下付き)という攻撃が続いたが、レイド戦は無事に勝利で終わった。


 西の大陸へ向かうルートが解禁されたのだった。





もふもふさんのミーティアの名前はルナで、るー君が愛称です

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― 新着の感想 ―
定期的にこういうレイドほしいよね
1体が見つけたら全員覚醒だなんて、鬼女たち人間辞めてませんか?
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