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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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139プレイ目 ヴィスタ

「なんかさ。ドゥナンって平和すぎて、ペペロンチーノの思い出くらいしか出来なかったな」

「王都が鮮烈すぎたのじゃな」


 (もみじ)とロウガイはアルヴィーナ王国の王都ヴィスタに移動して来ていた。冒険者組合(ギルド)で黒兎のシチューを堪能しているところだ。


 立ち食いパスタの屋台はほぼ幻の店で、2回目以降は出会えなかった。おかげでペペロンチーノの店だった気分である。


「インパクトある住民も少なかった。図書館の館長レベルの人はいないね」

「そんなにインパクトあったかのう?」

「…ああ、あれは召喚士限定だった。ぽよぽよ信者」


 図書館の館長は召喚士以外には絡まないのだ。ぽよぽよがいないから。


「雪の子でもバレたら絡まれるのかのう」

「それはありそう。ザイゼルで見た冒険者たち、全員が契約できたのかな」

「そんなこともあったのう」


 とりとめのない話をしつつも黒兎のシチューを堪能する。大事なことなので2回言ったが、ただ食べるのではなく味わうものなのだ。


 椛とロウガイで合わせて50個くらい罠を仕掛けて回って捕まえた黒兎だ。1羽は月牙(げつが)のおやつにしたが、残りは冒険者組合の酒場でシチューになった。

 他の冒険者たちも至福の時を過ごしている。


「あー、美味しかった。いろんな所に行ったけど、黒兎を上回るお肉は滅多になかったよね」

「なんかの鳥肉は美味かったが、種類が違ったからのう」

(きじ)だったかな。あれも月牙がしっぽパタパタになるお肉だったねえ」


 食後もまったりと過ごした。

 平和な日々が続いているのだった。






 ロウガイは久しぶりに行きつけのカフェーに行った。今日はのんびり読書をするそうだ。


 椛は図書館に来た。館長に会いたかったのではなく、報告しておこうと思ったからだ。


「炎の魔神は王都カナリアのダンジョンの奥に封印されてるって言ってたよ。レベル60危険度Cだからまだ無理だったけど」

「え、カナーラント王国に封印されてたんだ。すごい近い。しかも1番人気の炎の魔神」


 ぽよちーに気を取られていた館長が驚いて振り返る。そのくらい興味がある話題だったようだ。


「炎の魔神が好きなのは王子様だけじゃなかったの?」

「火属性魔法は派手だから元々人気だよ。その火属性特化だから、きっとすごく派手だろうからね」


 どの属性もエフェクトは派手で華やかだが、赤というイメージカラーもあって火属性が1番派手に映る。そういう意味で人気らしい。


 召喚獣はまだ火属性特化がいないので、小妖精が使えるくらいだ。


「しかも見た目も強そうだし」

「魔術士ってマッチョに憧れでもあるの?」

「…だって強そうだし」


 男のロマンらしい。分からなくもない。


「それで何か情報ないかなって思ったんだけど」

「閲覧制限あるからなあ。図鑑に載ってない幻獣だと、魔物とは違う竜かな」

「幻獣の竜?」


 魔物の竜はブローゼスト王国の水竜騎士隊が有名だが、地竜・水竜・火竜・風竜・光竜・闇竜と属性で呼ぶ。


 幻獣のほうは黄竜・青竜・赤竜・緑竜・白竜・紫竜と色で呼ぶそうだ。


「黒竜バハムートは正確には紫竜なんだよ」

「バハムートさんは幻獣だったのか…!」

「特異個体だったのか、ほとんど黒にしか見えない濃い紫だったって言い伝えられてるよ」


 1周年記念のイベントで手に入れた竜シリーズのぬいぐるみは魔物のほうだった。

 特に疑問もなく知っていたつもりだったが、改めて知る事実である。


「魔物の竜はテイムの成功率が絶望的で、タマゴの入手確率も絶望的だから、代々引き継がれた個体を使ってるだけなんだけど、幻獣のほうは契約しやすいらしいよ。魔物の竜を手に入れることに比べたら」

「へえ」

「だから生息地は禁足地になっていて、召喚士が近付けないようになってるんだって」


 新情報に喜ぶところか、契約させる気のない設定に怒るべきか。


「それ、自国に属するなら許そう系だよね」

「そうだろうね。召喚士は廃れてほとんどいないって聞くけど」


 どこかの国が秘匿して、召喚士がいなくなっても幻獣の生息地だけは秘匿し続けているということだ。

 図鑑にも載せず、情報の欠片も与えず。


「…まさかバハムートさんのせい?」

「かもしれないね」


 あの《七つの災厄》め!

 と叫びたくなった。


 夢も希望もない話は聞きたくなかった。






 とりあえず検証クランのシラベに新情報をメールしておいた。

 その館長と仲良しだね、と返されたが誤解である。情報源として利用した対価として「待ってー、帰らないでー」と散々まとわり付かれるのを毎回振り切って逃げているのだ。


 強い司書さんがいない時は。


 ちなみに今日はいなかった。

 椛が行くと8割いない気がするくらい、レアなお助けキャラだった。


 図書館からの脱走を成功させた後、椛はぷらぷらと通りを歩いて目についた喫茶店に入った。前に来たことがある気がする店だ。


 不味かったら覚えているだろうが、美味しくても覚えているだろう。つまり普通の店だった可能性が高い。


 それでもガラス越しに見た客の食べているケーキが美味しそうだったのだ。


 注文してから、椛はちょっとだけ掲示板を見た。最近平和だから、掲示板も平和だろうと勝手に思い込んでいた。


 少し眺めてそっ閉じした。

 椛とは違う世界は戦争が続いているようだ。


 店員が紅茶とケーキを運んで来たので、許可をもらって召喚獣を呼ぶ。月詠(つくよみ)はケーキを見てブルーベリーを狙ったが、椛が小皿にベリー系各種を乗せて出せばそちらに夢中になった。


「なんか月夜の森でミーティアに出会えた人たちがいたらしいんだけどね」

「みゅう」


 月詠はブルーベリーをひと粒抱えて眺めながらも、そうなんだーくらいのテンションで応えた。


「争奪戦をしてる間にいなくなったんだって」

「…みゅ?」

「そっと消えたくなる醜さだったのかな…」


 椛はケーキを一口食べる。アルヴィーナ王国で良く手に入るブルーベリーがメインのケーキだが、ジャムの層もあってなかなか美味だ。


 美味しいケーキを食べながら想像したくない光景は、思い浮かべないようにした。


 月詠は何か思い当たったのか、納得してからブルーベリーに目を戻していた。もうどうでも良くなったようだ。


「隣街でストロベリーを買いたいな。美味しいからすぐなくなるんだよね」

「みゅっ!?」

「うん、月詠にもあげるからね」


 月詠は今すぐ行こう!という様子だったが、さすがに時間がない。ロウガイに話して後日行くことにした。


 そうして食べ終えて、月詠は送還して店を出た。


「なんでパーティでミーティアを探して回りながら、契約する人を決めてなかったのかな…」


 目の前で争奪戦を始めるような人間と契約したがる幻獣がいるだろうか。

 いるとしてもあのラブリーの化身のアイドル様は、そういうタイプではないと気付くところではないだろうか。


 バトルして痛めつけて契約するものだと考えていたのだろうか。召喚士をメインにしているプレイヤー以外は勘違いしたままなのか。


 世の中には考えても理解できないことが多かった。






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