118プレイ目 迷宮都市バロワ
雷属性の素材は椛の武器に使うだけなので、必要数はすぐに集まった。
迷宮都市バロワのダンジョンについて改めて調べたが、だんだんと迷路が難しくなって複雑さが増すタイプだからか、危険度は表示なしで間違いないそうだ。
危険度の高い場所でバトルの訓練をしたかった椛やクラメンたちは、迷宮都市で先に必要素材を集めてしまう方針になった。
「そういえば、前に来た時は追加素材の話なんて出てなかったような」
「聞き流したんだろ。あの頃はまだ、追加素材を使える生産職なんてトップ層の中でも少なかったはずだし」
「そうじゃの。追加素材は次に新調する時には使えるようになりそうじゃと思った覚えがあるのじゃ」
「思っただけだから、わたしは聞いてなかったんですね…」
前回いっしょに攻略したタグとロウガイの返事に、椛は肩を落とす。そこで聞いていれば、たぶん、椛もやらかさずに済んだ。はず。
未強化の店売り武器を使っていた件は、しばらく引きずりそうな失敗だった。
そんな話をしながら冒険者組合に向かう。今日はタイミングが合ったので一緒に移動して来たが、ダンジョン攻略は別にする予定だ。
フィールド移動を一緒にすると他者の騎獣を愛でられるのが良い。
もちろんヒマつぶしで駄弁るのも良いものだ。
「あ、熊肉のダウナー系お兄さん!」
「熊を獲って来たのはお前らだろ」
「でもお兄さんを見たら、まだ食べてない熊肉専門店のメニューがあったことを思い出した!ありがとう、お兄さん!」
「熊肉を連想されても嬉しくないなあ…」
組合の買い取り窓口の解体担当の職員と再会のあいさつをする。インパクトのある思い出があると、すぐに思い出すものだ。
タグに「真っ先に思い出すのがそれ?」と呆れられ、ロウガイには笑われたが。
受付嬢のほうにも声をかけ、冒険者カードの照合をしてもらう。ランクとレベルを見て、20層あたりの攻略ですねと判断された。
危険度がないのでもう少し先を攻略してみたいが、それも実際に行ってみてから考えることだろう。
「なんかプレイヤーがけっこう来てる?」
「誰だってレベル上げたら装備も新調したくなるだろ」
「武器も防具も追加素材なら迷宮都市産と職人が言うしのう」
組合内にもプレイヤーらしき冒険者の姿がそこそこあった。屋台や露天の並ぶ広場ならもっといるのだろう。
椛は納得しながらも首をかしげた。
「そんなにここの追加素材って優秀なのか」
「その分経験値がアレだけどな」
「そうじゃったのう…」
レベル上げに来た訳ではないが、経験値効率が最悪なのは有名だ。ここは代わりにドロップ目当てに来るダンジョンと割り切る所なのだろう。
ついでにちょっとレアドロも狙うので、また来ることになりそうだった。
ランクB昇格クエストで五層のボスは倒したので、ダンジョンは転移陣で五層から進めることが出来る。
ボス戦はカットして進めるのだが、椛は召喚獣たちとボスと戦ってみた。
「今だとかなり余裕で勝てるなあ、やっぱり」
「あんっ」
「ガウ」
流星と玄幽が物足りなさそうにしている。もっとレベルが低い時に戦いたかったと言いたげである。
「ここは魔物のレベルがだんだんと上がる特殊なダンジョンだから、少しずつ手強くなって行くよ」
なので六層から九層までは騎獣で駆け抜けることにした。騎乗スキルを獲得したおかげで、月牙も活躍できるとちょっと張り切っていたものだ。
流星に乗った玄幽のコンビもいたが、殲滅力を上げるためにブルーと光馬のコンビも召喚したら、ほとんど足を止めずに進めた。
高速飛行できる召喚獣はこういう時に強い。
十層のボスも格下だったので、初見でも問題なくクリアして、11層に進む。
このあたりもレベル差があるのでまだスイスイ進めた。マップが迷路になって来たので、下に降りる階段を探すのに時間がかかったものだ。
だがマップは使えるため、ドロップ目当てで周回する場合はさほど迷路に苛つくことはなさそうだ。
初日は15層のボスを倒して終わりにした。
ここのボスはレベル55だったのでそれなりに苦戦はしたが、初見でクリア出来たのでレベル差というのは大きいものだった。
レアドロは16~19層から現実的なドロップ率になって来るという話だったが、ドロップ率10%くらいなのでそんなに手に入る物ではなかった。
それでもうろついていれば、少しは手に入っているものだ。
「でも転生石の欠片はハズレを引いた気分だなあ…」
犬獣人と猫獣人以外は使わないアイテムもレアドロ枠なので、実際に集めてみるとがっかりした。
必要なのは上位職になる時に必要だという昇格石の欠片のほうだった。名前も似ていて紛らわしい。
「しかも物欲センサーさんのせいで、そっちがたくさん落ちるやつ…」
いつごろ必要になるのか分からないアイテムだが、必要数も分かっていない。とにかく今は少しでも手に入ったらラッキーくらいに思うことにした。
そもそも転職費用のレベル×1万Rなんて持っていない。貯まる気もしない。つまりアイテムがあっても転職できないままなのだ。
それはそれで辛い事実だった。
そうして進んだ20層はレベル60のボスだったので手強かった。
周回して素材を集めたいのは推奨レベル60の21~24層なのである。出来ればもう一つ先に行きたいくらいだ。
「という訳で19層あたりの追加素材で間に合わせの武器を作ってもらったー!」
「どのくらい攻撃力上がった?」
「倍とは言わないけど、1.7か1.8くらい…いや、それまで使ってたのがひとつ下のランクだったけどさあ!」
「大事だよな、追加素材」
「デスネ」
新調する予定だから繋ぎでしかないが、他のプレイヤーたちもメイン武器として使っているランクの武器である。
しかも迷宮都市に行かないで作るなら、追加素材の関係でやや落ちる性能になるものだ。
おかげで益々やらかした件がツラくなったものだ。
ダンジョン前広場にいた鍛冶師プレイヤーに作ってもらって、引き取りに来たついでに見て回っていたところでクランのメンバー数人に会ったので、少し一緒に歩く。
生産職も需要を見込んでけっこう来ているようだ。
「ちゃんとアンテナ張ってないと、生産職ってできないイメージ」
「情報はある程度集めるだろ、どんなプレイでも」
「掲示板で情報を集めないのは縛りプレイだぞ。自分で取説とか隅々まで読むならともかく」
「そんなもの、必要になった時しか読まないな」
MMOではやはり、その時に話題になっている内容は知っていたほうが良いものだ。むしろ知らないと大損するレベルの情報だろう。
でも椛は見るのが嫌いなので、大損していたのだ。
「今は何が話題?」
「まだ暗黒街のネタが多いんじゃないか?」
「ランクAになってから裏ルートに入る方法とか、暗黒街にしかない暗殺者組合とか邪神教団と接触する話は見たな」
「闇組合ってのもなかったっけ?」
どこかで聞いたなと思ったのだが、クラメンたちは「知らない」という。
仕方がないので検証クランに聞いてみた。
「王都カナリア特有の組織らしいよ。そういえばあそこで聞いたんだっけ」
「じゃあカナリアのシナリオがらみか」
「だろうな」
分かりやすいフラグである。
しかしそのフラグをどうすればいいのか分からないから進まないのだろう。
「生産職も暗黒街に行くと、また独自の展開になるってさ」
「どんな展開?」
「贋作作りとか、そういう方向の」
「つまり裏オークションにはそういう…」
「ああ、なるほど」
暗黒街は危険がいっぱいというか、10割だまされそうな話ばかりだ。
椛は大人しく表ルートで遊びたい。自称闇属性だが、悪属性ではないのである。
「でも暗黒街に行くなら王都カナリアかな!」
「入口が見つからないって話じゃなかったっけ?」
「ああ、なんかおかしいもんな、あそこ。街の中にゴーストタウンがあったり、街の外に貧民街が出来てたり」
え?入口まだ見つかってないの?ともう一度検証クランに聞いたら、見つからないと愚痴られた。
探しものならハムスターだよ!と適当な助言をしてごまかしたのだった。
1~4 推奨レベル40
5 ボス層 レベル45
6~9 推奨レベル45
10 ボス層 レベル50
11~14 推奨レベル50
15 ボス層 レベル55
16~19 推奨レベル55
20 ボス層 レベル60
21~24 推奨レベル60
25 ボス層 レベル65
多分これで合ってるハズ…




