116プレイ目 ラヴィナ
「なんだろう、ジューンブライド…」
「ウエディング衣装しか報酬にないイベントって、誰得なんだ…」
新しいイベントの告知が来たが、ウエディング衣装しか報酬にないイベントだった。
ドレスなどが好きな女性プレイヤーたちは張り切っていると聞くが、椛は全くやる気が起きなかった。
「ウエディングドレスでドレスコードのあるレストランは入れないよね…」
「入れないことはないだろ。恥をかくだけで」
「それを入れないって言うの!」
ただのドレスだったら椛も欲しいが、ウエディングドレスはいらない。ゲーム内結婚とか興味がない人種なので。
今日はラヴィナの冒険者組合でクランのメンバー数人と会った。
イベントの告知来てたなー、と酒場のほうで確認していたところだ。
「イベントプランナーとか、プロを呼んで欲しいレベルで分からない…」
「そのプロ、ゲームには詳しくないだろ」
「花とかなら飾れるし、園芸家あたりも喜んだだろうに」
「まあ、何の花か知らなくても飾れるならな」
「花輪とか、結婚式場っぽい花じゃなければ」
いつか家を建てたら飾ろう、と思えればまだやる気が出たかもしれない。
でもウエディングドレスはいらない。
「なんかたまにゲームの中だからって変な恰好でも気にしない人はいるけど、NPCたちの視線のほうがツライと思わないのかな」
「プレイヤーのほうがゲームだしってスルーしてくれるよな」
場違いな恰好だと狂人でも見る目を向けられるものだ。NPCたちのほうが反応がストレートなのである。
「それとも夢の夢幻軍団にウエディングドレスを着せなさいってこと?」
「…12種類あるな。お色直し用か?」
「男のも12種類あるな。イケメンNPCにプレゼントする用か?」
「夢幻軍団の男ver.じゃねえの」
使い途を考えてみたが、それしか思いつかなかった。
結論、やっぱりいらないで終わった。
イベントはスルーで、と思ったが魔物を倒すとウエディングポイントが勝手に貯まって行った。
もらうと逆にイラッとするポイントだが、レベル上げで魔物を倒したいので気にしないようにするしかなかった。
「でもさ、魔物を倒したポイントで交換したウエディングドレス、って字面が酷いよね」
「最強の嫁か?」
「生産職との格差」
お料理をたくさんして貯めたポイント、との格差である。嫁にするなら椛も料理人のほうがいい。
「まあ、イベントはもういいとして、目標のレベル60になったから、どうしようかな」
「レベル上げ強化期間は当分やらなくていい気分なのは分かる」
「闘技場に戻る」
「オレも」
まだイベント期間中だが、レベル60達成メンバーで相談してみた。
椛以外は闘技場に帰るそうだ。
「わたしも行きたい…でも鬼女…」
「レイドの準備でもしたらどうだ?海でバトルなら雷属性だろ」
「雷属性か。どこで素材が手に入るんだ?」
「サンダー・エレメントさんの故郷だろ」
雷属性の素材の話を忘れていた者ばかりだったので、覚えていた1人以外は「そうだった!」となった。
あんなにお世話になったのに。
「あのあたり、推奨レベル50くらいだったっけ?」
「そのくらいのダンジョンもあった気がする」
半年以上前に聞いたきりなので、うろ覚えだった。ないことはないだろう。
「装備を新調するなら、迷宮都市のダンジョン素材も使えるんだっけ?レアドロじゃないほう」
「そういう話だった気もするな」
「まだ闘技場に帰れないのか…」
「あんまりレベル上げがはかどってなさそうだし、レイドがいつになるかも不明だよ」
椛たちは早いほうである。
攻略クランは除く。
先に闘技場に戻ってバトル三昧を楽しんでから、素材集めをしても間に合うだろう。
バトル三昧を始めたら一生とまらないなら、素材集めを先にするべきだが。
「そもそも予想でしかないし、レイドとは言ってないんだよな」
「レイドの発生方法も分かってないだろ」
「レベル60以上にしてから、西の大陸に行く船に乗れる強さは手に入れた!とかアピールしてみる」
「船が駄目なら騎獣があるじゃない、と特攻してみる」
きっと検証クランが頑張ってくれる。
他力本願に思っておいた。
とりあえず次の目的が出来たので、レベル60になった者から王都ヴィスタに向かった。
一時増えたプレイヤーはすでに散ったようなので、王都も静かになっているだろう。
王都に向かう前に椛は、はちみつがドロップする魔物を狩りに来ていた。
それなりに貯まっているが、いくつあっても嬉しいアイテムである。
推奨レベル40なのでバトルは楽勝だし、採取もはかどる。今は常時召喚枠の流星と玄幽、ミルクとブルーと月詠と光馬のチーム・アイドル様だ。
仲間が増えたので、こういう時は7枠目もフルに使っても二陣が控えている。次はチーム・忍者とかそんな感じで。
「アイドル様より天使様のほうが普遍性があるのでは?ミルク、ありがとう」
「みゅっ!?みゅうみゅう!」
ミルクが採取してくれた物を受け取りながら軽口を叩くと、月詠が怒ってから考えていた。そしてミルクの後をついて回って、なでなでされている。
ミルクはけっこうモフラーだと思う。
玄幽もそれなりにモフラーだが、今は流星とどちらが多く魔物を倒せるか競っているようだった。
光馬にライドオン中のブルーは、飛び回りながら採取もしてくれる。
もちろん月牙もいるので大所帯だ。
「そういえば魔神シリーズとかもいるんだっけ…ノーヒントだけど」
『召喚術入門』にもまだ情報は残っているが、入門書のくせに推奨レベル90とか書いてあるのでタイトル詐欺でもあった。
当時はこんなにレベルが上がらないとは思っていなかった気がする。だから読み流していたのだろう。
「教えてくれた研究所から次のクエストが来てるかな…ヒントが増えてないかな…」
王都に行ったらやりたいこともけっこうある。暗黒街に行くなら大都市にしたいな、と思ってまだ行っていないのだ。
さして用もなかったから。
でもお金ないし、お金貯まったら召喚獣専用スキルブックを買いたい。
いや、装備を新調するための金…!
今ごろ相場を調べて、椛は頭を抱える。
しかも防具は玄幽の分も作る必要がある。
金策したいのに、主どんの森を占拠している連中が…!
「そうだ、イベントのウエディング衣装が高く売れる可能性が…!」
今回は非売品ではなかった。
しかし売値1R固定だった。
金にもならねえ!と叩きつけたい衝動にかられたものだ。まだ交換してなかったけど。
「検証クランに聞いたら、裏カジノだよ裏カジノ、とかぐるぐるした目で言いそうだし…アイドル様のステージでお金取れるかな」
「みゅ?みゅっ!」
月詠が「ぼくのステージはお金に替えられない価値があるよ」と言ってそうなジェスチャーをしている。
しかし一度でも金を取ると、「金なら払う」とはした金で喚く害悪に付きまとわれるだろう。
チケット1枚分の金でドヤっているアホは、ステージの建物を丸ごと借り上げて全ての費用を払った奴にだけ言えるセリフだと弁えろ、と言いたい。
まあ、そんなことをされてもドン引きするが。
「金策…誰か詳しい人いないかなあ…」
召喚士は金のかかるジョブだった。
何ヶ月レベル上げしてるの…?と聞かれそう
作者の人、深く考えてないと思うよ
(本人が言ってはいけない…)




