113プレイ目 ラヴィナ
椛は【ダーク・エレメント】と契約した!
予定通り闇玉と名付けた!
契約シーンが全面カットになったが、何ひとつ面白いことも目新しいことも起きなかったので仕方がない。
せっせとレベルを55まで上げて、ダンジョンをクリアして、洞窟フィールドの奥まで行って、闇玉と契約して──洞窟の最奥にいたエリアボスに負けて。
むきになって3回ほどアタックしてクリアしたものだ。そちらに気を取られておざなりになってしまっただけである。
ダーク・エレメントはサンダー・エレメントと色違いで黒く、シャドーマンのようなモヤモヤした闇を纏っている。
雷玉同様に表情は分からないが、感情がない訳ではない。でも意志の疎通は困難だ。
霧影のような忍者好きという個性があるほうがコミュニケーションを取りやすいのだと、椛も気付いた。
とりあえず忍者ネタを振れば乗って来るし。
「エレメント系の中での格好良いランキングで上位に入るはずなんだ、ダーク・エレメント」
「サンダーのエフェクトも格好良いけどな」
「闇属性だから気が合うはずなんだ」
「お前の性格で闇属性って言ってたら、陰キャたちが怒らねえのかなって毎回思う」
タグの掲示板だと書き込みにくい本音に、椛はそっと目をそらした。陰キャの人たちと気が合ったことは、ほとんどない。
でも光属性には近付きたくないのも確かだ。
椛はタグと街を歩きながら、やはり掲示板では言えない本音をこぼした。
「光属性って自分が正義だと思い込んでて自分の図々しさを理解してないから、話にならねえ…」
「ああ、そういう…」
「相手のアイデンティティを踏みにじっておいて、そんなものより素晴らしいものがこの世界にはたくさんあるよ!って臆面も無く言い放つのが光属性…」
「善人のつもりの1番面倒なヤツ…」
ラノベの主人公はだいたい光属性だが、作者が被害者を被害者として書いていないので、なんか感動のストーリーに仕立て上げられている。
深く考えなければ面白いとは思うが、好きかと聞かれたら「ダークヒーローが好きなので」とごまかしている。
「いや、召喚獣自慢スレってそういうタイプだったか?」
「わたしはスクショと動画が見たいのであって、奴らのやり取りなんてほぼ読んでないんだ!和やかにマウント取りしてる所なんか興味ないし!」
「自慢だし、多少はあるだろ…」
「とりあえず褒めときゃ満足だろ、みたいな空気、あると思います…」
「褒め殺し合戦か…」
中には普通に可愛い性格のプレイヤーもいる。それは椛も気付いている。
でもマウントを取りたいタイプも入って来ていて、進んで関わりたくなくなっていた。
「最初の頃は、本当に可愛いやり取りしてたんだ…」
「確かにな…」
「もふもふさんは珍しいほうだし…」
真のモフラーはあんまり掲示板に現れないプレイヤーだった。
椛とタグが歩いているのは、チャイリンではなくラヴィナの街である。
推奨レベル55のダンジョンはクリアしたし、目的のダーク・エレメントと契約も果たした。
次は推奨レベル60危険度Eのダンジョンというレベル上げしやすい場所を探したら、近くのラヴィナにあったのだ。
しかもはちみつが手に入るフィールドにも近かった。
一緒にチャイリンでレベル上げをしていたメンバーも、他をわざわざ探す理由もなかったのでみんなこちらに移って来ていた。
はちみつは美味しいだけではなく、単価も高めで良い収入になるし。
「あ、いた。はちみつクッキー下さいな」
「いらっしゃい。品質はやっと8になったけど、これで良いかしら?」
「充分だよ」
「NPCの店で買うほうが多かったけど、やっぱプレイヤーメイドのほうが美味いよな」
2人が来たのは屋台の出ている通りだ。
以前は王都にいた料理人クランの人たちが、こちらに来ているのを発見したのである。
王都に人が殺到して居心地が悪くなったこともあり、騎獣を獲得したいという目的もあったのでこちらに来たそうだ。
スイーツメインで作っている、椛がフレンドになって欲しい女性プレイヤーたちでもある。
けっこう序盤からの知り合いではあるが、逆に今さらフレンド申請しにくいとただの客のままだが。
今日は前回はちみつを売ったので、はちみつクッキーを買いに来たのだ。依頼して作ってもらった訳ではなく、作った物の一部を買わせてもらうだけだ。
「うん、美味しい。はちみつがフワッと香る感じがいい」
「そっか、味の違いというより、香りが美味いのか」
さっそく食べて、感想を一言告げる。
椛の舌もそこまで敏感ではないので、甘さの違いはそんなに感じなかった。やさしい甘さ、とテンプレな感想にしかならないし。
「スイーツは見た目と味と香りだよ。他に何かある?」
「スイーツ以外も同じじゃないかしら」
「カレーは匂いだろ。あと味」
「まあ、カレーの見た目はね」
カレーは西の大陸にあるらしい。
あと中華も西の大陸だそうだ。
「ラーメン…」
「日本人のソウルフードがことごとく海外…」
つい西の大陸に思いをはせたが、手もとにあるのははちみつクッキーである。
「あ、騎獣は推奨レベル30だから、代理バトルの費用はそこまで高くなかったよ。1人バトル1回だけだし」
「そうだったの?ハムスターのほうと同じくらいかかるのかと思ってたわ」
「あっちはレベル50だし、遺跡けっこう広いから」
「魔法玉の代金も別に取られる可能性もあるからな。依頼前に話し合い推奨」
生産職がハムスターと契約するのはなかなか大変だった。
椛がフレンド価格で付き合うよ!と言いたいが、フレンドではないのだ。残念だ。
それでも一歩前進しそうと嬉しそうに笑う料理人に、光属性って本来こういう人のことなんだよなあ、と思ったのだった。
「レベル63が5体とか、勝てるかー…」
「そっちもかー…」
ダンジョンにレベル上げに来ている椛は、転移陣のある入口のセーフティエリアで果てていた。
そこにクランメンバーが6人、死に戻り転移して来た。
レベル60になったら、55のダンジョンより殺意が高くなった気がしているところだ。
「なんか数が増えただけで難易度が倍になった気がする。敵のパーティが5体出て来るのは前からあるけど!」
「探せば最大3体のダンジョンもあるのかな」
「あるはずだけど、探し方が分からん」
掲示板のまとめスレにはそこまで書いてなかったし、冒険者組合の資料にも書いてないはずだ。でも今は欲しい。
「種族によってサイズの設定あるだろうし、それでパーティの数が決まるんだと思うけど…名前見ても分かんねえ…」
「検証クラン、さすがにそこまでやらないよなあ。やるのかなあ」
「検証クランは暗黒街でフィーバー中じゃないの?もう終わった?」
「オークションの出品リストの名前を見てるだけで楽しいって、日参してるらしいぞ」
「貴族街にある合法オークションは、出品リストすら見せてくれないから…」
アイテムリストとかが好きなタイプの集まりが検証クランだ。データが増えてウハウハらしい。
それがなければ、魔物のサイズだの種族値だのというデータ作りも好んでやるはずなのに。
「アイドル様のバフは使わないけど、欲しい人いる?」
「…すごいショートカットになるのは分かる。でも負けた気がする!」
「チート使ったみたいでモヤるからいらねえ!」
「でも歌って踊るのは生で見たい!」
そんな訳で、アイドル様のオンステージを1回見てからダンジョンに再突入した。
街の中と違ってダンジョンの入口には他のプレイヤーがいないので、気楽に召喚してフレンドたちと愛でられて良い。
常時召喚枠で召喚していた流星も月詠に合わせて飛び跳ねていたので、とにかく可愛かったものだ。
光属性=ポジティブ
闇属性=ネガティブ
というイメージで書いていますが、あくまで個人の意見です※注釈




