112プレイ目 チャイリン
大晦日だよイースター!
モアイ像からバニーちゃん!
という内容で2025年が締め括られるようです。
きっと2026年もそんなノリなので、来年もよろしくお願いします。
イースターエッグを集めるイベント前半はリアルの期間で1週間だった。
イースター当日から残り1週間がイベントの後半戦になる。
椛は初日に街で探した以外は、ダンジョンでのレベル上げに疲れた時に気分転換でフィールドで採取のついでに探したくらいだ。
クランのメンバーたちもそのくらいの熱意で、いくつ集まったか聞いたら同じくらいの数だったものだ。
ロウガイの推測通り王都ヴィスタあたりは激戦区で、掲示板は荒れ気味だったらしい。
もちろん椛は召喚獣自慢スレ以外は見ていなかった。
そして迎えたイースター当日。
集まりやすいので街のオープンカフェにクランのメンバーとロウガイも集合していた。
椛は痛ましい事件のせいで睨まれているが、このあたりの森でも良く採取できるブルーベリーとラズベリーを賄賂代わりに贈ってご機嫌取りをしておいた。
「1回のアヤマチがあとを引くんだよ…」
「ええ、言葉には気をつけるわ…」
「1番NPCと上手く付き合ってるのにな、椛」
「失敗から学んだタイプだよな、おまえ」
学んだのにたまに台無しになる。
主に性格のせいなので、ゼロにするのは難しかった。
「今日は大人しくしてる…」
「それで、このイベントはどうする?やってみないと分からないのよねえ」
頼闇がクランマスターらしく意見を聞いた。やっとイベント後半の詳細が公開されたのだ。
「集めたモアイ像でストーンサークルを作ろう、じゃないんだよなあ…」
「モアイ像でストーンサークルってなんだよ…」
「イースターエッグからモアイ像の時点でトンデモ系だと思ったけど」
運営のイベント企画部だかなんだかの人たちは、どんな思いで考えたのか。
全く想像もつかない。
「ストーンサークルからウサギが召喚されるから、みんなで協力して倒してね。ここでイースターのバニーちゃんだよ、頼闇!」
「アタシの求めるバニーちゃんじゃないわ!」
バニーガールは出て来ないだろう。たぶん。
「倒すとスロットが出現して、イースターエッグの数を倍増してくれるぞ!最大10倍の大チャンス!」
「10倍の出る確率はいくつだ?いまだに魔物のタマゴが一度もドロップしてないオレが引き当てられるのか?」
「わたしも天然物の魔物のタマゴはまだ見てないな…」
「おまえは伝説を2回も発見してるだろ」
「俺は…あ、なんで3個あるんだ?1個は正月のだけど」
魔物のタマゴって本当にドロップするものだったんだな、とだけ思った。
欲しい訳ではないので、泥運を羨む声がちょっと上がっただけだ。
「そもそもイースターエッグを増やす旨みがあんまりないのがのう…」
「だよなあ。モアイ像と交換で手に入る限定アイテム、手持ちで一通りは交換できるし」
「たぶん戦闘職には装備品が目玉って配分なんだろうけど…」
「生産職は限定アイテムくらいは手に入るから満足できるだろうし、バランスは悪くないのよね」
限定アイテムはイースターらしい可愛いデザインの家具や見た目装備ばかりだ。複数欲しい物があったら少し頑張る必要はありそうだが、街で探すだけで足りるだろう。
問題は限定ではない武器防具のほうだ。今回はアクセサリーはなかった。
「なんでここでフィールドボスの限定装備…これ、フィールドボスの素材で強化しないと使えないって話じゃなかったか?」
「素材が交換出来たら考えたのに…」
「しかも転売対策されて、金にもならないレアアイテム…」
転売できるのなら、オークションに出品できる程の激レアアイテムだった。
売れないので、悲しい激レアアイテムだが。
「コレクターが喜ぶ」
「コレクター以外はどうしたら…」
「デザインは格好良いから家に飾ろう」
「家がないだろ、これ売って家建てたい」
椛も余ったモアイ像で双剣を交換したら、もう欲しい物がない。
ウサギのスロットで増やしてまで交換する物がないのである。
「あとは、そう。ウサギの経験値効率…」
「あー、それならバトルするモチベになりそう」
「そんな都合の良いことはないと思うがのう…」
きっとないのだが、一度はバトルしてみて改めて考えてもいいだろう。せっかくのイベントなのだから。
イースターエッグからモアイ像が出現する。
ガイドラインが出るので、そこに合計で10体のモアイ像を並べて、ストーンサークルを作った。
「絵面が良い」
ついカメラで撮影してしまった。
そんな椛をビミョーそうにクランのメンバーたちが見ていたが、ストーンサークルから煙が立ち昇り、イースターのウサギが現れた。
「…ぬいぐるみが欲しいー!」
「なんでここでこんな可愛いウサギを出した!?」
現れたウサギは、人類の半分くらいは籠絡できそうな可愛いデザインだった。
召喚獣にでもして欲しい。
戦闘力は低かったので、気にしないメンバーが何回か攻撃したら倒されていた。
椛はただウサギの撮影をしていただけで終わった。
「経験値はなし──あ、あれがスロットか」
ウサギがバタンキューと退場演出を終えると、その場にスロットマシンが現れた。遊園地にありそうなポップなデザインで、カジノにあった大人向けとは別物だ。
そしてもちろんスロットは最低の2倍で止まる。いや、最低でも2倍にしてくれるのだから、美味しいといえば美味しいイベントなのだろう。
「2倍って、手持ちのタマゴが2倍なのか…無限に増えそう」
「1回に10個使っても、かなり増えるよな」
「太っ腹アピールかな…」
間違いではないのに、なんか虚しい。
欲しい景品のないイベントのせいだろう。
「コレクターじゃなくてもコンプできそう」
「いらないけど、やっておくか」
「まあ、記念に」
未強化のフィールドボスの武器は、ボスがレベル50前後のため弱くはないのだ。強化するアテがないから、いらねえなと思ってしまうだけで。
フィールドボスなんて、何かの間違いで頼闇たちが一度遭遇したことがあるものの、ほとんど目撃情報のない都市伝説扱いの存在なのだ。素材回収どころの話ではない。
「たくさん集めて最終日にやるのが最高効率だと思います」
「今日やらないと、きっと忘れたまま終わるぜ…」
「だよなあ」
やる気が出ないままイベントを消化した。
限定アイテムは可愛いし、悪くはないイベントだったのだ。
そんな気分を上書きするくらい、虚しいだけで。
イベントの後半は、他のプレイヤーたちも荒れている人はほとんどいなかったらしい。
穏やかなイベントになって終わった。
話題になったのはウサギが可愛い、くらいだろう。
おかげで検証クランは暗黒街の調査に集中できたようで、一応発見者として椛に確認してから掲示板に載せていた。
「裏カジノとか、頼闇たち好きそう」
「やめておけよ、借金地獄に落ちそう」
「失礼ね!カジノが好きなんじゃないの!バニーちゃんが目当てなの!」
「うさ耳を大量交換して、配って歩けば?」
ちょうどイベントの交換アイテムに、イースターバニーセットという見た目装備がある。そのセット内にうさ耳が入っているのだ。
「あ、あの子もその子も、バニーちゃん…」
「使うヤツがいるとは思えない」
「暗黒街の酒場とかならワンチャン」
暗黒街にある酒場は、水商売の女たちがいるオトナの店だ。あとホストクラブ。
もちろんこのゲームは全年齢対象なので、ドラマなどで出て来る雰囲気を楽しめる程度の店らしいが。
プレイヤーの実年齢で酒の中身も変わる。未成年ならジンジャーエールなどになるそうだ。
「メイド喫茶ならぬうさ耳喫茶とか?」
「ぼったくられそう」
「猫カフェがいいなあ。あの正月に出た猫又の魔物がたくさんいるカフェ」
「犬派のわたしもそれは行く」
どこかの生産職のクランが店を出さないものか。もちろん犬カフェならもっと入り浸る自信がある。
──という話を冒険者組合で会ったクラメンと冗談で言い合っただけなのだが、頼闇はイベント最終日までうさ耳を回収しまくったらしい。
いつかうさ耳喫茶を開くために。
ストーンヘンジではないですよ
(書いてる人がちょっと勘違いしてた)




