106プレイ目 エーラ
Merry Xmas!
ブリュマルク共和国の国境近くにクストー王国のエーラの街がある。
この街の近くの推奨レベル30の草原と森の辺りに、幻獣の群れが棲んでいるそうだ。
他のプレイヤーが見つけた情報を頼りに椛は仲間探しに来ていた。
幻獣の情報は今のところ、『召喚術入門』と『幻獣図鑑』の2冊に載っているものと、冒険者組合の救援クエストで出会えるものがほとんどだが、ここは偶然プレイヤーが見つけたという話だ。
そして召喚士以外も契約できるので、サンダー・エレメントと同じくらい気軽に契約して召喚術のスキルを獲得できる幻獣でもあった。
「…他には誰もいないね」
見つかってから1ヶ月くらいになるので、今ごろ来ているのは椛だけらしい。
他にいてもブッキングするほど混雑する場所ではなさそうだ。
主の森はいまだに人でごった返しているらしいが。
椛は草原でのんびりと採取しながら、先日仲間になったばかりの霧影と、流星と月牙、そしてミルクと過ごしていた。
魔物が出ても流星がじゃれるように飛びかかると終わるので、戦闘力は必要なかった。
月牙はゆったりと寝そべり、霧影はモヤモヤと揺蕩い、ミルクは薬草などを摘んでは持って来てくれる。
よく考えたらミルクとミストは名前が似てたので霧影で良かったのだ、と思えて来た。まだちょっとしつこく覚えているが。
「植物図鑑を買ったせい…じゃなくて、おかげで鑑定の内容が増えたなー」
名前と短いフレーバーテキストくらいで充分だったのに、細かい効能だの代表的なレシピだのが表示されるのだ。
鬱陶しいと図鑑を売った人の気持ちがちょっと分かって来てしまった。
「あ、これは香草か。レモングラス…聞いたことがある気もする」
椛はレモンが好きではないので、レモンの香りのハーブもあんまり嬉しくない。料理もしないし。
でもヒマだし売れるし、と一応採っておいた。薬草よりたくさん生えているせいで、いらない草がたんまり採れた気分だ。
「…森に入らないと駄目かなあ」
探している幻獣は、一定の範囲内を集団で移動しているらしい。
下手に動くと行き違いになるので、草原で待つのが1番確実だという。しかし運が悪いと1日待っても出会えないらしい。
光っているから近付けばすぐ分かるという話だが。
採取も飽きて来た椛が誰かチャットに応じてくれないかなと暇つぶし相手を求めてメニュー画面をいじっていたら、クランチャットに何人かいた。
[椛がレベル55の魔物に負けたって愚痴ってたから、危険度に気を取られて格上と戦ってなかったなと思い出しただけなんだ]
その話はチャットの消滅と同時に脳内からも消去しておいてくれないかな…と思う。
余計なことを言ったものだ。
[でも攻略組はレベル上がらないからってシナリオイベント探しをしてるんだろ]
[何を嗅ぎ回ってるんだって不審者ムーブかましてる話なら聞いたな]
[帝都にいた連中は関係改善クエスト再びって聞いたな]
そんな話の流れだったっけ、と椛も思い出す。英雄願望もあったらしいけど。
[攻略組はどうでも良いけど、経験値がおかしいんだって。レベル51に上がったらまた獲得量が変わってたんだよ]
[頑張って、検証クラン!]
[きっとこの謎を解明するのは検証クランだ]
[謎が解明されなくても経験値が美味いなら格上狩りしてレベル上げするだけだし]
[それもそうだな]
良く分からないが、自分よりレベルの高い魔物を狩ると経験値が美味しいらしい。
椛も後で試してみようとお得情報に頷いていたら、森の奥から徐々に光が溢れて来た。
はっとして、目的を思い出した。
「あ!ピカーッてなるから目を閉じて!え?霧影は影の中に入れるんだ…そうなんだ…」
月牙は寝そべったまま目を閉じているが、流星はぴゃっと伏せて目を固く閉じた。ミルクは森に背を向けて、両手で顔ごと覆っている。
みんな反応が可愛い。
椛は用意して来たサングラスをかける。
契約を持ちかけるのだから、目を閉じていては始まらないのだ。
「サングラスしてても眩しい…」
1体ならたいしたことがないそうだが、群れで移動しているのだ。
発見者は「目がーっ!目がーっ!」と転げ回ったらしいので、サングラス必須だった。
探している幻獣の名前は【ブリリアントホース】という。
ブリリアントに輝いていて、ちょうど小妖精が乗るとぴったりのサイズの馬だ。
光属性なので白いはずだが、ちょっとレモンイエローっぽい。
椛はこれはキツイ、と思いながら急いで群れの中から1体に契約を持ちかける。
特に選んだ訳ではなく、なんとなく近くにいた個体である。
その1体は止まったが、他の幻獣たちは宙を駆けて行ってしまった。馬だから駆け抜ける速さがすごいので、うっかり見送った人の話もある。
「え、いいの?ありがとう」
交渉しなくても契約が成立していた。かなり気さくなようである。
「名前は、あ、オスなの?なるほど」
かっこいい名前にしてくれたまえ、と言われている気がした。
椛はサングラスをはずして、流星たちにももう大丈夫だよと声をかけながら考えて来た名前を出す。
「アーサーと光馬なら、どっちがいい?他がいい?」
男の子用は2つ考えて来たのだ。本命はアーサーである。
先日、円卓の騎士モチーフの騎士たちに会ったから。
しかし馬の好みは光馬のほうだった。
みんな漢字の名前が好きね、と言いたい。
だが本人の意思を尊重して光馬にしておいた。
「伊賀甲賀みたいな名前…」
まさか馬の世界でも忍者が人気なのか…?
影の中から出て来た霧影は好みだったようでご機嫌だ。
光馬もだんだん「にんにん」と言っているような気がして来た。
気のせいであって欲しいものだ。
霧影と光馬のバトルスタイルを見ながら、育成計画を練る。
黒いモヤモヤことシャドーマンはその霧のような姿で素早く動くが、それ以上に影の中に入ってしまえばほぼ無敵だった。
もちろんずっと影の中にいられないし、影の中から攻撃できる訳でもない。
だが影から影へ転移できるようで、回避手段として期待したい。
星影と同じく奇襲を得意とするタイプで、基本は物理攻撃のようだが影属性の魔法も少し使う。
むしろ物理攻撃…?と困惑したが、そういう能力らしい。
光馬のほうは光属性の魔法アタッカーだった。高速で空を駆けて魔法を放つ。
小妖精と似ているし、属性違いなので使い分けて行けそうだ。
どちらも人間は使うハードルが高い属性なので、それだけで戦術が広がるだろう。
契約したてだと召喚獣はレベル1なので、少しレベル上げもして行く。
CTがあるため、霧影とミルクの代わりにブルーと月詠を召喚した。
フルパーティにすると経験値の分配が減るので、今回はこのメンバーだ。
「みゅっみゅーう!」
「なんで光馬を見て興奮してるの?」
ブルーが光馬に近付いて自ら乗せてもらっているのはともかく、月詠が目を輝かせて大歓迎していた。
聞いてみれば、歌って踊る真似をして、しきりに光馬を示している。
光馬にも伝わったようで、月詠の周りをキラッキラしながら飛び回り出した。
「アイドル様のステージを輝かせる仲間…」
「みゅう!」
光馬もまんざらではないらしく、月詠の背後でポーズを決めていた。ブルーもノリ良く合わせている。
アイドルグループを結成しなきゃいけないのだろうか、と思いながらレベル上げをしたのだった。
光っていて忍べないのでNINJAだろうか…




