104プレイ目 レイル
人間用のスキルブック屋もあるはずですが(本文中に書いた覚えがないけど…)ここは普通の本屋さんです
目当てのひとつだった騎乗スキルを覚えた椛は、次の目的地について軽く調べながら、帝都レイルでやり残していたことを片付けることにした。
もっと早くに来ていても良かったのだが、うっかり忘れていただけだ。
ランスロットの前で叫んで思い出したとも言う。
「おー、ここだここだ」
「ガウ」
見つけた店は半分は本屋だが、残り半分は召喚獣専用のスキルブックを扱う珍しい店である。召喚士なら見逃せない。
今日は玄幽と買い食いしながら歩いて来たが、スキルブックを見ている客はいなかった。
中に入って店主に声をかけつつ、商品を確認する。聞いてはいたが、お高い。
「あ、これだ。カタナの技を使えるようになる刀術スキル」
「ガウ!ガアガア!」
「はいはい、買います買います」
装備は人間用を使えるのに、スキルブックは使えなかった玄幽にようやくカタナを十全に使えるようになるスキルを覚えさせられる。
でも人間用よりひと桁高くて、ため息がこぼれそうだ。
玄幽がうるさいので先に買って覚えさせた。武器を振り回しそうだったので、送還してしまった。
あとでご機嫌取りかな、とますます気が重い。大金を使わされたのに。
「あ、騎獣サイズの召喚獣を呼んでもいい?使えるか確認したいから」
「他のお客様の邪魔にならなければいいですよ」
玄幽は騒いで注目を集めてしまったが、迷惑行為とはみなされなかったようだ。
ほっとして流星を召喚した。
「騎獣…?」
「伝説の銀狼だよ」
「あんっ」
店主は流星を眺め回してから、それならと1枚の紙を取り出した。スキルのリストになっているらしい。
「古い文献に載っていたものを写したリストでして、伝説の銀狼が使うスキルだとか」
「おお…!」
見せてもらっただけで、流星のステータス画面がポップして更新情報を表示して来た。
覚えるスキルのリストと、覚えさせる専用アイテムの名前が載っている。
「…あれ?これもしかして、激レアアイテムばっかりなのでは…?」
「そうですね。レベル80とか90とかのダンジョンやフィールドで入手するものが多いみたいですよ」
愛狼の育成が果てしない。
何も買えなかったが、情報は入ったので来て良かったのだ。きっと。
椛は店主に聞いてから、月詠も召喚した。こちらも伝説の幻獣らしく、専用アイテムが必要だった。
流星と同じようにスキル情報が更新された。
「この苺は本当にスキルのためなの、月詠…?」
「みゅ!」
その中にひと粒100万Rという苺があったので、つい確認してしまった。月光ベリーという、幻の果物らしい。
苺が好物の生き物ゆえに猜疑心が消えない。
とはいえ買えないから、当分考える必要もないが。
お店の邪魔にならないうちに流星と月詠も送還して、他のスキルブックを見る。
まずは回復かなとミルクを召喚して、スキルブックを確認する。レベルアップで覚えるスキルだと買う前に忠告ウインドウが出るので、召喚獣を実際に呼んだほうが分かりやすかったのだ。
店主と客たちが「天使…!」「天使…!」とミルクに夢中になっていて、しばらく異様な空気だったが。
月詠の時は客たちは無反応だったのに。
「あ、他の召喚士もここで天使を召喚したのか」
「そうですね。お客様で16人目です」
それは多いのか少ないのか。
まだこの店に来ていない召喚士のほうが多いのだろう。
「次はきっと妖精さんですよね…!」
レベル上げ用に雷玉を考えていた椛は、ブルーも召喚しておいた。
必ずしも買うとは言っていないから。
欲しいスキルはたくさんあったが、資金不足なのでまたいつか来ようと誓って店を出た。
最後まで天使と小妖精が人気で、送還しにくかった。
誰も召喚せずに掲示板の救援クエスト情報を見ながら歩く。検証クランがまとめて随時更新中なので、椛も時々見ているところだ。
救援クエスト以外でも見つかった幻獣がいて、それは別のスレに載っていた。
「でもこれ、この間の砦の街を通るルートだな…大丈夫だよね」
あえてスルーしてしまうのも手だ。用事はないし。
だいたいのルートは決まったので、召喚獣自慢スレに変える。夢中になって通行人にぶつからないように気をつけながらも癒された。
歌って踊る月詠の動画はどこに投げよう。
新しくスレ立てするか、前回覚えたし!と一部のプレイヤーたちにとって劇物を投下しておいた。
そのうち気付いて反応するだろう、と自分は平和な所だけ見ていたものだ。
[背後霊とアイドル様の動画の温度差で風邪ひきそう]
シラベからチャットが来たので、美味しいと評判のカフェでパンケーキを食べていた椛は返事を送った。
帝都を発つ前に片付けたいこと第2弾を実行中である。
[見たの?可愛かったでしょ]
[爆弾投下した人は善意しかなかった…?]
[なんであの動画で悪意を感じるんだ。ギルマスだってノリノリだったじゃん]
[途中から現れたおじさん、ギルマスだった…?]
別の動画を見た訳ではなさそうだ。
冒険者組合ではアイドル様は人気だよ、と言っておく。
お城でも許されたくらいだ。
残りのパンケーキを食べて、お持ち帰りに対応していたらなあ、と惜しんでいたら今度は頼闇からチャットが入った。
[あの煽り動画が善意の賜物だったんですって!?]
[NPCにも好評だったから、みんな見たいかなって思っただけなのに!取り下げればいいの!?]
[そんなことは言ってないわよ!何度でも見たい動画だもの!だけど全然見つからないでいる人たちが、ストレスと被害妄想でハッスルダンス中よ。一応忠告しておくわ]
そのダンスは見たくないな、と思った。鬼女の舞とどこが違うというのか。
しかし掲示板は見ないほうが良いことは良く伝わって来た。
あと、帝都を発つ前に冒険者組合でまたアイドル様オンステージだよ、とか言ってはいけないことも。
NPCたちに迷惑をかけてしまうから。
プレイヤーよりNPCフレンドリーな椛だった。
でも思い出したので、シラベには伝説の幻獣の専用スキルとそれを覚える専用アイテムの情報はメールで教えておいた。
伝説の幻獣育成は、なかなかの茨の道だった。
大丈夫。大半の人は「可愛い」「可愛い」と喜んでます、きっと




