98プレイ目 カドマン
今回は前半の1000文字ほどがエラーで消えました
こまめな保存は大事…
アルヴィーナ王国の王都ヴィスタから東に進んだ椛は、小国群のひとつオーフォロ王国に来ていた。
ここは東端のイスタルの街からトシュメッツ国に入り、山道の途中で北に分岐する街道を進むとたどり着く国だ。広大な平野のアルヴィーナ王国と違って山岳地帯の中にある。
薬草園があるのは東の港街ラフィスだそうだが、今いるのは王都カドマンだ。
この国は薬の研究が盛んで、王立の薬学研究所もあるし、ランクSSの薬師もいるという。
もちろん会えるような存在ではないが、椛もサブ職が薬師なので、ここにしかない特殊クエストなどを確認しておきたいと思ったのだ。
調薬のスキルレベルはあまり上がっていないし、下から2番目の回復量のHP回復ポーションがようやく作れるようになったばかりのへっぽこなのだが。
そんな訳が冒険者組合のカウンターで、受付嬢と話ながら確認していた。
「あ、わたしでも受けられるクエストがある!レシピが報酬!」
「そちらは素材を替えても同じ性能のポーションになる、そういうレシピですよ」
同じポーションを違う素材でも作れるという、別のパターンの練習みたいなものらしい。そういうものを見て組み合わせを考えるヒントにするためのようだ。
椛は絶対にそこまでやらないが、余計なことは言わずにうなづいてクエストを受けた。
この街にまた来るか分からないし、来たとしてもクエストを確認するか自信がないし。
他のクエストも確認して、出来そうなものは受けておいた。
街の近くのエリアボスも一度は戦っておきたい。
「あ、そうだ。売り損ねた夜香花があるんだけど…」
「まあ!ぜひ研究所にお売り下さい!ギルマスに紹介状を書かせますから!商業組合ではなく研究所に!」
「お、おう…」
ギルドマスターより強そうなことを言って、受付嬢は一度奥の部屋に入って行った。ほどなく笑顔で紹介状を持って戻って来た。
あとを追ってギルマスも現れてしまう。
椛が夜香花を見せると、こちらもぜひ研究所に!と力説していた。
「商業組合はどんだけぼったくってるの?」
「我々も現地の冒険者組合が1輪300Rで買い取りをしていることは知っている。評価規準から妥当だと言わざるを得ないことも」
「商業組合のほうはだいたい1輪500Rだから、みんなそっちに売るけどね」
「500…そうか…」
商業組合の買い取り価格は変動することもあるが、500Rを下回ることはほぼないと聞いている。
たまにちょっと高めに売れることもあるというだけの話だ。
しかしギルマスの恐い顔から、よほどの暴利を貪っているのが伝わって来た。
やはり商人どもの元締めなんだな、と思った椛だった。
先に夜香花を売ってしまおうと王立薬学研究所を訪れた。場所は城や貴族のお屋敷街のある北側の、騎士団や衛兵隊の施設がある区画のほうだった。
どこの街も同じような造りなので、迷いにくくて良い。
門番に紹介状を見せて、次に研究所の入口でも衛兵に紹介状を見せて、案内付きで建物の中に入った。
警備が厳重なのは、それだけ貴重な物や研究内容なのだろう。
椛は入口の受付で夜香花を売るだけだが。
そのつもりだったのに、何故か応接室に通された。お茶とお菓子が出て来て、ついでに研究所の研究員が出て来た。
「夜香花でしたら、1輪2000…いえ、2500でいかがでしょう」
「は?」
「や、やはり安すぎましたか…!」
むしろ高すぎて驚いただけだ。
「えーと、アンセムの商業組合だと1輪500Rなので、それより少しお高く買ってもらえないかなって思っただけなんで、そこまで出されると後が怖いです」
「ご、ごひゃく…!?」
手数料がかかるにしても、ボリすぎだと思う。
「ただの通りすがりだし、今回は売り損ねたのを持ってただけだから2度目はないと思うし、偶然安く手に入ったぜラッキーくらいに考えていただければ…」
「なる、ほど…?」
「1輪600でどうでしょう!」
椛も充分儲かるので600Rでもホクホクなのに、泣いて喜ばれた。持っていた夜香花の数を見て、ますます泣かれた。
小国だからと割り当てが少なく、しかも高値を吹っ掛けられて、ほとんど手に入らないらしい。
「たぶん、冒険者を雇って採取させたほうが安上がりッスよ…」
そして欲しい数が手に入ると思う。
受ける冒険者がいるかは知らないが。
商業組合の知りたくもない一面を見せられた気分だった。
お金の代わりに非売品の薬をたくさんもらってしまった。
性能もすごいし、買ったらいくらするのだろうと震えが走る。もったいなくて使いにくいのだけが難点だ。
この件を考えるのはやめて、クエストをこなして行くことにする。
街の外で採取して来るクエストもあったが、基本的に街の中で行う内容ばかりだ。
ベテラン薬師の手伝いをして指導を受けるとか、届けものをしてレシピを教わるとか、テンプレのクエストである。
このゲームにもたまにはこういうクエストがあるのだ。
「うーん、少し時間が余った…神殿に行こうかな」
外に出るほどの時間はなかったので、クエストが片付いたあとは神殿に向かった。
椛に信仰心が芽生えたのではなく、賢翼の好感度上げ目的だ。
初めて来た神殿なので、中の見物だけで済むだろう。
神話の朗読会はちょっと飽きる。
神殿に入る前に賢翼を召喚して肩に停まらせた。
賢翼は街の様子を見て知らない街だと気付いたようだ。わくわくした雰囲気で少し遠くに見える神殿を見つめていた。
気難しい性格でも、こういうところは見ていて癒やされる。
「ここはオーフォロ王国の王都だよ」
そういえば大精霊の加護とか祝福の話もちゃんと調べてなかったなあ、と思い出す。『神話大全』は全然読んでいなかった。
朗読はいくつか聞いたのだが。
他にも聞いたのに忘れた話があった気がするが、忘れたものは思い出せないということだ。
掲示板はまた見たくなくなっているので、調べたくない。
オーフォロ王国の商業組合の酷い話をシラベにメールで伝えて、さり気なく大精霊の話を聞いてみる。
返事は次にログインした時にでも来ていたらいいなと思っただけなのに、すぐにチャットで返って来た。
[なんでメインシナリオが進行しそうなネタをさらっと送り付けて来るの?]
[商業組合のアコギなやり口を聞いただけなのに…]
[その国の商業組合の評判がやたら悪いのは有名だったけど、理由までは良く分かってなかったんだよ。薬の研究所があるからそこも関わって来そうだけど、立ち入り禁止だし]
椛は売り損ねた夜香花を持っていただけである。それも月詠の件で喚かれたせいで忘れていただけだ。
[大精霊のほうは探してるプレイヤーが多いけど、加護や祝福をもらえた話は聞かないね。何か条件があるんだと思う]
知りたかったことも教えてもらえたので、無理に探す必要はなさそうだとスッキリした。
詳細が分かっていたら、逆にめんどくさいことになっていたかもしれない。
…と思った椛は、特に加護や祝福が欲しい訳じゃなかったんだなと他人事のように思ったのだった。
チャットではなく通話機能やテレビ電話的なものがあってもいいのでは?
と書き終えてから今さら思って、変更するべきか迷ってはいるのですが…




