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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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96プレイ目 アンセム

 レイド戦のあと、さっさとアンセムの街に戻った(もみじ)は、ほぼ日課の森の主どんと夜のバトルをした。

 とはいえ、戦ったのは召喚獣たちだが。


 今日は奇襲を決めた星影(ほしかげ)がご機嫌だが、流星(りゅうせい)玄幽(げんゆう)は渋い顔だ。


「さあ、夜香花(やこうか)を採取する、ぞ…?」


 バトルの反省会は任せて、椛がもうひとつの目的のために夜香花の群生地に行くと、そこには先客がいた。


「みゅ?」


 小型犬サイズの茶色いもふもふがいた。

 可愛らしく小首をかしげて椛を見上げている。


 つい流星を振り向いてしまったが、こちらは玄幽と反省会中だ。


「え?いや、伝説の幻獣さん…?」

「みゅ!」

「人間と契約する気はある?」


 混乱したまま問いかけると、伝説の幻獣のミーティアはちょっと考える素振りをしたあと、あっさりと椛と契約していた。


 流星もそうだが、心配になるくらいチョロい。


「えー、マジかー。えー。わたし、いつから豪運の持ち主に?それとも主どんの贈り物?」

「みゅっみゅう!」


 それはどういう反応なんですか、ミーティアさん。

 椛の独り言に応えるように何か言っているが、出会って1分では意思の疎通も困難だ。


「えーと、そうか。名前を考えなきゃ。何が良いかな」

「みゅうー」


 ミーティアが鳴きながら右前肢を上に向けた。見上げれば、美しい月が出ていた。

 満月ではないが、だいぶ満ちた月が柔らかな光を放っていた。


「月か。月夜に現れるんだっけ」

「みゅうみゅう」


 今度のは「そうそう」に聞こえた。


「月…月詠(つくよみ)とか」

「みゅう!」


 イイね!と言われた気がして、月詠と名付けた。

 流星とか月牙(げつが)とか、そんな名前が増えてしまった。


 改めて月詠を眺めて、茶色の小さな体と、その体とほぼ同じボリュームのあるもっふもふのしっぽを見る。

 犬と狐の中間くらいの、可愛いを追求したかのような愛らしい姿をしている。


「いや、この可愛い生き物に月詠とか固っ苦しい名前を付けるわたしのネーミングセンスよ!」


 勢いで付けたが、何かを間違った気がした椛だった。






「伝説の幻獣ハンターなのかもしれない」

「そのうち刺されるわよ」

「不可抗力だよ!」


 アンセムに来ていた頼闇(らいあん)に月詠を見せると、真顔で忠告されてしまった。

 椛もそんな気がしている。


 人の少ない喫茶店に来ているが、月詠を召喚した途端に店員や客たちも沈黙してガン見している気配だ。


「みゅ?」

「く!図鑑の挿し絵の1兆倍可愛い!」

「この子、男の子だよ」

「みゅ!」

「性別を超越して可愛い!」


 可愛いに抗議したはずの月詠は、それは仕方ないねと納得したようだ。

 納得するのか、と椛はまだこの子の性格が掴めない。星影なら怒るだけだし、流星など最初から気にしていない。


 ブルーあたりは「ま、僕らそういう種族だし?」とクールな対応だ。


「でもどうしよう。隠すのは無理だけど、また現れるか分からないのに主どんのところに人が殺到したら…めんどくさい…」

「そうねえ。出現ポイントのひとつとして確定情報扱いする人も多いでしょうね」

「逆にここには当分来ないよってパターンなら良かったのに」

「そっちもあるのよねぇ」


 どれも推測の域を出ないので、何を言っても自分に都合の良いほうに解釈するだろう。


「で、真の問題はこっちなんだけど」

「何があるの!?」

「最初に覚えてるスキル『応援』が、全ステータス1.5倍のバフ効果」

「…は?」

「しかもMP消費もCT(チャージタイム)もない。重ねがけこそ出来ないけど、実質無限に1.5倍だよ。ぶっ壊れだよ」


 椛も二度見して、数回試して、説明通りの性能だと認めざるを得なかった。

 デメリットは何もなかった。


「流星にはそこらのオオカミ系の魔物が持ってるスキルしかなかったのに、どういうこと?」

「アタシが聞きたい…!」

「他がゴミスキルでも食って行ける気がする…」


 見た目がコレなので、モフラーが騒ぐのは分かる。レア物が好きな層が騒ぐのも分かる。


 しかし1番騒ぎそうなのが、チート大好きキッズたちな気がして頭が痛いのだ。

 攻略組も目の色を変えそうだし。


「どうする?あとでバレた時のことも考えると、隠すのは得策じゃないよね」

「…椛は使うの、そのスキル?」

「レイド戦で周囲に掛けて盛り上げるならともかく、普段は使わないんだよね…」

「そうよね、バトルがつまんなくなるだけよね、そこまで来ると」

「全員が使えて、使わないときついバランスのバトルならともかく、そうじゃないから」


 平等な条件下で競うから楽しいのであって、チートじみた力で勝っても嬉しくない。

 なんでもいいから勝ちたい、勝ってドヤりたい、という人間とは永遠に分かり合えないタイプなのである。


「あと危険度Cすら、ステータスを1.5倍にしたところでクリア出来る保証がなくない?」

「レベル差の暴力に近いはずだけど、欲しい力ってそういうのじゃないわね…」


 ゲームだからステータスが上がれば強くなる。しかし同じステータスでも『強さ』が違うと突き付けて来るのが危険度なのだ。


 椛たちが腕を磨いて手に入れたい強さは、そういう種類のものなのだ。


 分かってくれる同志はクランのメンバーくらいだろうけど。


「仕方がないからどこかにこの爆弾を投下しよう」

「新しいスレ立てなさいよ!」

「…そうッスね」


 めんどくさい、とか言わせてもらえない迫力だった。





 玄幽に月詠を預けると、もふもふなので大人しく抱いて歩いていた。月詠も文句はなさそうである。


 そして1番の効果は、伝説の幻獣を見て突撃して来るプレイヤーを威嚇して追い払ってくれることだ。


 椛は「わたし独占して見せびらかしてないヨ」「召喚獣のやることだから仕方がないヨ」という顔が出来る。

 素晴らしい効果だ。


 ただ玄幽の機嫌が悪くなるので、そんなにやっていられないが。


 宿から冒険者組合(ギルド)までの短い距離だけ玄幽に頑張ってもらった。

 中に入って月詠はカウンターに乗せる。


「はい、お疲れ様」

「ガウ…」


 玄幽に梨を渡すと、こんなものでごまかされないからな!という不満げな反応をされたが、食べながら月詠を片手で撫でていた。

 月詠は愛されすぎちゃっても仕方ないよね、ボク可愛いし、という様子だ。


 ちょっとだけ月詠の性格が読めて来た。


「また連れて歩いてるのか」

「出し惜しみしやがってとか、姿くらい見せなさいよとか喚かれるんだよ…」


 椛だって召喚しないほうが楽だが、それはそれで喚かれるのである。

 早く他の人も伝説のミーティアと契約して欲しいくらいだ。


「みゅう!」

「自分はアイドルだと自負してるっぽい」

「存在がアイドルだと思います!」


 可愛いもの好きの受付嬢もすっかり魅了されている。

 そしてふらふらと追って来た連中も、月詠を近くで見ようとじりじりと寄って来ていた。


 掲示板で公開してから数日経ったが、日に日に悪化する一方だった。


 元来気の短い椛にはもう限界だ。


「主どんのところ混みすぎてて話にならないし、しばらく旅に出るよ。他の幻獣も探したいし」

「そりゃ旅に出たくもなるよな…」

「ざ、残念です…」


 夜香花の群生地に群がる連中が追って来ないだけ楽になるはずだ。

 月詠目当てでストーキングする連中もいるかもしれないが。


 行き先はまだ決めていないが、救援クエストの情報がある街からになるだろう。

 あまり行っていない東のほうからにしようかと思っている。

 こんなところでは言わないが。


「果物図鑑に乗ってる物も探して来るね」

「みゅう!?みゅうみゅっ!」

「…何?果物図鑑?」


 果物図鑑に反応したので、月詠の前に置いてやる。

 前肢でめくろうとして失敗しているので、開いてやった。


 しばし月詠の目的が分からないままページをめくっていたが、苺のところで「みゅうみゅう!」ペシペシ!とページを叩き出す。


「苺が食べたいの?はい」

「みゅっ!?」


 ストロベリーはないが、余っているベリー系を各種出してやった。


 月詠は「持ってたならもっと早く出せよ!」と怒っていたようだが、ひと粒ずつ食べると満足したようだ。


「苺か…いちご、いち、ご…1.5…」


 いや、まさかね、と思いつきを却下する。

 バフが1.5倍の理由がミーティアの好物設定から来てるなんて、そんなダジャレ…


 ありそう、とか思ってしまった椛だった。






ミーティアのモデルはポケ○ンのイー○イだったりします


でも流星はイワ○コ

見た目じゃなくて中身がイワ○コ


そしてサンダー・エレメントさんはピカ○ュウ…

(さすがに無理すぎですよ)

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― 新着の感想 ―
サンダー・エレメントは“雷”の精“霊”だから□トムなのでは?ボブは訝しんだ
モデルがイー○イならアイドル扱い当然ですねw
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