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VRMMOぐだぐだプレイ記  作者: 兼乃木


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94プレイ目 ブロム

 レイド戦の当日は王都ブロムの北門の外に集合だったので、鬼女の気配はなかった。


 プレイヤーと冒険者NPC、そして騎士団が集まって来ていて万単位の人出だ。


「何人くらい集まってるんだろう。他ゲーの大型レイドだって、こんな人数は一度に戦えなかった気がするけど」

「戦争イベならもっと動員するやつもあるけど、敵が一体だって話だからなあ」

「巨大って、どんな大きさなんだ」


 (もみじ)たちは集まって来る人々を見て、改めて規模が予想以上だと驚いているところだ。


 人数制限をして分けるとか、そういうイベントを思い描いていたのだ。


「それより、その銀狼ライダー、思った以上に違和感ないな」

「ガウ」

「あんっ」


 戦場まで騎獣で移動するため、すでに召喚している者も多い。椛も召喚済みだ。

 ついでに流星(りゅうせい)玄幽(げんゆう)も召喚してある。玄幽は流星に跨がってモフり中だった。


「知らない人が見たら、激レア枠の騎獣に乗った狼獣人のヤマト国のサムライだと思うのかしら…」

「ヤマト国に獣人はいないらしいけどね」


 鎖国している国なので、獣人なんていたら追放されてそうとNPCたちに評価されているらしい。

 なので違和感を覚えないのはプレイヤーだけである。


「そしてそれが、例のカタナ…」

「記念碑発見でも紹介イベントが起きたんだよね?」

「断ったけどな。商人どもがヤバかったし」


『神の匠』に紹介してもらうイベントは他にもあったので、あれは椛が枇杷の木を発見したから起きたイベントだろうという話に落ち着いたのだ。


 そもそも想定ではレベル90とかもっと高くなってから発見される物だったはずだ。

 スニークミッションとか言って、魔物を全て躱してたどり着くバカ…プレイヤーがいるとは思ってなかったのだろう。


 そこは椛もちょっと反省はした。

 でもルートがあったのだから、調整ミス説を推している。


「きっと他にもあるよ」

「レベルが上がってからのほうが高性能のカタナを作ってもらえるさ」

「そもそもカタナが装備できるの召喚士だけだろ、今のところ」


 武器種ごとに(ジョブ)はあるが、裏を返せばカタナに対応した職は基本職にはなかったのだ。初心者用のカタナを買っても職が解放される訳でもない。

 特殊職の召喚士だけ例外としてカタナを装備できるが、頼闇の望む形ではなかった。


「ぐぬぬ…!」


 本当はカタナを使いたかった頼闇は悔しそうだが、ヤマト国に行けるようになるまで解禁は無理そうだった。






 騎士団はフレッド団長たちが言っていた通りに白馬率が高かった。

 隊列を組んで進む様子は壮観だった。


 移動を開始して冒険者たちも騎士団に続く。こちらはみんなバラバラだが、バラエティに富んでいて見ていて面白い。


「あ、ランクAなら白い狼のいる騎獣平原にも行けるんだ…!」

「極寒地獄だったらしいわよ…」

「寒さはアクセサリーで防げるけど、そういうことじゃない地獄だって話題になってたよな」


 珍しい騎獣を見つけて椛が思い出すと、予想外の答えが返って来た。

 何故地獄の話になるのか分からない。


「良く聞いたら、ほら、お土産の集積地とか言ってた神殿の総本山。あそこから外に出ると近くに騎獣平原があるんですって」

「ああ、体験入信すると行けるところ」

「危ないからランクA以上じゃないと外に出られないそうよ。でも氷原を越えるのはもっと危ないんですって」


 総本山ってどこにあるの?とマップは確認していなかった椛は首をかしげる。

 北の果てにあるそうだ。

 転移(ゲート)で行くのが一般的だとか。


「転移代で往復2万(リグ)、それに体験入信費用で1万Rくらい。さらに体験入信の儀式で3日か4日は拘束されて、自由に街を見て回れるのは1日だけって話よ」

「入信したら自由時間が増えるんですね」


 それでもその1日で騎獣平原で珍しい騎獣を手に入れることは可能だそうだ。

 狐とか地竜とか、好きな人が多いだろう種族もいるらしいので。


 でもそこまでして行った人の話はほとんどないそうだ。少しはいるところに驚いた。


「あ、あれは西の大陸にしかいない騎獣だ。ってことはNPCか」

「絵より迫力あるなー」


 西の大陸の騎獣は恐竜っぽい種族が多めなので、男の子が好きなやつだ。もふもふではなくても、椛もカッコいいと思う。

 見るだけで充分だから、この機会にいろいろ観察させてもらった。


 そんな話をしているうちに、目的の場所に近付いて来た。


「あれ、どこから湧いて出たの…?」

「数年に一度湧くらしいわよ」

「この人数でレイドとか難しいんじゃねって思ったけど…むしろ倒せるものなのかアレ」


 見えて来たのは巨大な魔物だ。

 宇宙怪獣より大きい気がする。縦にさほど大きく見えない分、横幅があってずんぐりむっくりしていた。


「1万人で輪になって囲んだら、ちょうど良い大きさかな…」

「どんなデカさだよ」

「なんで普段はあの巨体が隠れてられるんだよ…」


 予想より遥かに大きかったというか、あのくらいないとこの人数で戦うには不足というか。


「あれに比べたら深海の主どんも小さいね」

「あれリュウグウノツカイっぽいデザインで、やたらデカくて長いのに…」

「きっと《七つの災厄》もああいうサイズ」

「だよなー」


 見た目だけで絶望しそうだ。

 しかし今回のレイドはNPCたちの様子から「倒せて当たり前」「デカいだけの雑魚」判定なのである。

 良く挑む気になったな、と言いたい。


「あー、アレ昔やってたMMOの宇宙船の居住区に似てるんだ。街のサイズだ」

「SF系のMMOか?」

「知らんゲームだけど、街のサイズってのは分かる気がする」

「1万人でも囲めなくね?」


 スケールが大きすぎて、そうかもね、くらいしか言えなかった。






 NPCたちは若い者以外はさほど慌てていないが、プレイヤーの大半は予想外のサイズに浮き足立っている雰囲気だ。

 みんなもっと小さいレイドだと思っていたのだろう。良く分かる。


 すぐに突撃する訳ではなく、陣を築いて戦力を配置して行く。

 準備の時間があったおかげで、落ち着いた者も多かったようだ。


 騎士たちが落ち着き払っていたのも理由だろう。


「チュートリアルで馴れてねって話かな」

「いきなりアレと戦えって言わないだけの優しさはあったんだな」

「放り出されてたらパニクって終わってたな」


 椛たちもまだ「本当にアレと戦うの?」という気分は残っているが、多少は落ち着いて来た。アレはデカいだけの雑魚なのだ。たぶん。


「ところでさ、定期的に出現するんだよね」

「そうね」

「イベントを発見したって言ってたけど、フラグが必要なイベントだったのかな…」

「…そういうことにしておいてあげなさいな」

「タイミングが重なっただけの可能性…」

「いや、フラグが必要だったんだよ、きっと。たぶん」


 ギルドマスターの「嗅ぎ回っている」発言のせいで、どうにも懐疑的な気分になってしまう。

 疑うのは申し訳ないとは思うのだが。


 それも違う話かもしれないのだし。


「ギルマスが声をかけて来たのは、闘技場での戦績が一定以上になったっていうフラグを達成したからかな、とは思ったけど」

「ああいうのはフラグよねぇ」

「あれも掲示板で騒がれてたよな」

「他のクランはあいさつなんてされてないって」

「あと貢献度が高くなると注目度が上がって声をかけて来る、みたいなのがフラグだよね」


 何かしら達成した時にギルマスのあいさつイベントは起きるのだろう。

 クランとして成長している証みたいなものだ。


「覇王に声をかけてもらえるフラグって、どのくらいの戦績だろう…」

「そ、それは燃えるやつ!」

「難易度(たけ)え!」


 ギルマスより覇王のほうが良いな、と思うメンバーばかりがいるクランなのだ。

 でも到達できる展望が全く見えないので、頭を抱えるばかりだった。






 騎士団の号令で攻撃が開始された。


 後方から魔法が放たれ、前衛が横一列になって突撃する。

 敵が巨大すぎて壁でも斬りつけている気分になるが、参加人数が多いので魔物のHPバーが削れているのは分かる。


「あ、水竜騎士隊だ!」


 誰かの声で空を見上げれば、青い竜たちが整然と隊列を組んで飛んで行くのが見えた。真上から攻撃するのか、すぐに見えなくなった。


 (もみじ)はもう少し見ていたい気持ちを振り切って、目の前の敵に目を向ける。そして仲間に声をかける。


流星(りゅうせい)玄幽(げんゆう)は無理しない範囲で頑張って!」

「あおんっ!」

「ガアー!」


 攻撃に加われない月牙(げつが)はさすがに他の人の邪魔になるので送還したが、流星と玄幽は巨大すぎる魔物に張り切りまくっているのだ。

 なので「やだー!」「誰がやめるかー!」とばかりに攻撃しまくっている。


 だがほどなく「下がれー!反撃来るぞー!」という号令が聞こえて来た。


 盾を構えた者たちが列を作っている。


「ほら、盾の人たちの後ろまで下がって!」


 椛が後退しながら声をかけても聞かなかったが、自分たち以外は下がったことに気付いたようで、慌てて流星に玄幽が乗って駆け戻って来た。


 盾の列が魔物の巨体の体当たりみたいな反撃に、うわーっと弾き飛ばされていた。

 それでも攻撃力そのものはさほどではないらしく、見た目より被害は少なかった。


「だから言ったのに」

「くうん…」

「ガウ…」


 間一髪だった流星と玄幽は、一応反省したようだ。


 そんないつもと全く違う攻防を繰り返す。

 バトルの全容が分からないのだが、戦場の雰囲気と参加者たちとの一体感は妙にクセになる。


 他の召喚獣も様子を見て投入し、近くで戦うクランのメンバーたちと声を掛け合う。

 騎士団の一斉突撃に沸き上がったり、派手な魔法の威力に歓声を上げたり。


 他のゲームのレイド戦とは全く違う体験に、気付けば夢中になっていた。

 そして巨大な魔物が倒されて消えて行くのを、幻を見ていたような気分で眺めていた。


「魔物が消える演出なんて見慣れてるのに、この大きさだとなんかびっくりする」

「そうよね。夢でも見てたみたいだわ」


 わずかに呆けていたが、勝鬨の声に我に返る。椛たちも一緒になって声を張った。


 何がなんだか分からないのに楽しかった。

 そんな説明しにくい感想が残ったのだった。





バトル描写が苦手な人が書くと、こんなに短い文章で終わります


格好よく書ける人が羨ましい…

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