表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

別に心が壊れている訳では無い

かつて“氷の獅子”と恐れられた騎士団長・レオニスは、いつもと変わらぬ冷静沈着な態度で朝の巡回に出た。鋼の瞳、鋭い視線、動じぬ口調。何ひとつ変わっていない──はずだった。


だが、その頬を一筋、透明な雫が静かに伝っていた。


「……団長、泣いて、いらっしゃいますか?」


最初に気づいたのは副官のシルヴァだった。レオニスは一瞥する。


「問題ない。巡回を続けるぞ」


確かに彼の声は揺れていない。表情も、どこまでも無表情。いつものレオニスだ。ただひとつ違うのは、その目尻から絶え間なく零れ落ちる涙だった。


「えっ……でも団長……涙が……っ」


「呪いだ。森で拾った古びた指輪が原因らしい。夕方には解けるそうだ」


平坦な説明に部下たちはざわめいた。


(いやいや、いやいやいやいや……!)

(無表情でずっと泣いてる団長ってなに!?)

(やばい。なんか……心にくる……)

(泣いてるのに、全然取り乱してないのが余計に……!)


その日、レオニスは涙を流したまま指揮をとり、魔獣を退け、政務を淡々とこなした。その姿に、部下たちは勝手に思いを巡らせる。


「団長……限界だったんだな……俺たちが支えなきゃ……!」


(団長……今夜は泣き疲れて眠るのかもしれない……)


だがレオニス本人は、夜の風呂上がりにぽつりと一言。


「目が乾いてきた。目薬より効率が良いな」


まったく以って、いつも通りだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ