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九話「ロマンな休日」〜デッドと離婚したルイは自分だけの人生を歩む決意をする〜

 デッドと書いた離婚届が破れた。

 ルイは怒りを覚えながらももう一度離婚届を書いてデッドがいるモス宅に郵送した。

 デッドが離婚届を出したかは定かではないが、ルイの心はもうデッドじゃない、他の人に向いている。


「ルイ〜? 今から買い物行くけど、夜ご飯何がいい?」


 別の部屋から声がする。ルイも彼女に聞こえるように大声で答える。


「一緒に行くよ」



 ルイはデッドと別れてから元浮気相手で会社の副社長ティンとも別れた。

 ティンと別れて分かったが、やはりルイはティンのことを愛していた。だからこれまで通り接することができず、仕事に支障が出た。ティンと仕事をしていて、彼女が少しでも私に優しくしたら、また付き合えるかもしれないと勘違いをしてしまう。


 だから仕事をやめた。

 社長の椅子も仕事もティンに全て預けた。私が不在中何事もなく会社を守っていてくれた彼女ならこれからも任せていける。


 そして今はこれまでの貯金を充分に使って旅行をしている。

 先月までは南国にいた。

 しかし夏にもなっていない暑さに耐えきれず、最近、北に来た。


 そこで出会ったのが、彼女、アリソンだ。


「わーお! 見てみて、ルイ? 大根がこーんなに安いなんて〜! 奇跡だね」


 アリソンははしゃぎながら大根を四個、カートに入れる。


「そんなに何に使うんだい? せめて二つにしよう」


 ルイは眉を顰めて大根をカートから出す。しかし彼女はルイの手の大根を取ってカートに入れ直した。


「いるよ! ルイは大根嫌い?」

「いや、好きだよ。でも……こんな沢山に食べるのは初めてだ」


 ルイはアリソンの頬にキスをしながら言った。


「そう?」アリソンは笑いながらルイの口に軽く口付けをした。「よかったぁ」



 或る朝。


「ルイ? あなた宛に手紙が届いてるの。……デッドからよ、誰かわかる?」


 デッドから? もう離婚したはずじゃ。いや、なぜこの住所がわかったんだ?


「ああ、昔の仕事仲間だ。貸してくれ」


ルイへ

お腹の子供の父親を調べてみたの。もう一度、あなたとやり直したい。

二人の家で貴方の帰りを待ってます。


 なんだって? デッドは子供の父親を調べずにモスとの子供だと言い張って私と離婚したくせに、父親が私だと分かると“帰りを待ってます”?


「今更……。ふざけるなよ」


 ルイは手紙をそのままゴミ箱に捨てた。




「うっわ、次の次で最後じゃん」


 台本が配られ、九話の文字に隣のネックが驚く。


「そろそろ僕らの関係も終わるね」


 シックが冗談混じりに言うと真顔でネックが答える。


「そうだな」


 こいつ、冗談通じないのかよ。

 それかまだサングラスを無くしたことを起こっているのか。


「そういえば、奥さん元気?」

「元気さ」


 ネックはパラパラと台本をめくる。

 シックはチラリと彼の奥にいるデッド役リリーを見る。

 たしかリリーとネックは不倫していた。


 きっとドラマが終われば、彼らの仲も……。


「あれ? シックさんー!」


 後ろから懐かしい声が聞こえた。シックは振り返る。


「やあ、ウォンじゃないか!」


 ウォンは顔のいいモデルで何年か前付き合っていた仲だ。別れた原因はウォンの浮気が原因だが、円満に別れた。シックもウォンに隠れて浮気をしていたのでウォンを責められず、ホワホワと別れた記憶がある。


「どうしたんだ、こんなところで!」


 シックは整った顔を少し見つめてハグをする。ウォンは強くハグを返す。


「実は、アリソン役になりましたー!」


 ウォンはシックに体を預けて足を上げる。


「ちょっ、重っ!」


 シックはウォンの体重を支えきれず、後ろに倒れる。


「え、何してるんですかっ!? 強姦?」


 たった今来たティン役ガールがシックに馬乗りになるウォンをみて悲鳴を上げる。


「しっ! ガール!」


 リリーがガールに他の人に見られるでしょ、と怒る。


 ウォンは苦笑いでシックの上から退いた。シックはネックに鼻で笑われながら自分で立つ。

 軽蔑の眼差しを向けるガールに笑顔を作る。


「倒れただけだよ」

「二人で同時に?」


 ガールはシックを押し退けて台本をもらう。


「あ、ガールちゃん、最終話、結構役目あるからね。覚悟してて」


 スタッフにそう言われてガールは軽く頷き出ていく。


「あちゃー、誤解したね」

「こんなに人がいるのに。誤解はしないでしょ?」


 シックは震える声でリリーに答える。


「どうだろうね」


 リリーはネックと出ていく。


「ごめんね、わたしのせいで」


 誤ってるようには思えない顔でウォンはシックに抱きつく。きっと彼女は当時と同じくシックがチョロい男だと思っているのだろう。

 その通りだが、今はシックには他に好きな人がいる。


「ねえ、シック? 今夜、泊めて……」

「ごめん、もう行く」

「は?」


 シックはウォンに掴まれた手を振り払って部屋を出る。


「ッ! ガール!?」


 ガールは少し廊下を歩いた所にあるベンチにいた。


「え、シックさん?」


 シックもガールがここにいるなんて思わなかったが、ガールも同じようだ。


「ガール、君と話がしたい」


 シックはガールの隣に座る。


「話? この前のことは……無かったことにして」


 ガールは結構前に妊娠していることを打ち明けてくれた。そして相手の彼氏と別れてしまった事も。


「無かっことになんて出来ないよ。もう聞いたんだから」


 シックはガールの事が好きだ。たとえ、元彼との子供を身ごもっていても。


「ガール」


 シックはガールに囁く。


「シックさん、わたし……」


 シックは口角を上げる。

 ……これは、イケる!


「わたし、最終話出れません」

「は?」


 シックがガールの口に近づく前にガールは立ち上がり、廊下を走って行ってしまった。


「え、出れないって……どういう事?」


 シックは目を見開いて呟く。


「シック! 台本もらったから一緒に家で読もお? だから泊めて〜!」

「え? あ、うん。いいよ」


 シックは今日のところはガールを諦めて今夜はウォンと過ごすことにした。

次回 最終話「浮気を無罪に」

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