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八話「カレには言えない私達のケイカク」~妻デッドに離婚を切り出されたルイは離婚届を書くのに戸惑い……~

 “わたし……あなたと別れたい”


 ルイはデッドに言われた言葉を思い出す。

 そして手元の離婚届を見た。


 デッドはもうサインしてある。


「はあ……」


 ルイは机に伏せる。


 ……これまで散々浮気して、俺はデッドと全然向き合ってなかった。

 なのに寝取られて、離婚しそうになったら急に愛情が芽生えるなんて。


 いや、離婚は当然だ。

 もちろんルイの浮気も理由だが、デッドのお腹の子供の父親がモスだから離婚するのだ。


 あれ?

 浮気してたのはデッドもじゃないか。


 ルイだけが悪いわけじゃないのだ。


 ルイは気持ちの整理がつき、ペンをとって離婚届にサインをした。



 二日後。デッドが家を訪れた。


 ルイはデッドが来る前に彼女の荷物を段ボールに詰めたが、デッドはお礼も言わなかった。それどころか、目も合わせない。


「ちゃんとサインしてくれたのね」


 デッドは車に荷物を置いて、ルイから離婚届を受けとった。

 ルイは最後に皮肉でも言おうと思ったが、この前のデッドの唇の感触が蘇り、顔が赤くなる。


「ねえ、ルイ」デッドは柔らかい口調で「まだ好き?」と高校生の恋愛のような言葉を口にした。


 ルイは愛してるから結婚したし、今でも好きかと言われたら、


「もちろん」


 咄嗟に言葉が出る。

 デッドは自分から聞いてきたくせに固まっている。


「嘘だよ。暗くなる前に帰りな」


 ルイは半ば強引にデッドを玄関に連れて行き、扉を開ける。


「え、まだ好きなの? わたしのこと、嫌いだから浮気したんじゃないの?」


 デッドはルイの手を掴む。


「そういう君はどうなんだ、いつの間にモスと……」


 ルイはデッドの手を振り払えず、口調を強くする。


「モスはあなたの穴埋め。あなたいつも忙しくて、いなかったから。さみしかったの、ごめんなさい」


 デッドは涙目でルイをまっすぐ見る。


「あ、穴埋めって……」


 ルイはしゃがみこんだデッドを見つめる。


「君の事を嫌いになったことはないよ」

「え?」


 デッドは顔を上げる。


「でも、みんな愛してるんだ。ティンもシャイも」

「は?」


 デッドは口角を下げた。


「なにそれ、意味わかんない」


 デッドはよろよろと高いハイヒールで立ち上がり、ドアを開けた。


「浮気じゃん」


 デッドは出ていった。


 ルイは床にくしゅくしゅになって置かれた離婚届を見てため息を吐いた。


「もう一回書かなきゃじゃん」




 あと三話になったな。

 シティーは八話の台本を見てため息を吐く。


「あれ? シティーじゃん。俺のグラサン返してー」


 モス役ネックがシティーの座っていた一人掛けソファの隣に座る。


「きついよ」

「めんごめんご、で、俺のグラサンは?」


 ネックのグラサンは確かに、シティーが紫外線から目を守りたくて借りた。

 しかしその後行ったラーメン屋に忘れて行った。


「あー……値段教えて、返すから」


 シティーは満面の笑みでお財布を取り出す。


「いやいや、現物返せよ。結構高かったんだぞ?」


 ネックは苦笑いでシティーの肩を叩く。

 シティーは真顔になる。

 ……この前のラーメン屋さんに行くか? いや、高いならもう盗まれてるか。


「で、いくら? 今手元に五千しかないけど」


 シティーはお財布の中をネックに見せる。


「はあ? 嘘だろ。なくしたのか?」


 シティーはアヒル口で頷いた。


「はああ? 信じられない! 俺のグラサンだぞ? 人から借りて、当日返さず無くしたあ? ふざけるなよ」


 ネックはシティーの財布を奪う。


「ちょっと、今現金持ってないって」


 シティーが財布を奪い返そうとしてもネックは自分のカバンに入れてしまった。


「ふざけるなは、こっちだよ! なくしちゃっただけだろ? なんで俺の財布を盗むんだよ!」

「こうでもしないと、元取れないの! クッソ高かったんだぞ、俺のグラサン! 千五百ドルだぞ!」


 そう言ってネックは全速力で廊下を走って去っていった。


「千五百ドルって、サングラスにそんな払う? バカじゃないの?」


 シティーは一人掛けソファの端っこに座る自分を客観視してすぐさま席を立った。

次回九話

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